destiny-19




上陸初日は上陸準備や上陸中の隊当番や新たに補充の必要な物資の確認などをしているとあっと言う間に夜になっていた。

そこから、船番であるナミュール率いる8番隊を残し皆がそれぞれ島へと上陸した。
ルカと隊長達や役職のついている者や数人の船員は先日貸しきりの予約を取った酒場へと足を向けた。

『おじさーん!来たよ!』

「おう!兄ちゃん来たか!本当にお前さん白ひげの船の堕天使さんだったのか!最初の写真が初めて載った手配書見た時は随分なべっぴんさんだと思ったんだかな!失礼したなぁ!ワハハハハ!!」

「…………兄ちゃん?」

『おじさん…あのね…「待て待て、そのまま勘違いさせとけよ」サッチ?』

「何より、面白そうだ!お前はこのまま男のふりしとけ」

ルカの肩に腕を回し、耳元で小声でそう言ったサッチの顔はイタズラを思い付いた子供の顔をしていた。

『たく…まぁ、いいけどさ…』

呆れた顔をし溜め息をついて、他の隊長や船員に目を向けると一様に全員がニヤニヤとした顔を見せていた。

「さぁ、飲むぞ。ルカくんっ!」

「飲むぞー!ルカ!男らしく呑み比べでもすっか?」

常日頃から紳士らしくルカに接するビスタやマルコやジョズまでもが抑えきれずに笑いを溢しながらルカに話しかけてくる。

「お、男らしく勝負に受けてたつといいよい…ブッ…」

「あぁ、だが呑みすぎぬように…な…」

「気を付けろ…ルカ…」

マルコに至っては堪えきれずに吹き出す始末。
多少の怒りを感じながら、ルカはエースや若者組とテーブルを供にする事にした。

『たく、サッチのせいで皆面白がってる…』

「まぁ、いいじゃねえか!男でも女でもよ!ルカはルカだろ?」

『まぁ、そうだけどさ…。女としてのあたしのプライドが…』

「お前さんにそんなプライドあったのかい?」

『イゾウ!失礼だなっ、一応あるっつーの!』

「そんじょそこらの男よりよっぽど男らしいと思うがねぇ?」

クツクツと笑いながら、ルカの肩に肘を起き酒を煽るイゾウをルカは1つ睨みをきかせる。

『うるさいなぁ、別にいいじゃんか!海賊だもん』

ぷーと頬を膨らませながらそっぽを向くルカに店内は笑いに包まれていた。

と、そこへ店主が手配したのだろう。
セクシーなドレスに身を包み着飾った女が数名挨拶をしながら店内へ入ってきた。

「失礼します。お酌をしに参りました」

色気を振り撒きながらそれぞれの輪に入り込む女達に船員や女好きなサッチやラクヨウが大いに喜んだ。

隊長達には一人ずつ張り付き船員の元には数名に一人酌の為女がついた。

『ほえー、美人ばっかだねぇ?』

何だか中にいるのが憚られ、カウンターへと移動したルカは店主に話しかけた。

「気に入ってもらえたかな?」

『うん。皆楽しそうだよ、ありがとう』

「あら、お兄さん。そんな所にいないで一緒に呑みながらお話でもしない?」

背後から突如腕に絡んできた手に驚き目を向けると、にこりと色気を多分に含んだ笑みをルカに向けた女がいた。

『あー…こういうのは少し苦手なんだ。隊長達や他の船員とこいってあげてよ?』

「あら。初なのねぇ?お兄さん随分綺麗な顔してるから、女なんて選り取りみどりって事かしら?今日はあたしと呑みましょうよ?ね?」

ルカの頬に手を滑らせ、上目遣いで見上げる女に絡まれルカは半ばやけくそになる。

『(だぁーーー!くそっ!こうなったら、この女筆頭に全員侍らせてやる!)そうかい?そんな事はないんだけどね。一応上司や仲間を立てないとね?君は俺といてくれるの?』

男顔負けの笑みを浮かべ女の肩に手を回し話しかけるルカに女は頬を染め頷く。
それを見た女達はルカの見せた笑みに釘付けになると我先にとルカの元へと集まっていった。

「私もご一緒してよろしいかしら?」

『俺なんかでいいなら?』

