savior-11
「副署長に続けぇ!決してひるむな!!」
何度倒されてもハンニャバルはルフィへと向かってくる。
さすがにもうたてないのか這いつくばったハンニャバルをルフィが飛び越えた時。
「待てぇえ!!」
叫びながらルフィの腕を掴む。
「ハ…ハンニャバル副署長!!」
「副署長!!もう立たないで…死んじまいますよっ!?」
血吸を杖に踏ん張りハンニャバルはまた立ち上がる。
それを見たライはルフィの腕を引き自身の後ろへとやる。
「何を…貴様らシャバで悪名上げただけの…海賊に謀反人…!!何が兄貴を助けるだ!!社会のゴミが綺麗事をぬかすな!!貴様らが海へ出て存在するだけで…庶民は愛するものを失う恐怖で夜も眠れない!か弱き人々にご安心頂くために凶悪な犯罪者達を閉じ込めておく…ここは地獄の大砦!!」
ダァンと音をたて血吸を構えるハンニャバル。
「それが破れちゃ、この世は恐怖のドン底じゃろうがっ!!出さんと言ったら一歩も出さんっ!!」
ライに背後へ追いやられたルフィだったがまた前に出ようとしてライに止められながら声を出した。
「おれはエースの命が大事だ!!だからどけ!!」
「…………!!バカには何を言っても…」
意を決したハンニャバルだったが、背後から看守達の助けを求める声が上がった。
振り返ったハンニャバルの先には、何かに吸い込まれていくバズーカ部隊の姿。
と、その時。
ライから殺気だけが漏れ始めた。
「…!?ライ!!どうした!?」
ルフィが声をかけるが、扉を見据えたままライは何一つ反応を返さない。
「やめときな、正義だ悪だと口にするのは!!……この世のどこを探しても、答えはねぇだろ、くだらねぇ!!」
声と共に黒ひげが現れハンニャバルを踏みつけ、能力でバズーカ部隊を一掃する。
「ほうほう、こりゃすげぇ面子が揃ってやがる。何か取り込み中だった様だな…ゼハハハハハ」
『………………ティーチィぃ!!』
低く、小さな声でその名を口にしたライにルフィがいち速く気付く。
「ティーチ!貴様がなぜここにおるんじゃ!!いや、今は黒ひげと呼ぶべきか?」
「ジンベイ…ゼハハハハハ、おいおい物騒だな。そのこぶしは引っ込めて貰おうか?そういやぁ、おめぇはエースと……ルカとも仲がよかったな…だが、おれを恨むのはお門違いだ」
「黒ひげ…?」
「お前が…黒ひげだったのか?」
「そういや名乗った事はなかったな?ゼハハハハハ、久しぶりだな。麦わらぁ!!俺も驚いたぜ?お前が我が隊長エースの弟だったとはな、いいのか?もうすぐ始まるぞ?お前の兄貴の公開処刑がよ!!ゼハハハハハ」
その言葉にルフィが怒り動いたのを、ライが止めてジンベイへと投げ渡す。
「ん?おめぇは麦わらの船の紅の騎士だったなぁ?何だ?」
『………俺は、心底お前をぶっ飛ばしたくてな…うずうずしてんだよ。だけど…』
そう言った瞬間ライは姿を消す。
全員がライを見失い、驚きを露にした時。
突然黒ひげから血渋きがあがった。
「うぎゃあぁぁぁあ!!?」
黒ひげのクルー達が目を見開き駆け寄ると、ティーチのすぐ隣にライが現れ剣先をティーチの首へと宛がう。
『今はエースの救出が先なんでな…だが、てめぇは必ず俺が地獄へ叩き落としてやるよ…』
きたねぇ血がついた…と剣の血を払うと自身へと武器を向ける黒ひげのクルーを覇気で威嚇する。
『あぁ、お前らも。その糞野郎といる時点で同罪だ…お前らも覚悟しておくといい。次、俺の前に現れた時。その時がお前らの最期の刻だ…』
黒ひげ、ティーチとその一味をその鈍く銀に光る瞳で見据えると、ここでクロコダイルが口を開いた。
「"黒ひげ"と言ったなァ? "白ひげ"の船の名もない海賊が、おれの後釜に入ったとは聞いてるが… 妙じゃねェか? 「海軍本部」に召集を受けてる筈の貴様がなぜここにいる?自ら欲した"七武海"の称号をすでに捨ててるといえる」
「全て計画の内だ。色んなズレは生じたがな ――その全てをお前に教える義理があるか? Mr.クロコダイル」
「………ねェな。実際の所、興味もねェ」
「愛想のねェ野郎だ」
『どうでもいいよ。そんな事。俺とルフィは必ずエースを助け出す』
黒ひげを真っ直ぐに見据えたライ。それに続いて、
「あぁっ!!俺もだ!ぜってぇ、助けてみせる!!」
ルフィが険しい顔をしたまま、ジンベイに抑えられながら黒ひげを見据えて言う。
「ゼハハハ… ああ 無駄だとは言わねぇ。この世に不可能ということは何一つねぇからな」
黒ひげは歩き出し、すれ違いざまにルフィへ言う。
「――空島はあったろう?」
「!」
「海賊が夢見る時代が終わるって?」
足を踏み出した黒ひげが足を止める。
「"ひとつなぎの大秘宝"もそうさ!!必ず存在する!ゼハハハハハハハ!!楽しみにしてろよ?おめェら!わずか数時間後、おれ達が!!世界が震撼する最高のショーを見せてやる!! ゼハハハハハハハ…」
『あぁ、最高のショーだろうな?お前らを血祭りにできる…………最高のショーだ。そのきたねぇ首洗っとけよ』
剣を鞘へと納めるとライはルフィ達へと声をかけて階段へと走り出した。
ジンベイやクロコダイル、イワンコフと黒ひげティーチに大きな疑問を抱かせながら。
ライは階段を駆けあがる。
『(まだだ…まだ。ティーチとはマリンフォードで決着を着ける。堕天使のルカとして!!)』
追い付いたルフィが隣へ並ぶ。
「大丈夫か?」
『ん、平気。ぶち飛ばしたくて、うずうずしたけど。まだその時じゃない。今はエースを助ける事が先決だからな!!行くぞ!ルフィ!』
「おう!!」
と、階段を駆けあがるライ達の前へ獄卒獣ミノタウロスが立ちはだかる。
「獄卒獣てのぁ、覚醒した動物系能力者だ。桁外れの強さとタフさ、回復力の早さが売りだ。もたもたしてると、さっき倒した獄卒獣達もきちまうぞ?」
クロコダイルの言葉にルフィとライが驚く。
「あれ、悪魔の実の能力者なのか!?」
『…………覚醒…。あぁなんなくてよかった…』
ぽそりと呟いてため息をついたライに周囲にいたルフィとジンベイ、クロコダイルが不思議そうな顔をしたが、他の獄卒獣に復活されては事だと、ルフィが黒ひげを殴り損ねたイライラをぶつける事でミノタウロスを一撃で地に沈める。
そして、また階段を駆けあがりだした時。
「麦わらぁぁああぁぁぁ!!」
マゼランの声が響いた。
「もう来たのか!?あの毒野郎!!」
『ルフィ!!先頭を走れ!!急ぐぞ!!あいつの相手をいちいちしてらんねぇ!!急げっ!!』
その声に走る足を更に早め、level3へと突入したライ達は看守を蹴散らしながら更に上へと上がるためlevel2の階段へと急ぐのだった。
真の怒りは真の姿で晴らすべし
(今はとにかくここを出るぞー!)
▼
main