savior-31
「走れ〜〜船へ走れ〜〜〜!!」
海賊達全員が船を目指し、ひた走る。
「エースさん!!ルフィ君!前を走れ!」
ジンベエがルフィとエースを促す。
「お前さん達ァ狙われとる!!一人でも多く生き残るんじゃ?!」
「早く乗れェ!!」
次々、海賊達は船に乗り込む。
「急ぐのじゃルフィ…」
不安げにハンコックは呟く。と、
「サカズキ大将!!」
「本気で逃げられると思うちょるんか…めでたいのう」
前線へ現れた赤犬に気付いた海兵達がざわめきだした。
そして、赤犬がマグマの拳を振るった。
「危ねェ!!"赤犬" だ!!」
「うわァアア!!」
「エースを解放して即退散とは、とんだ腰抜けの集まりじゃのう!白ひげ海賊団!船長が船長…それも仕方なしかのぉ……"白ひげ"は所詮…先の時代の"敗北者"じゃけェ!」
赤犬の言葉を耳にしたエースは、走る足をとめてその場に立ち止まってしまう。
「!?エース!!」
横を走っていたルフィが叫ぶ。
「ハァ… ハァ… 敗北者……?」
「?」
「取り消せよ……ハァ… 今の言葉……!」
怒りの形相でエースは赤犬を振り返った。
「おいよせエース!!立ち止まるな!」
「エース!?」
白ひげ海賊団の面々が必死にエースを止める。しかし…
「あいつオヤジをバカにしやがった……」
エースは押しとどめようとする仲間の手を振り払った。
「エース!!」
ルフィの声さえ、エースは振り返らない。
「お前の本当の父親ロジャーに阻まれ王になれずじまいの永遠の敗北者が"白ひげ"じゃァ…どこに間違いがある…!!オヤジ、オヤジとゴロツキ共に慕われて…。家族まがいの茶番劇で海にのさばり」
「………やめろ……!!」
エースの制止を無視し、赤犬は続ける。
「……何十年もの間海に君臨するも王にはなれず…何も得ず…!!終いにゃあ口車に乗った息子という名のバカに襲われかけ…実に空虚な人生じゃあありゃあせんか?」
赤犬の口車に乗り白ひげを襲おうとしたスクア ードが唇を噛みしめる。
「やめろ……!!」
再びエースが叫ぶ。
「のるなエース!!戻れ!!」
挑発に乗るなとの隊長達の声もエースを動かせない。
「オヤジはおれ達に生き場所をくれたんだ!!お前にオヤジの偉大さの何がわかる!!」
「人間は正しくなけりゃあ生きる価値なし!!!お前ら海賊に生き場所はいらん!!"白ひげ"は敗北者としていつか死ぬ!!ゴミ山の大将にゃあ誂え向きじゃろうが」
「"白ひげ"はこの時代を作った大海賊だ!俺を救ってくれた人をバカにすんじゃねェ!!この時代の名が!!"白ひげ"だぁぁぁっ!!!!」
「やめろエース〜〜!!」
ドゴォン!!
大きな音をたて赤犬のマグマとエースの火拳がぶつかった。が、拳が焼かれのけぞるエース。
「エース!!?」
「うわァア!!」
「………エースが!…焼かれた!!?」
マグマに包まれた赤犬が言う。
「"自然系"じゃいうて油断しちょりゃあせんか?お前はただの"火" わしは"火"を焼き尽くす"マグマじゃ!!わしと貴様の能力は完全に上下関係にある!!」
「!!!」
「エー…ス…!!……!う…」
エースの名を呼ぶルフィは突如崩れ落ち 、地面に膝をついてしまう。おそらくはテンションホルモンの反動。
「おいルフィ君!お前さんもう限界じゃ」
「ハァ…ハァ…」
息を切らすルフィは、ヒラリと目の前に落ちた紙に気がつく。
「あ…エースの……ビブルカード」
ズリズリ…と、エースの方へにじり寄るビブルカード。
「"海賊王"G・ロジャー "革命家"ドラゴン…この2人の息子達が義兄弟とは恐れ入 ったわい……!!貴様らの血筋はすでに"大罪"!誰を取り逃がそうが貴様ら兄弟だけは絶対に逃がさん!!」
かがみ込むエースへ告げた赤犬は、ギロと横目で何かを見ると
よう見ちょれ…。と呟いた。
「…おい!?待て!!」
エースは叫んだ。
赤犬の視線の先はルフィ……
「ルフィ!!」
力を失い、座り込むルフィに赤犬はマグマの拳を振りかざす。既に目前だというのにルフィは動けない。
その瞬間、風をきる音と巨大な鳥の羽音が聞こえた。
ドン!!