完璧に男になりきり、尚且つ女を立てる話し方や動作に女達は一様にキャーキャーと声をあげる。

「おい、全部持ってかれたぞ…」

「あいつ、開き直りやがったよい…」

そんな会話をするサッチとマルコに視線を向けるとそれはもう悪人の様な笑みをニヤリと向ける。そして…

『皆と呑みたいけれど、隊長や家族が寂しそうだ…かわいそうだから、いってあげてくれるかい?あとで、一緒に呑みなおそうか?』

勝ち誇った笑みを浮かべ女達に指示するルカ。

「こりゃあ、一本とられたようだね?」

女よりも酒に興味のいっていたイゾウがクツクツと笑う。

そして、サッチとラクヨウは机に突っ伏してショックが隠しきれないようだった。

そうして初日の夜は過ぎていった。
翌日は、ナースのミシェル達と供に島を降り、買い物やスイーツを楽しみ夜には船へと戻り、休んだルカ。

そして今日3日目はとうとうエースと約束を交わした日となった。
まだベットの中で布団にくるまり、微睡んでいると、ノックもなしに突然扉が開け放たれエースが飛び込んできた。

『うえぇっ!?』

奇妙な雄叫びをあげたルカを見ると

「んだよ!まだ寝てたのか?俺は楽しみで楽しみで6時前には起きちまった!」

そう笑顔で話すエースにルカはというと。

『楽しみすぎて早起きとかどこのガキだよ…おめぇは…』

寝起きに驚かされたルカは多少ご機嫌ななめらしく、呆れた顔をしながら、エースにどつく。

「いてっ!いいだろぉ?サッチに言われて俺はそこから3時間も待ったんだぜ!」

どうだ!誉めろとばかりに胸をはり話すエースにじとっとした視線を向けると徐に溜め息を溢しながら

『わかった、わかった。行くから!着替えるから部屋から出ていって!』

扉を指差し退室を命じた。

「おう!じゃあ俺は甲板で待ってるからな!すぐ来いよ!わかったか?すぐだぞ?」

念を押すように話すエースにはいはいと投げやりに返事を返すとルカはエースを部屋からぽいっと投げ出し、準備を始めた。

それから30分程で準備を済ませて甲板へ向かうと、丁度町へ出る為だろう。
いつもより少し服装をかっちりとさせたマルコとサッチに会った。

『あれ?二人ともいつもと雰囲気違うね?』

「お、いつも素敵なサッチさんだが。より引き立つだろう?」

『喧しいわ!どうせ、酒場で女捕まえるんでしょ?』

「ど、どうせだと!」

「俺は違うよい。酒場で情報収拾だい」

『別にどうどうと女漁ってきますって言ったとこで、生娘じゃないんだから、気にしないよ?』

「なっ!」

「ざまぁねぇな、マルコ?」

そして笑いながら甲板へ出ると、気付いたエースがぶんぶんと手を振りながら駆け寄ってきた。

「おっせぇーよー!俺腹減っちまった!」

『ごめん、ごめん。じゃあ、最初はどっかでご飯でも食べよう?あたしもお腹すいたし!』

「おい、エース。お前朝もがっつり食ってたよない?」

「あれからどれだけたってると思ってんだ!」

「いや、エース。ものの2時間くれぇしかたってねぇよ…」

「んな事どうでもいいんだよ!とにかくルカ行こうぜ」

『あ、うん。じゃあ』

ね!と続くはずのルカの声は突如ルカを担ぎ上げ走り出したエースに遮られた。

『ちょ!エース!?自分で降りれるからああぁぁぁぁぁぁぁ!』

ルカの叫び声が小さくなりながらエースは船から飛び下り町へと走り去っていった。

「なんか、複雑だな…」

「あぁ、よい…」


数分の間呆然と島を眺める二人の姿が甲板にあったらしい。




仲良く町巡りへ?

(エース!もう降ろしてよ!)
(ん?そうか?よいしょ)
(たく、突然担いで走り出さないでよ…)
(わりぃ、わりぃ!早く行きたくてよ!)
(まぁ、いいや。あ、あそこでご飯食べよっか)
(おう!行こうぜ)

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