travel-08



甲板に舞い降りたルカを待っていたのは、船番で残っていた船員達だった。


「おい、ありゃ誰だよ。」

「俺、あいつ見たことあるぜ。手配書で、確か最近また額が上がった"堕天使"だ!」

「なんでそんな奴、マルコ隊長が連れてきたんだよ。」

「おい、サッチ隊長も一緒だったみたいだぜ?」

「あ?ホントだな。んだ?ナンパでもしてきたのか?」

「いくらサッチ隊長でも、オヤジの首狙ってるかもしんねぇ、得体のしれねぇ女ナンパしてこねぇだろ。」

「それに……なんて言ったってマルコ隊長も一緒なんだぜ?」

「「あぁ、それもそうか…」」

「ってぇ、おいっ!?おめぇら、俺を何だと思ってんだよ!」

「うるせぇよい。サッチ。それに、今のは自業自得だ」

「マルコまでっ!ひでぇ…」

『なんかサッチさん…ドンマイですね…』

「んな奴ほっとけよい。お前はこっちだ。オヤジが呼んでんだい」

『あ、はーい』


またも踞り落ち込むサッチを一蹴し、先に船内へ向かったマルコを追いかけルカも船内へ続いた。
白ひげの元へ向かう途中、 マルコが口を開いた。


「いくらオヤジが会いたがってるとはいえ、何かしようもんならそのちいせぇ体ぶっ飛ばすからな。大人しくしとけよい」

『別に何もしないし、するつもりもないですよーだ!』

「ふんっ。どうだかな」

((んだよー。予想はしてたけど、感じ悪すぎでしょ。マルコさん))


そんな愚痴を心で思いながら、2人は随分と大きな扉の前へ着いた。

コンコン


「オヤジ、連れてきたよい」

「おう。入れ」


ギィっと重く響く扉を開き、マルコは中へ入っていく。
それに続くように、ルカも中へ入ると
ブワァ!!っと何か突風が吹いたかの様に通りすぎ、直後空気がズンっと重くなった。
目の前には大きなソファーに凭れて座る点滴に繋がれた白ひげが座していた。


「おめぇか。今世間を賑わす堕天使ってのは!!グララララ」

『ホントにおっきいですねぇ、白ひげさん。そうですよ。賑わせてるかは知らないけど、堕天使は確かにあたしですね』

「ほぅ、俺の覇気にも動じねぇか。なかなか肝の座った姉ちゃんみてぇだな。グララララ」

『誉め言葉と受け止めますね。それで?世界最強の男が、こんな小娘に何のようですか?』

「あぁ、呼び立てて悪かったなぁ。おめぇが、やってきたこたぁ新聞や傘下の息子達から聞いてらぁ。航海中の事はともかく島に上陸した時にやってる事は正義のヒーローみてぇな事ばっかじゃねぇか。革命軍を名乗るわけでもなく、やってるこたぁ海軍がキライだと思える事ばかり。かと言って、鷹の目みてぇに1人で海賊名乗るわけでもねぇ。おめぇ、何がしてぇんだ?」


ルカを楽しげな瞳で見下ろす白ひげを見据えてルカが話し出す。


『そうですねぇ。来るべき時までに、名前と顔を売るため…かな』

「ほぅ。女1人で名挙げて、どうするんだ?」


答えたルカの言葉に間髪入れずに聞き返した白ひげに、ルカはニヤリと笑みを浮かべて告げた。


『白ひげ海賊団に入る為…かな?』

「てめぇ、何言ってんだよい!!」


その言葉にマルコが吼えるが気にした様子もなく白ひげが尋ねる。


「ほう。何でだ?」

『白ひげさんに憧れて。白ひげさんに息子と自分の子供だと言われ愛される息子さん達が羨ましいと思ったから…ですかね?その絆に憧れたんですよ』

「おいっ!?てめぇ「黙れ!マルコっ!」オヤジ…」

「ついでにちょっと下がっとけ」

「だけどよい!オヤジ」

「こんな小娘にやられる程弱っちゃいねぇよ。いいから出ていけ」

「……わかったよい」


マルコを制した白ひげは、今だその顔に笑みを浮かべている。その様子に諦めたマルコは渋々部屋を後にした。


「さっきのもあながち嘘ではねぇみたいだが、俺の目はごまかせねぇぞ。他にもあんだろ?ここにいたい理由がなぁ」

『白ひげさんには敵わないなぁ』

「俺に隠そうなんて、100年はえーな!!グララララ」

『それでも、あたしは言うつもりはありません。でも、これだけは言える。貴方方を貶めようとする者は許しません。が、あたしはあなたとあなたの大切な息子さんに手は出しませんよ』


両手を上げて、おどけてそう言ったルカの顔を見据えた白ひげがニヤリと口角を上げた。


「まぁ、今はそれでいい。いつか話そうと思ったらいつでもいやぁいい。今日から、おめぇは俺の娘だっ!」

『ホント!?』

「こんな嘘ついてどうすんだ。グララララ」

『それもそっか!ありがとう。オヤジさん』

「ふん。せいぜい精進しろ」


自分を父と呼び、笑ったルカを見て白ひげは笑いながら持っていた酒を煽った。

その頃扉の外では


「またオヤジは考えなしに…」

「っいーじゃねぇか!妹ができんだぜ」

「俺は認めねえよい」

「おい。マルコォっ!それにサッチもいるんだろっ!?」


その声に2人は扉を開けて室内へと足を踏み入れた。


「いるよい」

「俺もな」


そう言って、顔を顰めるマルコと笑顔のサッチを白ひげは一蹴して告げた。


「おい、宴の準備しろ!今日は新しい家族が増えた祝いだぁ」

「おう!ルカちゃん、サッチさんがうんめぇ飯作ってやっから、楽しみにしとけぇ!!」


そう言い残して、返事を返す間もあたえず走り去ったサッチを見送り、今度はマルコに視線を向けた。


「マルコ、おめえはこいつの部屋の手配しとけ」

「チッ……わかったよい」


そう不満たっぷりに舌打ちしてマルコも部屋を後にした。


オヤジと息子と娘



(念願の娘だぜっ!意外に普通に仲間入りできちゃったなぁ!!)
(俺はまだ認めねえよい)


2014/03/27 加筆修正

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