savior-14





「船を守れぇ!!とにかく船をっ!」

ルフィの声が船上に響き渡る。
クロコダイルも静かに命じる。

「受けてばかりでどうする。こっちも軍艦だ。撃たねェか、役立たず共……!」

「おれの提案だが、こっちからも撃つんだ 野郎共ぉ!!」

「了解!!キャプテン・バギー!」

『………調子よすぎんだろ…あいつ…』

呆れた視線を向けるライも、着実に向かってくる砲弾を切り落としていく。
その反対側では、飛んでくる砲弾を砂に変えるクロコダイル。
ルフィはふくれて腹で砲弾を弾き返す。
尚、抵抗し正義の門へ向かう軍艦を見た海兵が言う。

「囚人共め… 袋のネズミになる事がわかっていて。なぜ"正義の門"へ向う!?」

「門の開閉は、インペルダウン内部からの操作のみ!!それ以外開く術は絶対にない!!」

勝負は見えていると勝ち誇った顔をしていた海兵達だったが。

「撃てぇ!奴らを撃ち沈め………え?」

大きな音を立てて、少しずつ門が開いていく光景に海兵達がどよめきだす。

「"正義の門"が開いていく!?」

「……………………!? なぜ…!?」

「どうなっている!? なぜ門が開く!」

船上にいるルフィ達にもわけがわからず、開いていく門を呆然と見上げるだけだ。

「ど……どういう事かね?罠か!?」

「うおおおお!!やったぞぉ!何でか知んねぇけど門が開いた!!」

沸き立つ軍艦の船上から少し離れた舵を取るジンベイの隣にライが並ぶ。

『…やってくれるよな…ホント…』

「そうじゃのう…昔も今も…助けられてばかりじゃわい…」

前を見据えたジンベイをライは見上げる。

『……そんな事もねぇんじゃないの?』

そう言うとライはその場を後にして船首の辺りで腰を落とし騒ぐ囚人達を眺める。

そこへ、ルフィがジンベイへと駆け寄った。



インペルダウン1階、動力室。

「本当に門を開いてよろしかったんでしょうか?マゼラン署長!?」

船着場にいるはずのマゼランの姿が動力室にあった。
それは、能力でマゼランに姿を変えたMr.2ボン・クレー。

「これでいい。おれの指示が間違った事があるか?」

「いえ! 疑うわけでは」

「奴らの艦一隻を通したら、すぐに門を閉じろ。わかったな!」

「了解しました」

監視モニターに映る海上では、海軍が正義の門が開く事態に混乱しながらも、囚人達の乗る軍艦へ攻撃を続けている。

「動力室!!何をしてる!?誰が"正義の門"を開けろと……!」

「えぇっ!? しょ…署長!?」

マゼランが勢いよく扉を開け放つと、 そこにはマゼランに扮したMr.2いた。



その頃、ライの見据える先では舵を取るジンベエの背後でルフィが叫んでいる。

「ホントか!?ボンちゃんが?さっき入口で一緒にいたのに!!ボンちゃん一人インペルダウンに残ったのか?」

ルフィの言葉を聞きながらも返事はせずに前を見据えて舵を取るジンベイ。

「おれ達このまま進むのか!?」

「時間がない」

「あいつ置き去りにすんのかよ!!」

「他にも途中倒れた同志達を何百人と置き去りにしてきた!!──また戻ってマゼランと戦う気か!?さらに犠牲者は増える!時間も失う!!誰かが残らねばこの門は開けられんかったんじゃ!!」

納得のいかない顔を浮かべるルフィだったが返す言葉がなく黙りこむ。

『ルフィ、悪い。俺もいたんだ。知ってた。でも、彼はきっと止めても意地でもここに残ったろう…』


ライを見据えたルフィは悔しげに顔を歪める。
説得したジンベイも言いたくて言った言葉である筈がなく。
それを汲み取る以外選択肢はない。

『ルフィ、俺らがこれから進むのはこういう道なんだ。覚悟がまだできてないなら。今しろ。エースを助けたいなら。例え、俺でも踏み越えろ。捨て置け。それが出来ないのなら…』