大きな殴打音と供にエースはルフィを巻き添えに飛ばされる。
そして、それをジンベイが受け止めた。
ハッとして顔をあげ、振り返った先には。
漆黒の翼と靡く銀髪。
そして、その紅い瞳で赤犬を睨み付け。
その肩を掴む亡き筈の愛する家族の姿だった。
『エース。あたし、あんだけ言ってたよね?カッとなるの治せってさ!!てゆーか、お前。何、人の弟ぶん殴ってくれてんのよ?覚悟出来てる?こちとら、身分偽ってたから暴れ足んないのよ。てめぇらまとめてぶっ飛ばしてあげる…』
捲し立てるように紡がれた懐かしい声に戦場は一瞬の静けさの後、驚愕の声が響き渡った。
「「「ルカーーーー!!!?」」」
「は?え?なに?ちょ!?マルコ!!さっきまでのイケメンどこ!?」
「知るかよいっ!!俺だって今頭が爆発しそうなんだよい!!」
「あれは…髪型、顔のタトゥーが多少違うが…間違いなくルカだねぇ…どういう事だ?」
「ルカーー!!やぁっと戻ったのか!!おっせぇよー!!」
『わかったから!ルフィ、黙ってて!!何故か海軍だけならず、味方からも謎の殺気を浴びてんのよ!!』
「ちょ、僕おばけとか初めて見たー!」
『はい!そこ!勝手に人をお化けにしなーい!!足あるでしょ!足!!』
「あ、本当だ…」
「おめぇ…本当にルカか…」
『ラルフ!』
「ルカは確かに俺らが看取った!!本当にルカなら、さっきの兄ちゃんは!?」
ラルフの言葉にルカは笑うと能力を使った。
瞬く間に、髪は燃えるような紅い髪へと代わり瞳も銀になり体格と男のそれへと変わっていく。
『どう?これで納得?』
声をかけながら、また女の姿へと戻ると苦笑いでラルフを見つめた。
「まじかよ…」
「て、事はルカ死んでなかったんじゃねぇーかよ!!」
ルカの姿がかわる事に白ひげ勢も驚きを隠しきれずに呆然とルカを見つめていた。
「堕天使だとっ!?奴は確かに、死んだと報告が!!黒ひげからも、殺したと!!」
「ルカちゃんじゃねぇーの…ライ君、妙に気になるなと思ってたら…こんな事になるとはねぇ…取り合えず、何があったんだ?」
「やばいねぇ…堕天使なら能力使えなくなったのも納得いくよぉ〜?どうすんですか?センゴクさぁ〜ん?」
「貴様が堕天使かっ!!よくも邪魔してくれたのぉ…」
『あーら…ごめんあそばせ…。この未来を変える為。あたしはここまで来たのよ。邪魔だどーの言うのは、こっちの台詞ね。あんた…邪魔!!』
右手が光るとルカの愛槍、黒金が姿を現すとルカは両手でくるくると回すとそのままに赤犬を切り上げて吹き飛ばす。
『あたしの家族に手出した事。地獄のそこから悔いるがいいわ。知ってる?堕天使の行く末。堕天使は魔界の王に……なったのよ?』
黒金を海軍へと向けると妖笑を浮かべたルカ。
以前白ひげ勢は唖然としたままである。
「クハハハハハ…あのガキ。堕天使だったか!!こりゃぁ、おもしれぇ!!」
「え?ちょ、ルフィ?兄ちゃんよくわかんねぇんだけど?なに?お前しってたの??」
「ん?何いってんだ?ライがルカでルカがライなんだぞ!!」
「てことは…なんかよくわかんねぇけど…!」
「「「「ルカが!生きてたぞーー!!」」」」
咆哮が戦場に響き、漆黒の羽根が舞い散る。
ルカの元へとサッチとマルコが走りよりマルコは頭へと拳骨を落とし、その後サッチがルカを抱き締めた。
「終わったらじっくり話聞かせろよい!!」
「ルカー!!よかった!ルカーー!!」
『痛いし、うざいし!!何!!?これ!とにかく!今は、皆モビーへ乗ってよ!!さっさと行かないとあたし本気出せないんだから!』
ルカが告げた瞬間。
「ルカ!!」
白ひげがルカを呼んだ。
振り替えれば目元に涙を滲ませ笑う愛する父。
『……親父さん…』
「心配かけやがって、このバカ娘がっ!!あとでこってりと直々に説教してやらぁ!!覚悟しとけよ!グララララ…」
そうして、ルカが生きていた事に活気ついた白ひげ勢は一気に動き出した。
動ける物は、怪我人をモビーへ乗せ、
はたまた海兵を蹴散らしながら。
そんな中、エースはルカに抱き付いた。
「バカやろう!!よかった…!!」
『エース。ごめんね…いろいろさ。とにかく。今は行きな!!ルフィと先にモビーに乗っておいてよ!!ジンベイよろしく!』
エースをどんと押してジンベイに渡すと振り返り、黒金を片手でくるくると回し構えをとる。
目の前には、復活した赤犬、黄猿、そして青雉。
「お前さんは生きての捕獲が義務つけられとったが…瀕死でもいいじゃろ?覚悟せぇよ…」
「ん〜、あんまり君とは相性がよくないんだよねぇ〜」
「ルカちゃん。今なら、なんとか俺してあげられるからさ。こっちおいでよ…」
『おあいにく様。あんたらはあたしには、絶対に勝てないわ?相性がとか、関係ないの。全ての能力者はあたしの前にひざまずく以外術はなし。軽い怪我で済むと思わないでよね』
がちゃり、音をたててルカは黒金を構え腰を落とすと、従え、呟くと三大将の元へと突っ込んでいった。
堕天使と家族
(運命は変えた。残るは、元凶を消すのみ!)
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