rode-3



「なぁ、おっさん。あいつ…ライって言ったか?何者なんだよ?」

「さっき彼が言っていた通りだ。つい1週間程前に島の浜辺に流れ着いていたのを、私が見つけて助けたんだ」

「そうじゃなくてよー。何者なのか知ってるのか?」

「深くは聞かなかったが…ライはどうやら記憶がないらしくてな…あまり深く聞く事は避けたんだ。だから、私は彼の名前と剣の腕がたつ事以外、歳さえも知らないよ」

「なんだよ、それ!!そんな奴をてめぇの家に入れて、住まわせるなんざ…あんたも随分お人好しだな…」

ウソップの言葉に、薄く笑みを浮かべたドルトンは

「そうだな…今までなら、受け入れたりしなかったさ。だが、ライの瞳を見て。大丈夫だと思ったんだよ。何故かはわからないが…人を惹き付ける。不思議な瞳をした青年だ…。さぁ、私達は家の中で彼らを待とう。外は冷えるからな」

「私はいいです。もう少し外にいたいので…」

山を見据えて答えたビビにウソップも同意した。

「あぁ、俺もここでいい」

二人の若者をドルトンは眺めると、隣に腰を下ろし、

「ならば、私も君達と外にいよう。たまにはのんびりとこの美しい雪景色を見るのもいい」










時を同じくして山の麓へと辿り着くというルフィ達一行の前に立ちふさがるは、ラパーン達の群れ。

「おい、あいつら。なにしてんだ?」

『さぁ?』

ため息を一瞬溢しそうになったのをなんとか止めると、ライはラパーン達を見据える。

と、突然ドシン、ドシンと音をたててジャンプしだしたラパーン達に、顔を青くしてサンジが叫んだ。


「おい、おい。まさか…」

「ん?どうした?サンジ」

『その、まさか…だよ?』

「おい!ルフィ!!」

サンジが言葉を続けようとした時、雪崩は勢いよく流れ始めた。

「あれだ!あれにのれっ!」

少し大きい岩を指差して走るルフィに続いて走るサンジとライ。

岩に登るも依然勢いの止まる事なく襲ってくる雪崩は三人へ迫る。
そこへ雪崩に乗り流れてきた木に気付いた三人は木へ飛び乗るも、重大な事に気付く。

「なぁ、これ下ってねぇか?」

「下っちまったら、ここまできた意味ねぇじゃねぇか!!」

『んー…一直線だねぇー…』

「暢気な事言ってんじゃねぇよ!」

そう言っている間に前方に見えてきたのは大きな岩。
このままぶつかっては全員が危ない。
と、動いたのはサンジだった。

ナミを背負うルフィとライ放り投げると自身はそのまま岩にぶつかり雪崩に飲まれていく。
サンジにルフィが腕を伸ばしたが、掴んだサンジの手をひっぱるも、ルフィ達の元に来たのはサンジではなく、サンジの手袋だった。

『て……手袋だけじゃねぇかー!!』

「サンジーーー!」

雪崩に飲まれていくサンジの姿は二人の視界から消えた。

「わりぃ、ナミを頼めるか?」

『あぁ、どうするんだ?』

「サンジを探してくる。ライはナミとここで待っててくれ。すぐ戻る」

返事も聞かずにルフィはその場を離れていった。その後ろ姿をライは苦悶の表情で見送った。

ナミに自身はコートをかけ、抱き上げてルフィの帰りを待っていると、ルフィがサンジを抱えて戻ってきた。

「わりぃ、ナミ貸してくれ。」

『いや、俺がこのまま連れてくよ。間違えても落としたりしないから、安心しろ』

そのライの言葉に笑顔で頷くと二人は山の麓を目指した。
だが、途中でワポルに遭遇。
ナミをルフィに任せ戦おうとしたが、ラパーンが現れ、ワポル達を撃退してくれたのだった。

『おい、おい。ラパーンが人を助けるなんて聞いた覚えねぇぞ?』

「そうなのか?」

『あぁ。ドルトンからは狂暴で危険なうさぎって聞いてたからな…』

「たまたま、さっき埋まってんのを助けたんだ」

『そうか。お、ルフィ。ここを登れば医者のとこだ。大丈夫か?』


「あぁ!行こうぜ!」

そう言って二人は岩に手をかけ登りだした。
暫く登っているとライの頬に落ちてくる生暖かい何かに気付いた。
ルフィを見上げると、指から流れる夥しい程の血。

『ルフィ!大丈夫か?!』

「あぁ!心配ねぇっ!」

『後もう少しだ!頑張ってくれ!』

暫くすると、とうとう頂上へと辿り着いた。
ナミを背に抱え直すとルフィに視線を向けた。

「キレイだ…」

一言残して、崩れていくルフィに駆け寄り倒れこむ寸前でサンジとルフィを支える。
と、瞬間4人のいた場所が崩れていく。
慌ててルフィとサンジを担ぎなおすと、崩れていない場所へ一瞬で移動する。
すると、吹雪いていた雪のなかに大きな影が現れた。

『ちょっと、いい?医者に見せに来たんだけど、患者が増えちゃってさ…俺一人じゃ無理なんだ。手伝ってくれないか?』

そう声をかけた。










城の中、ライは湯気のたつコーヒーを飲みながら窓から外を眺めていた。
そこへ突然扉が大きな音をたてて、開く。
視線を移しながら声をかける。

『やあ、チョッパー?あいつら起きたの?』

「あ、あぁ!起きたんだけどよ!」

『面白いって追いかけ回されてるんだろ?』

「な!何でわかったんだ?ちょっとここにかくまってくれっ!」

『内緒かな?いいよ?無駄だと思うけどさ。あ、あいつら起きたなら俺少し寝るからさ。ここを出る時起こせって言っといてくれる?』

「あぁ!わかった!」

『じゃあ、おやすみー』

壁に寄りかかる様に座り込むと剣を抱えながら眠りについたライを見て、チョッパーと呼ばれた小さな青鼻のトナカイはぽつりと呟いた。

「せめてソファに横になればいいのにな…」




臆病者のトナカイ

(ライ寝ちまってるぞ?)
(ほっとけ!降りる時声かけろだとよ?)
(なんだ!サンジ会ったのか?)
(奇妙な鹿から聞いた)
(おい!ありゃあ、邪魔口じゃねぇか!)



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