savior-7




「………………あいつは何してやがんだ?」

「…………………わからんがね…」

「ちょとぉ〜う!!なぁに遊んでるのよぉ〜ぅ!!」

唖然としながら見るバギーとMr.3をよそにぶんぶんと手を振るボン・クレー。

視線の先にいるのは、嬉々とした表情で軍隊ウルフを追いかけ回すライの姿。
しかも、その首には他の軍隊ウルフに比べたら少し小さめの軍隊ウルフが巻き付いている…というか、巻き付かされている。

『お!お前ら来たかー!!待ちくたびれたぞー』

そう言って、ぐりんと方向を変えてボン・クレー達へと走り寄る。

「お前…それ…」

バギーが首に巻き付かせている軍隊ウルフを指差す。

『んあ?…あぁ!寒くってよーぉ?やっと捕まえたんだけど、プルプル震えてかわいそうだったから!!首に巻いた!!』

「震えてなかったらどうするつもりだったんだがねっ!!」

『え?……………そりゃぁ…』

ニヤリと笑ったライの背後に見えた黒いオーラに、バギーとMr.3は自然と悲鳴が漏れる。

『冗談だよ…んなひでぇ事するかよ…お前ら、俺を何だと思ってやがんだ。純粋に毛皮に埋もれようと思っただけだ。ついでにルフィのとこまで運んでくれねぇかなってのも思ったけどな』

ライの言葉にホッと息を吐き出した瞬間。二人はライの後ろへ視線を向けて固まった。

「ちょ…ちょっとぉ〜ぅ!!あんた!!群れが!!」

ん?と言いながら振り向いたライが、固まる。

いたのは、巨大な群れをなし唸る軍隊ウルフ達。

『………おぉ。陣形組んでやがるな…さすがだなっ!軍隊ウルフっ!!』

ニッコリ笑って3人を見たライに全員が思いっきり頭を殴った。




『いってぇなぁ…何も殴るこたねぇだろっ!』

ギャーギャーと言いながら頭を押さえ走っていたが、気付くとバギーとMr.3が消えている事に気づいたライ。

『あれ?なぁ、いねぇよ?二人』

「放っておきないよぉ〜。今は麦ちゃんのところへ行って、オカマ王、イワさんを探さなくちゃ!!」

『ん!!そぉだなっ!!ルフィーー!!?どーこだぁ!!俺あっち見てくるからよ!お前はあっちな!』

そう言って別れるとそれぞれがルフィを探して檻を覗きながら先へと進む。

暫く進むがルフィは見つからず。
引き返してボン・クレーの進んだ方へと走っているとルフィを運ぶボン・クレーを見つける。

『おっ!!いたか!?』

走り寄ると、いつのまにか軍隊ウルフに襲われたのか傷だらけのボン・クレーと荒い呼吸を繰り返すルフィを見て、ライは苦虫を噛み潰した様な顔を浮かべる。

『ルフィが望んだとは言え…ごめんな…Mr.2も。ここから先は俺が闘うから。ルフィを頼む…』

言ってライを先頭に極寒のフロアを塔に向かい歩く。

さすがに薄着なライも凍傷のせいでもう手足の感覚があまりない。
寒さで意識も危うくなるが、ルフィを運ぶボン・クレーを振り返ればもう半分意識を飛ばしながらもルフィを助けたい一心で足を進めているらしい事が見てとれる。

『もう少しだからな!!』

声をかけて、前を向き直れば軍隊ウルフが現れる。
雪を踏む音に周りを見渡せば、さっきの比ではない数の軍隊ウルフが唸りながら近づいてくる。

『この状態でこの数はちぃときついか?』

しょうがねぇ…。呟くと軍隊ウルフ達に覇気を向けた。

『くそ、霞む…』

ここに来てライも寒さから限界を迎え倒れる。

覇気で倒れた軍隊ウルフの群れの中心でライ達を見つけたのは…。











騒がしい喧騒を耳にして…ライは浅い眠りの中で夢を見ていた。

事あるごとに宴だと騒ぐ家族達の賑やかな喧騒の中心で笑っていた頃の。

幸せな…幸せだった頃の夢を。

隣を見ればエースが食べかけの皿へと顔を突っ込んで寝ていて。
向かいではサッチとラクヨウとマルコが言い合いをしていて。
それをハルタがちゃかして、毒のある一言を投下するイゾウがいて。
そんな彼らを少し離れたとこから苦笑いを浮かべるビスタにジョズ、ジルにアトモス、クリエルやキングデュー、ナミュール達がいて。
酒を豪快に煽るフォッサにブラメンコとブレンハイム。
そんな皆を見て回して、後ろを振り返れば…


大好きな…大好きな親父さんが楽しげに笑っている。





あぁ。いいな。



純粋にそう感じた。

そして、場面は変わる。
ルカ自身には記憶にない。

自身の水葬の様子。

傘下の海賊団全員が円を描いた中心でゆっくりと沈んでいく自分を見ていた。

見渡せば、皆の顔が鮮明に見えた。

皆の顔がひどく疲れていて。
勝手な自分の決断でこんなにも大切な家族達を苦しめていたと。

わかっていたのに、更に痛感した。

ぼおっと涙を流す家族を見つめる。


あぁ。こんな顔させたくなかったのに。
結果的にはこの事態だ。
たとえ、祖父が戦争の起こらない未来が見えなくても
今を生きていたのはあたしと彼らで…

もっともっと、あたしが頭のいい子だったら。
こんな顔をさせなくていい未来もあったのかもしれない。

ルカの胸がギシギシと悲鳴をあげる。

それでも、こうする以外に方法なんて思い浮かばなかった。
それなら、今を精一杯生きて。

そして、全員揃って笑って。
あの海へ帰るんだ。

新世界へ!!

あたし達家族が生きる海へ!!



過去、現在、そして明日

(待ってて…エース!!待ってて!!皆!!長い長い、長かった旅が明日終わる)

prev next


main


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -