savior-33
izo,haruta, newgate side
親父の指示に従い、マルコとサッチを追った俺の視線の先には、紅い髪を翻し華麗に剣を振り回す…紅い騎士。
「心底楽しそうに闘う奴だねぇ…まるで…」
ルカみたいだ。
出そうになった言葉を飲み込み、死角からあいつを狙う海兵を狙い撃つ。
その瞬間、こちらを見たあいつは俺の姿を確認すると戦闘の最中にも関わらず、にっと笑顔を向けた。
ルカがいつか会いたいと言った、エースの弟とジンベイ達を引き連れ現れたあいつは。
不思議な奴だった。
得物が銃である俺は、近距離戦であるマルコやサッチ達に比べたら幾分も戦場全体を見回す癖がついた。
そして、それはこの戦場でも同じで。
いつも以上に周囲へと注意を巡らせた。
結果、こいつの不可思議な行動をこの目に見た。
そして、そのどれもが…まるでこの先に起こる事を知っていた上で動いているように俺には見えた。
「おいっ!!お前さんっ!!」
俺の声に視線をこちらへとむけたあいつの瞳は、ひどく俺を惹き付けた。
「今度はどこに、行きてぇんだ?」
その言葉に少し目を見開くと
『…エースと、ルフィの所!!』
ならばと、あいつと二人の間に立ち塞がる海兵を次々と撃っていく。
「これでどうさね…」
『サンキュー!!────っ!』
俺の隣を走り去りながら、言った言葉に振り返る。
イゾウ達に後ろを任せて、僕はビスタ達と親父を守りながら後退を始めた。
自ら残ると言った。
あのエースの弟のクルー、ライ。
ライはとにかく面白かった。
その強さも、能力も、海軍に対する態度も。
そして、何よりその行動が。
僕は基本後方を進んでたから、おおまかな部分でしかライを見ていなかったけど。
親父を助けたのも、あのオーズを助けたのも。
そして、何より今僕らを先に行かせて残ると言ったライと、僕は仲良くなりたいなと思ったのは確かだ。
でも、それだけじゃない事位わかってる。
似てるんだ。
ルカに…………。
助けに現れた時のイタズラが成功した子供みたいな表情が。
僕にとって最高の悪友であり、大切で大好きだった妹に。
その時だった。
エースが立ち止まって赤犬と対峙してると聞いたのは。
慌てて振り返った先で、炎とマグマがあがった。
おかしな…おもしれぇ小僧がいた。
そいつを見ただけで、これから変わる時代がひどく面白くなりそうな…
そんな予感がした。
もう少しわかけりゃあ、またロジャーとやりあってた頃の様な想いができたのかもしれねぇが…
自分がもう若くねぇ事は、重々に承知してる。
そして、それをつきつけたのも。
その小僧だった。
だから、息子達を行かせて俺ぁここに骨を埋めるつもりだったんだがなぁ…
俺を遮り、訴えてきたあいつに…
ルカがだぶっちまった。
結果、おれぁ情けなくもこの命を繋ぐ為に息子達とモビーへと向かっている。
「あの小僧…今日だけでおれらぁ何度助けられた…感謝してもしきれねぇ…が」
あいつの存在そのものが、俺の頭のどこかでずっと引っ掛かっていた。
背後で響いた爆発音に振り向けば、エースが赤犬とぶつかっている。
「ハルタァっ!!加勢いってやれぇ!!ありゃ、分がわりぃっ!!」
返事をして、走り出したハルタを確認し顔をあげた先に…
もう二度とこの目にする事も
この手で抱き締めてやることも
撫でてやることもできないと
そう思っていたむすめがいた。
紅い瞳で赤犬を睨み付け、その風貌は少しばかり変わってはいたが。
見紛う筈もない。
愛する娘がそこにいた。
『サンキュー!!相変わらず美人だな…!』
まさかと思った。
その言葉も、あの意味深な笑みも。
だけど─────
俺も、多分マルコもサッチも。
あいつの後ろにいたから。
その瞬間を見ていた。
他の奴等が見ていたかはわからねぇ。
だけど。確かに、ライという男は
ルカへと姿を変えたんだ。
俺たちの目の前で。
ハルタのお化け発言に苦い顔をして返すルカに、自然と笑みが溢れた。
あぁ、お前は俺らが知らないとこで…
また一人で闘っていたのか。
一人きりで俺らの為に。
そう自惚れてもいいんだろう?
だって、お前が未来を知っている事は知ってたんだ。
お前は姿を変えても、かわらず俺らを守ってたんだねぇ…
お前の望む未来になるんだろう?
それなら…ここを抜けたら
目一杯愛でて…
そして……………………………
お仕置きしてやらないとねぇ…
開いた穴を埋める方法は
(どれだけ探してもお前だけ)
(君しか埋められない)
(埋めたならもう一度始めようじゃねぇか)
それが、家族だろう?
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