rode-57
くまによる攻撃によりスリラーバークは壊滅状態。
瓦礫の山の中を進むのは、バーソロミュー・くま。
倒れている中から、ルフィを見つけ出したらしく手を伸ばしたところで、ゾロとライがくまに襲いかかり止める。
「…まだ、動けるか」
言葉を発したくまへと視線を向けたゾロは驚きを露にした。
「てめぇ、フランキーと同じ……」
『(……パシフィスタだったかな)』
その瞬間くまが口からビームを発する。
ギリギリでライがゾロを蹴り飛ばした事でビームを避けた二人が振り替えれば、ビームの当たった岩は溶けている。
「……おい、おい」
「正確に言えば、私は鉄人フランキーとは違う。政府の天才科学者ドクター・ベガパンクによって改造された政府の人間兵器の試作品…パシフィスタだ」
悪魔の実の能力者である事に加え、鉄よりも遥かに固い金属で覆われた体に加えビームを放つくま。
どれを取っても、比較的ダメージの少なげなライがいてもゾロは気を失っている仲間を守りながらでは到底勝てないと思い至り、口を開いた。
「どうしても、ルフィの首を持ってくのか?」
ライは様子を見る事にした。
「それが最大の譲歩だ…」
「わかった…。ただし」
そう言ってゾロはくまを見上げる。
「ルフィの代わりに、俺の命1つで勘弁してくれ。こいつらには手を出さないでくれねぇか。今はまだ名もない首かもしれねぇが。いずれ世界一の剣豪になる男の首と思えば取っておいて損はねぇ筈だ」
「……そんな野心がありながら。仲間の為に死ねるのか?」
「それしかこいつらを救う術はねぇし、船長の命1つ救えないで自分の野望も何もねぇだろう?ルフィは……!!海賊王になる男だっ!!」
ライの見据える先で、ゾロがくまへと告げる。
と、瓦礫の崩れる音に視線だけそちらを見ればふらふらとサンジが現れ、ライの前を横切りくまとゾロの元へと近付く。
「おい、おい。くそ剣士の首じゃ足りねぇだろう?俺の首を代わりに持っていけ。俺は後々もっとでけぇ男になる。みすみす見逃したら後で手ぇ焼くのはお前らだぜ?」
「…おい、てめぇ!!」
言ったサンジにゾロが噛みつく。
「わりぃが、コックは新しい奴を探してくれと伝えてく……れ…!?てめっ」
別れを託したサンジを背後から気絶させたゾロを見るとライはクツクツと笑いだした。
それに気付いたゾロが訝しがりながらその顔を見る。
『……くくっ。わりぃ、無器用すぎてわらっちまったよ…くくっ』
笑うライに眉間にしわを寄せながら、お前はあっちいけとでも言うかの様に手をあげた瞬間。
『……悪いが、お前もねんねしててくれ…』
背後に移動したライがゾロの首へと手刀を落として気絶させると、くまを見上げた。
『……俺はここでみすみすこいつらの首を渡す気もないし、俺も死ぬわけにはいかねぇ。が、こいつらを守りたい気持ちは十二分に持ってる。他に案を出せ。俺が、全てを引き受ける』
「……これで、麦わらに手を出そうものなら恥をかくのは俺のようだ。ならば、私を信じろ。約束は必ず守る。その者達に手出しはしない。だが、お前には麦わらの蓄積されたダメージと疲労を代わりに受けてもらう」
そう言いながらくまはルフィの体からダメージと疲労の塊を弾き出す。
「これがその一部だ。今のお前でもこれ全てを引き受ける事。それは場合によっては死をも意味する」
そう言って、ダメージと疲労の塊の一部をライへと放つ。
『ぐぁぁああぁあっ!?』
受け止めたライはそのダメージと疲労を受け体を走る激痛に悲鳴をあげる。
息を整えると流れ出した血を拭い、場所を変える事を伝えると離れた森の中へと二人は姿を消す。
そして、数分後。
森から響きだしたのはライの苦痛の叫びだった。
そして、くまがスリラーバークを離れて暫くたつ。
壊滅状態のスリラーバークで倒れた全員が一人又一人と意識を取戻しだした。
それはルフィを筆頭とした麦わらの一味も例外になく目を覚ます。
だが、あれだけ疲労していた筈のルフィが誰よりも元気に騒ぎ出す。
と、気絶させられたサンジとゾロも意識を取戻した。
「………おい、くそ剣士…何でてめぇまでぶっ倒れてやがる…」
「…くっそ!油断した!俺ぁライに不意打ち喰らって…!?」
目を見開いた二人は周囲にライの姿がない事に気付き騒ぐルフィ達を他所にライを探しに走り出した。
そうして、森の中をさ迷う事数分。
拓けた森の中で血塗れでたつライを見つける。
「ライ!!大丈夫かっ!?」
「こりゃあっ!?おい!!何があった!?」
声をかけた二人に反応して振り替えるとライはニッと笑いかけると。
『…よう。大丈夫だ。あいつはもう帰った。他の奴等……………は…』
言葉を紡ぐ途中でライは倒れてしまい、慌てた二人はライを担ぐと急ぎ、チョッパーの元へと走り出したのだった。
そうして、悪夢の七武海との連戦は幕を閉じた。
ライの治療が一段落付くと、彼らは宴を開始する。
その間もライは受けた傷とダメージの回復の為こんこんと眠り続ける。
『…こ、こは…』
気付くとライは又真っ白な空間にいた。
「……久しぶりだな。」
聞こえた声に前を向くと、己を見つめる番人の姿。
『…うん。久しぶり』
「…彼らに全てを告げるのか?」
『ううん。戦争の事とこれから起こる事ははぶくよ。でも、それ以外の事は正直にすべてを話すつもりだよ。あいつらなら、話しても…問題ない。わかってたけど、時間がもうないからね。強くなるには協力してもらわなくちゃだもん…』
「……そうか。お前がそう言うなら思う通りにするといい。答えは出たか?」
『…うん。みんなの未来を守れるなら……あたしは化け物にだってなってみせる。…この世界に来た時にした決意を少し忘れてたみたいだよ…ありがとう』
突如ぼやけだす視界に目覚めが近い事を悟ったルカは、番人に告げる。
『……ありがとう。行ってきます!!』
最後に見えたのは番人の笑顔だった。
全ては居場所をくれた彼等のため
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