第五訓



「ごめんなさいねぇ、サッチさん。卵腐ってたみたいで・・・。又帰られるときまでに作って持って行きますね」


なんとか復活したサッチににこりと笑って言ったお妙の言葉にサーっと顔を青くしたサッチが慌てて提案した。


「お妙ちゃん!俺、俺こんなだけどコックなんだよ!!お妙ちゃんさえよければ俺と一緒につくんねぇか!!?」


サッチがダラダラと汗を滝のように流しながら言った言葉にお妙は少し考えてから笑って頷いた。


「そうですね。コックさんに他にもいろんな料理を教えて貰うのも手かもしれませんしね。お願いしてもいいですか??」


お妙の言葉に気づかれぬように安堵の息をついてからサッチもお妙に笑いかけた。


「もちろん!!任せとけってんだよっ!!おれっちが最高の手ほどきしてやんよ!」


こうして、近日中にダークマターを食べずにすむ事となったルカ達が談笑を始めた時。

奴は現れた。


「お妙さんとラブラブクッキングだとっ!!?それは俺の・・ぶほぁっ!!」


突如お妙の背後から現れた人物は何かを叫ぶ途中でお妙の容赦ない裏拳により後方の電信柱へと突っ込んだ。


「な、なんだよ!?ここは皆突然現れないといけないとか決まりでもあんのかよ!!」


エースが唖然としながら言ったが


「んなわけないだろ・・・。ありゃ、ただの動物園を脱走したゴリラだ」

「はっ!?あれゴリラなの!!?」

「ゴリラにしては小さかったない。まだ子供か?」


俺らの世界のゴリラより随分小さいな、なんて話しているマルコとサッチを見て新八が銀時に訴える。


「ちょ、銀さん。いいんですか?信じてますよ?あの人達…」

「いいだろ。ルカちゃんは気づいてるみてぇだしよ」


ほら、と銀時が指差した先に視線を移すとそこにいたのは、ぶっ飛んだゴリラの傍らにしゃがみこみどこから見つけてきたのか棒で顔面を笑顔でぶっすぶっすと刺しているルカがいた。






「いやぁ、悪いねぇ。お妙さんの花嫁修業のお手伝いだったとは・・・。そしたら俺いちゃだめだよね!!ねっ!お妙さん!!」

「話しかけないでいただけます?私まで獣みたいに見られちゃいますから。」

「もーう、お妙さんてばツンデレなもんで。恥ずかしいの??」


言った直後、お妙のアッパーがクリーンヒットし彼はまた地に沈んだ。


「で、こいつ誰だよ」

「いいんですよ、こんなゴリラ。放っておいて大丈夫です」


このままでは埒が明かないか、と近藤を紹介する素振りを見せない銀時達に溜息をついてルカが話し出した。


『この世界の警察。まぁ、海軍支部の大佐的な感じの人だよ。真選組局長、近藤勲。まぁ、警察のくせにお妙さんに惚れ込んでストーカーしちゃうちょっと痛い人ってとこ?』

「おいおい。この世界大丈夫か?」

「だめだろい。仮にも上に立つもんが犯罪してちゃよい」

『何言ってんの。サッチとあんま大差ないっての・・・』


近藤について話していたサッチとマルコにルカが言う。


「俺はストーカーはしねぇっての!!」

「そうですよ。それに、海の上じゃストーカーしたくても出来ないじゃないですか」

『甘いよ、新八くん。サッチはストーカーはしないけどね、セクハラは日常茶飯事だから』

「え、そうなんですか?」

「お前見てわからないアルカ。ありゃ、相当やらかしてる顔ヨ!!」

「神楽ちゃぁん?どういう意味だ、こら」


全く、なんて鼻息荒くサッチが神楽に抗議するのを見て、ルカが冷めた視線をサッチに向けた。


『毎日顔を合わせた途端に人の胸見て、溜息をつく。足出してりゃ鼻の下伸ばして見てるし、ミシェル達とお風呂入ろうとすれば覗き。これを犯罪と言わずになんと呼ぶんだ!えぇ?サッチさんよぉ!あんた、エリザ達からももろくそ言われてるからねっ!』


