rode-5



「「「「「かんぱーい!」」」」」

麦わら海賊団船上では、現在宴の真っ最中。

ライは端の樽に腰かけて、騒ぐ彼らを見守っていた。

「ライ!呑んでるか!?」

『ルフィ。あぁ、呑んでるさ。』

元気な船長が尋ねると続けざまに他の船員達もライに近付いてきた。

「なぁ!お前記憶がねぇーんじゃなかったのか?」

かねてから不思議に思っていたウソップがライに訊ねた。

『………?俺一言も記憶ねぇなんて言ってねぇぞ?誰にきいたんだよ…』

「ドルトンておっさんが言ってたぞ!?多分あの島の全員がお前の事記憶喪失だとおもってんぞ?」

驚いたウソップが声を荒げた。

『ふーん。まぁ、いーんじゃない?俺としてはその方が都合良かったし』

「じゃあ!お前今から俺のする質問に嘘偽りなく答えろよ!」

『いいよ?』

「じゃあ、まず名前!」

『ライ』

「おい!ファミリーネームは?」

『嘘はつかねぇが、あえて言わない、言えない事は見逃してくれ』

「んなぁ!……まぁいい。年齢は?」

『ぴっちぴちの25だ!』

「へぇー、あたしらの中じゃ1番年上なのね」

「出身の海は?」

『グランドラインかな?』

「お!俺と一緒なんだなっ!」

「家族は?」

『…いるよ。』

「俺らと会う前は何してた?」

『海を…旅してた。家族でな…』

「家族はどうしたんだ?」

『今は少し理由があって離れてる。だけど、俺が、言ってた目的地が家族がいる場所だ。』

「それ…どこなんだ?」

『そのうち…わかるよ』

「そのうちなんて適当な事言ってないで、言えばいいじゃない!同じ船に乗るならそれ位話なさいよ!」

「そうだぜ。仮にもこれから同じ釜の飯食うんだろ」

ライの発言にナミとサンジが口を開くが…

「言いたくねぇならいいじゃねえか!」

「「「ルフィ!?」」」

「今は言いたくなくてもよ。その内話したくなるかもしんねぇだろっ!」

「……だけどよ…」

「船長がこう言ってんだ。人それぞれ事情だってあんだ。本人が言いたくねぇなら無理に聞く必要はねぇだろ?それにどれだけ腕がたつか知らねぇが、今は少しでも手が欲しいことに変わりはねぇはずだ」

「ゾロ…」

「俺らが今こいつに確認すんのは、敵か味方かだけで十分だろ…」

『俺は、今は敵になるつもりはない』

「だとよ…」

「おしっ!じゃあ、気をとりなおして!新しい仲間の乗船に……」

「「「かんぱーい!!」」」

そこから又一気に賑やかな宴に戻っていく。
それをライはどこか懐かしげに見つめる。
と、目の前に差し出された酒瓶にジョッキを差し出してその腕を辿るとニヤリと笑うゾロの姿。

「この船はバカばっかりでな、手を焼くと思うぞ?」

『あぁ、承知済みだよ…』

笑顔を浮かべ、ゾロに言葉を返す。
そこにビビが歩み寄ってきた。

「ライさん、この船はこれからアラバスタという国に向かいます。そこの内乱を止める為に…」

悲痛な表情を浮かべこれから進む航路とその先に待つ敵について説明するビビにライは手を伸ばし頭を撫でながら話し出した。

『大丈夫だ。なんとなく事情は心得たよ?アラバスタの窮地を救う手助け、俺にもさせてくれ』

ビビは自分より高い位置にある顔を驚いた顔で見上げるとニコリと笑う。

「こちらこそ、お願いします!ライさん!」

『微力ながら手を貸そうか…』

ライも笑いかけると、酒を一気に飲み干し

『それじゃあ、俺は新人らしく。見張り台にでも上がるとしよう』

「えぇー?大丈夫だから呑もうぜ?」

ルフィの誘いに笑みを浮かべて

『いや、少し飲み過ぎたみたいだ。風に当たって頭を冷やすとするよ』

そう言うと返事も聞かずに1つのジャンプだけで、一瞬で見張り台へと上がってしまった。

「おい、どんな脚力してやがんだよ…」

「ありゃ、くそコックより強烈な蹴りもできるかもなぁ?」

ニヤリと嫌な笑みを浮かべて言うゾロにサンジがお返しとばかりに言い返す。

「あいつ、剣の腕も相当みてぇだからな?どこぞのくそ剣士よりよっぽど役に立つだろうな?」

「んだとぉっ!」

「やんのか!マリモ野郎っ!」

ギャーギャーと下で騒ぐ彼らを上から見下ろし笑みを見せると、空を仰ぎ見た。

『ごめんね…皆…』

視線を落とすと、暗い海の向こうを一睨みして遠い海を見据える。




喧騒と静寂の狭間で

(あんた達うるさいわよっ!)
(ナミはおっかねぇーなぁー!)
(あんたは一言余計よっ!)

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