travel-07



『随分豪華なお出迎え…』


その声にサッチとマルコが振り替える。


「ゆっくりでもよかっ…た…の……に…?」

「おい、サッチ。お前ホントにバカだろい」


ルカの姿を見たマルコが重い溜息をついて、サッチへと顔を向けたが。


「遠目でも超美人だったけど、近くで見ると更にびっじーん!さぁ、こんなパイナップルほっといて、行こうか!!」

『そう?ならこの先におしゃれなカフェがあるから、そこでいーい?』


サッチがルカの隣に並び肩を抱いて歩み出そうとした所に、どすの効いた低い声が響いた。


「あぁ、そこにし「ふざけんなよい」


サッチの腕をとり、行かせまいと遮り覇気をだし纏わせたマルコ。


「はぁ?お前、こんなお嬢さん相手に何かましてんだよ。止めろって!親父にどやされんぞっ!?」


サッチがマルコの肩を掴んで鋭い声で返したが、マルコは呆れた視線を向けるとサッチに言った。


「お前…あれほど上陸前に言ったよない?」

「はぁ?何をだ…よ…。……あ」


それは、早朝。
白ひげ海賊団が島へと上陸する前の事。


[この島にはさっきの偵察で高額の賞金首が1人いるって確認したからよい。若い奴等もだが、隊長達も気をつけてくれよい。]

[マルコ、我々も注意するような危険な者があの領地にいるのか?]

[そうだよ、マルコ。僕達が敵わないとでも?]

[ビスタ、ハルタ。敵わないとは思ってないがねい。何分謎が多すぎる上に、親父の会いたがってる奴なんだ]

[おい、それってこないだ傘下にも指示だしてた?]

[サッチの癖に勘がいいな。そうだよい。最近新聞を賑わせてる堕天使だ]

[それならしょうがないねえ、マルコが危険視すんのも。なら、サッチ。お前さんが1番気を付けるこったな]

[はぁ?イゾウちゃーん。どうゆー意味だよ。]

[お前さん。美人に弱いだろうが…]



そのやり取りを思い出したサッチが、自分よりも大分背の低いルカへと視線を落とす。
と、間の抜けた声をあげた。


「………堕天使?ってこの子がっ!?」

「ったく…。イゾウの言う通りになったじゃねぇかよい。で、お前どうゆうつもりでサッチの誘いに乗った?」


ルカへ顔を向けたマルコは鋭い目付きで睨み付けている。
そんなマルコを一蹴するとルカはその顔に笑みを浮かべた。


『そーんな凄まないでよ。1番隊隊長、不死鳥。マルコさん?』

「えーー。せっかくのデート台無しかよ…」


そんな緊迫したムードも気にせずサッチは肩を落とし、ショックを受けている。


『あはは。4番隊の隊長さん…めっちゃへこんでるよ!で、それよりも不死鳥さん。その覇気しまってよ。街の人怯えてるよー』


そうルカが言うと誰のせいだと言うようにマルコに更に睨まれる。


「とにかくお前、船まで来てもらうよい?」


覇気をしまいながら、ぎろりとルカを睨むマルコ。
それを飄々とした態度で了承したルカ。


『どーせ拒否権なんてないんでしょ?』

「断ったら引きずってでも連れてくよい。おら、サッチいつまでやってんだ。おいてくぞ!」


そう言うとサッチに思いきり蹴りを入れた。


「いってーな!お前もう少し優しくしたらどーなんだよ!!」

「なんでお前なんかに優しくしなきゃいけねぇんだよい。ふざけんな」

『(おー。なんか、期待を裏切らないな)』


2人のやり取りを見て、にやにやと弛んだ顔を見せるルカに顔を向けたマルコがぶっきらぼうに声を掛けた。


「おい。何ニヤニヤしてんだよい。行くぞ」

『あ、はーい。』


返事をして歩き出したルカは2人に挟まれ、街を抜けていく。


『(こら、結構スムーズに事が進むかもなー。モビーにオヤジさんとか…あたし鼻血大丈夫だろうか…)』


そんな緊張のカケラもない事を考えながらルカは船へと向かうのだった。


それから暫く歩くと、茂った木々の間から白鯨を模した船首の大きな船、モビー・ディックがその姿を現した。


「親父に話してくるからここで待ってろ。サッチ見張ってろよい」


モビー・ディック号の麓に辿り着くと、不機嫌そうな顔を隠しもせずにマルコが告げた。


「あ、あぁ。でも別にそこまでしなくても…」

「み・はっ・て・ろよい」

「…………はいυ」

否を唱えたサッチだったが、マルコの一睨みで口を噤むのを確認するとマルコは船へ乗り込んだ。

その間、ルカとサッチはその近くに座り込み話をしていた。


「あれ?名前は……えーっと…」

『ルカ、アマクサ ルカだよ。サッチさん』

「あぁ、そうだ!ルカちゃん!!あれ?俺の名前知ってんだ?」

『そりゃねぇ、かの有名な白ひげ海賊団の隊長さんだもん。知ってるよー』

「なぁ、ルカちゃんは1人でこの新世界を旅してんのか?」

『ん?あぁ、そうだよ』

「危なくねぇーか?女の子なんだし。親御さんも心配してんじゃね?生まれはどこの海なんだよ?」

『ないよ』

「ない?(この時代珍しい事じゃねぇが、女の子が1人旅して平気な海じゃねぇ。それなりに腕はあるから、あんな高額の手配書もまわってんだろうけど…)寂しく…ねぇか?」


訝しがりながら、サッチの口をついて出たのはその言葉。


『んー。寂しくないって言ったら嘘になるけど、また会おうって約束した友達いるし…。目的もあるから。』

「目的?なんなの目的って?」

『なーいしょっ!』


ニカっと笑顔を見せたルカにサッチは訝しげな視線を向ける。
と、その時甲板から声をかけられた。


「おいっ!上がって来いよい!!」

『あ、呼ばれたね。行こうか、サッチさん』

「あ、あぁ」


そう言って、後ろで聞きたげな雰囲気を出しているサッチが着いてくる気配を感じながら船へ向かい、ルカは翼を拡げ飛び立った。


堕天使の想い


(また会いたい友がいる)
(守りたい未來がある)
(それだけで充分。そうでしょ?)

(一瞬垣間見た彼女の憂いを帯びた顔は確かに俺の中に何かを芽生えさせた)


2014/03/19 加筆修正

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