ビシぃッとサッチを指差して言い切ったルカを見て、エースが目を見開いている。


「ルカのキャラがなんかおかしくなってねぇか??」

「日ごろの鬱憤でもたまってんだろ。好きにさせとけよい」

「そんなことやってるアルカ。最低ネ」


サッチを心底冷たい眼差しでみた神楽とお妙と新八を見て、サッチがルカに怒りはじめる。


「馬鹿やろう!!覗きは男のロマンだ!胸見て溜息をついてんのも、心配してやってんだよ!それを何だ、お前!こんな公衆の面前で変態呼ばわりか!?」


開き直り熱弁するサッチを見て、ルカはとどめの一言を投下した。


『でも、さすがにでかくするために俺が協力してやろうとか言い出した時は、あたしほんとに身の危険を感じたけど?』

「こらぁぁぁぁぁぁぁ!!ルカちゃん、それは言っちゃ」

「ほーぉ。サッチ、てめぇはルカにそんな事言ってたのか?」

「覚悟はできたかよい?大丈夫だ、骨はしょうがねぇ。拾ってやるよい」

「いや、お前ら落ち着けって…酒の席で酔ってふざけてただけで、っぎゃあぁあああ!」


何とか免れようとしたサッチだったが、通用せず。
マルコとエース、そして何故かお妙が混ざりボコボコされたのだった。




「で、ゴリラ。てめぇまだいる気かよ。仕事しろよ、仕事」

「む!万事屋、お前にだけは言われたくないぞ!!わーはっはっは!」

「ダメネ。ゴリラは早く檻に帰るヨロシ」

「そんなことより、君たちはここらじゃ見ない顔だね?」

「おい、随分今更だな」

「手の込んだコスプレとかいったか?何かイベントでもあるのかい?」

「いや・・・」


マルコが話そうとしたのを、銀時が間に入り説明した。


「ということは、彼らは本物の海賊ということか!?」

「だからさっきからそういってんだろ!!」

「凄いじゃないか!!俺は近藤勲。真選組の局長をさせてもらってるんだ!!何か困ったことがあればぜひ俺を頼ってくれ!俺は白ひげさんの大ファンなんだ!!ぜひ握手を・・・」


銀時を完璧にスルーして近藤はマルコに手を差し出す。
戸惑いながらも、白ひげのファンだと聞いたマルコたちの頬は弛んでいる。


「親父は世界を越えても愛されてんだな!!」


エースは誇らしげに笑う。


「俺はマルコだよい。」

「俺ぁ、サッチだ。よろしくな!」

「ポートガス・D・エース。エースって呼んでくれよ!!」

『あたしはアマクサ ルカ。よろしくね、近藤さん!」

「あぁ、よろしく!ところでこれから何処に行くんだ?」

「さぁ、銀時達に任せてっから。俺らはなんとも」


エースの言葉にふむ・・・と考えた後に笑顔を浮かべて言った。


「じゃあ、屯所に見学に来ないか?」

「まぢでか!!?」


何故かそれに食いついたのはエース。


「はぁ?何でチンピラ警察の巣窟に行かなきゃいけねぇんだよ」

「勿論!!!お妙さんも一緒に!!」


そう言って振り返った近藤の顔面にお妙の拳がめり込む。


「働く俺の姿を見てお妙さん惚れ直しちゃうかもなぁ!!」


殴られたのにすぐさま復活した近藤の心の声が駄々漏れだ。


「あのゴリラ下心がみえみえネ」

「つうか、この世界の奴ら打たれ強いな・・・」


サッチが呆然としながら呟いた。


『大丈夫だよ。サッチも十分打たれ強いから」

「ルカ、ここで言う警察ってのは俺らの世界の海軍と似たようなもんなんだろい?」

『うん、まぁそうかな。なんで?』

「それなら、見学させてくれよい」

「おいおい、マルちゃん本気かぁ?」


マルコの言葉に銀時が心底嫌そうな顔で聞く。


「内部の統制を知るいい機会だろい。世界や取り締まる相手が違えど、根本は似通ってる筈だからな。そういうのを知るいい機会だ」

『マルコ、ここまで来てそんなん言ってたらもったいないよ?』

「そうだぜ?どうせなら、パーっと楽しめるようなとこのがいいんじゃねぇか?」


ルカと銀時がそう言ったのだが、もう既にマルコの頭の中は屯所見学一色となってしまっていたのだった。



いざという時に煌く

(なぁ、マルコがいやにウキウキしてねぇか?)
(ほっといてあげて、なんかもう屯所行き決定みたいだから)
(ルカ、どうしたアル?)
(だってぇ、あたし屯所も実は気にはなってるよ!なってるけどさ!!こういう観光?ってのは、ターミナルとかさ!!有名な場所行くんじゃないの!!?)
(なんだ、じゃぁ後で行こうぜ?)
(銀さん!!)
(2人で仲良く手繋いでよ)
(こっちも下心丸見えぇぇぇぇぇ!!)
(わーい!!絶対だからね!!)
(おう、早速今夜辺り行こうぜ)
(誰か!ルカさんが天パの毒牙にぃぃぃぃぃ!!!)
(ほぁちゃーーーー!!)

ドゴーーーーン

(その汚らわしい眼でルカをみるんじゃないヨ)

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