君には自由がふさわしい
拍手小噺
『君が笑う、それだけでいいよ』続編



何となく…何となくいつかは
こんな日が……来るんじゃないか。
そう、心のなかで思ってた。

あの日。世界政府の要請で赴いた戦場で
君の苦しそうな呆然とした顔を見た時から。


「…………将っ!?大将青雉殿っ!!聞いてましたか!?どうされますか!?」

「あー、いいんじゃない?彼女が正義を捨てるなら…今までに例がなかったわけじゃないでしょ?」

「なっ!?ですが!ですが、彼女は!!次期参謀へとの声も高い……今や現大参謀おつる中将でさえ一目おくほどに、彼女の建てる作戦は緻密で大胆でありながら、常に被害は最小限に押さえられる程の策士となっています!!それを、海賊なんぞに…!!」

「………それ。」

捲し立てる海兵に厳しい目を向けたクザンは、そう言いながら海兵を指差した。

「…は?」

「………それだよ。彼女が、嫌がってたのは。」

「え?どういう…」

「世界政府…海軍…ひいては革命軍や海賊。全ての組織が彼女の頭脳を欲しがった。それを最初は喜んでいたさ。必要とされてるとね。君も知ってるだろ?彼女の作戦は常に己が最前線にいる事。それが前提の作戦だった事。目まぐるしく変わる戦況、それを自分の目で見て、俺らの理解を越える程のスピードで彼女はその時最善の指揮を取る。そして、その先にあるのは常に人々の平穏だったんだよ。でも、重要な任務へ着けば着くだけ。彼女は自分の守りたいと願ったものから離れていく。前線へ赴く事を第一に彼女は前提にしてた。それが部下を民間人を守るために必要な事なんだと、それで自分が死ぬ事に微塵も恐れはなしてなかった。でも、上は違う。そんな彼女の頭脳を失わないために彼女を前線へと出す事を禁じた。そして、あの世界政府からの要請で向かった任務で彼女は世界政府に海軍に疑心を持ったんだよ?彼女の好きにとは言わない。でも、彼女の掲げる俺ともサカズキともボルサリーノとも違う、正義を尊重してあげれば…まだ彼女はここにいたかもしれないね?彼女は……###は、自分の守りたいものを守れなくなった海軍に興味を失ったんだ…。残念だけど…、もう自由にしてあげてもいいんじゃない?あ、これセンゴクさん達には内緒ね?」

暫くして、不満そうに出ていった部下を見送るとクザンはソファへと寝転がる。
そして、思い出すのは年のわりには幼い子供の様な笑顔で笑う###。

「ねぇ、何で自ら志願して俺の部下になったの?みんな嫌がるのにさ…」

『え?だって、あたしはサカズキさんみたいな絶対的正義もボルサリーノさんのどっちつかずの正義も嫌だったんですもん』

「あぁ、消去法ね?」

『違いますよ。たまたまね、聞いてしまったんですよ。クザン大将の見る場所によって正義は変わるって。あたしもそう思います。あたし達が正義だと、必ず言えるわけがないんですよ。だって、それを決めるのはあたし達海軍ではないです。モーガニアと呼ばれる海賊を捕らえればそれは民間は正義だと言うでしょう。でも、そうじゃない。白ひげや赤髪などの海賊を捕らえたらどうでしょう?瞬く間に世界は…混沌の波に飲まれていくでしょうね。彼らの名で守られていた島にとって、海軍は正義じゃなく悪になる。あたしはそれをしたくないんですよ。全ての人に正義と呼ばれなくとも。あたしの正義に信念に背く事はしたくないんです。だから、あたしは平穏というなの正義をいつか掲げるために。クザン大将の元を選んだんです。それを誰にも文句を言わせないためには…あたしは今より強く。上へ昇らなきゃ!!あ、クザンさん!!コネになってくださいよー!!』

「ちょっと、大将を相手に何裏取引をしよーとしてんの?あ、でも賄賂は何?###ちゃんなら俺考えちゃうなぁ」

『頭沸いたんですか?あたし、だらけきった人嫌いなんですけど』

「えぇ!?さっきと言ってる事が…………」


「###ちゃーん?世界政府からの指令だってぇ?」

『…えぇ。何でも、海賊が国を乗っ取ったらしくて…その鎮圧へ』

「今回も?」

『えぇ。前線へは出るなと。』

悔しげに苦笑いを浮かべて船を出した彼女を見送りながら、何だかざわつく胸に…嫌な予感がして数時間後に俺も海へと出た。
たどり着いた時には、もう手遅れだった。

海賊が乗っ取ったと言われていた筈の島は、乗っ取られてなどおらず。
只、世界政府へと異議を唱えただけだったのだ。
それを知らせる事なく、五老聖は彼女を向かわせた。
嘘の情報を伝えて。
言えば彼女は反対をする。
それは世界政府を裏切る言葉となり、有能な人材を失う事になる。
でも、その国は大きく。
彼女の頭脳をなしでは落とす事は不可能。
だが、全てが終わり島へ降りれば海賊の姿などまるでなし。
こうなる事位わかっていた筈だと、すぐにセンゴクさんへ連絡を取るも帰ってきたのは

「組織に属するとはそういう事だ。それに反論するなら、権力を手に入れろ」

そして、その日から。
彼女の顔から笑みが消えた。

笑っていても、その瞳は冷たく凍り。
俺でも溶かせないまでに冷えきってしまった。


「出来れば…俺がどうにかしてあげたかったんだけどな…」

そう溢したクザンの手には、白ひげ海賊団の面々に囲まれる###の写真。
###が笑顔を向ける隣には、4番隊隊長サッチの姿。

「全てを捨てる度胸もない俺に、君の隣はふさわしくないか…」

その写真は畳まれており、開けば

wonted

裏切りのふくろう

250000000berry

「取り戻せたみたいだし、まぁ…いいか。こんな檻に閉じ込められるよりも…」

クザンは窓へと視線を向ける。
その先にいる彼女の事を思って。

「誰にも捕まるなよ…」



君には自由がふさわしい

(だって、鳥は自由に空を飛ぶものだろう?)

title by Mujun
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