ルフィがハッとしてライを見ると、ライの顔は無表情でルフィを見下ろしている。
でも、その瞳は揺らいでいた。

「……………わかった。ごめんな、ライ」

それを聞いたジンベイはルフィにすっと小電伝虫を差し出した。

「───まだ繋がっとる…」

「小電伝虫の念波は短い…。この門が閉じれば、通信も切れるじゃろう」

インペルダウン動力室では、額に青筋を浮かべるマゼランと対峙するMr.2がいた。

「そーよ!あちしよぉーう!んがーーはっはっは!またひっかかったわねぇーい!あの時顔をメモリーしといてよかったわ!」

Mr.2はハンニャバルに化け、マゼランに触れた時のことを口にした。マゼランは怒りに震える。
その時、雑音混じりながらに動力室に声が響いた。

【ボンちゃん!!】

「麦ちゃん……!?」

Mr.2は、マゼランが動力室に入った時にさえ見せなかった焦りの表情を浮かべる。

【おい!!聞こえてんのか!?ボンちゃん!!お前また何でこんな事すんだよ!!あん 時みたいによぉ!】

「ジンベイ!通信が切れるまで言わない約束だったじゃナイのよぉーう!」

【一緒に脱獄するんじゃなかったのかよぉ!!おれ…、助けて貰ってばっかじゃねぇかっ!!】

「……………」

【そこにいるんなら返事しろよ!!ボンちゃん!!】

船上ではルフィの叫びにより囚人達も、誰が正義の門を開けたか、その為に誰がインペルダウンへ引き返したのかが知れ渡る。

「そうだったのか…あのオカマの奴…おれ達の為に一人残って…」

「ボンちゃん!」

「ボンのアニキ返事しろよ!!」

「ボンちゃーん!!」

「Mr.2…!!」

Mr.2の名を呟き震えるMr.3。

「Mr.2!!おめぇって奴ぁ…!!なんかゴメンな、色々ぉ…!!」

ポロポロと涙を流すバギー。

「ボンボーイ……」

そしてイワンコフまでもが困惑を露にし、ライは少しずつ離れていくインペルダウンを見据えていた。

そして、ルフィとライ達の乗る軍艦が正義の門を通過しようとしている。インペルダウンに残ったMr.2への声は止まない。

【ボンちゃーん】

【ボンちゃん!!】

【ボン兄〜〜!!】

【ボンちゃ〜〜〜ん………!】

そしてルフィが悔しげに顔歪めた。

「ボンちゃん!!………門がもうまる!………おれ達………行くよ!!ありがとう!!」

「!!!!」

Mr.2の目から、涙が滝の様に勢いよく流れ出す。
小電伝虫からはMr.2への感謝の言葉がやまない。
その時Mr.2は小電伝虫を掴んだ。

【麦ちゃん!!】

「ボンちゃん!」

【必ずアニキ、救って来いやぁっ!!】

その言葉にルフィの目からも堪えようのない涙が流れ出す。

【アンタならザザ…かならザー… ザザ…】

雑音ばかりの小電伝虫にそれでもルフィはボンちゃーんと声をかける。
ルフィ達を乗せた軍艦が正義の門をくぐり 、門は閉ざされようとしている。

「門が閉まるぞー!撃沈せよ!!」

砲撃は軍艦には当たらず、大きな音を立てて正義の門は閉じた。

『本当にありがとう…ボンちゃん…』

ライの頬に一筋の涙が伝う。
出来れば、自分も声をかけたかった。
でも、ジンベイと共に決意を決めた彼を見送った。
この事知っていながら、止める事をしなかった。
そのどれもが心を締め付ける。
先程のルフィに言った"覚悟を決めろ"。
その一言は、自分への戒めも同じだった。

涙を拭ってライはもう一度閉じてしまった門を見上げる周囲からは鼻をすする声や今尚Mr.2を呼ぶ声が響く。

『(必ず、全てを終わらせるから!!)』

ルフィ達が乗った軍艦では、誰が言ったのかはわからない、しかし誰もが思っている言葉が呟かれた。
「あいつがいなかったらおれ達よぉ……今頃門の向こうで海の底に沈んでた…!!」



地獄にも
咲く一輪の友情の花
寄せては返す波跡に
忘れ形見の花びら残し
いつか再び 咲かせてみせよう
オカマ

Mr. 二 盆 暮



マゼランと対峙するMr.2は拳法の構えを取る。

「残す言葉はあるか!?」

「本望!!」

Mr.2は不敵に笑う。


世界最大の海底監獄インペルダウンより脱獄に成功した囚人の数──総勢241名。
たった二人の侵入者が起こした前代未聞のこの大事件はインペルダウンの歴史上最大の失態となる。


ポートガス・D・エース
公開処刑まで ──あと 4時間 。


地獄からの脱出
向かうは決戦の地
海軍本部 マリンフォード。





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