rode-45
「おい。何であいつたん瘤作って不貞腐れてんだ?」
その声に視線を向ければ、外でルフィとコビー達と話してた筈のゾロがいた。
まだイライラとしていたライはコーヒーを煽るとカップを置いて部屋を後にした。
「ルフィのおじいさんに赤髪と同じ紅い髪だからって殴られてしまったのよ」
くすくすと笑いながらロビンが事情を説明した。
『帰ったらまずはシャンクス殴りに行かないと気がすまないっ!たく。なんで…!!』
そうライはぶつくさと文句を言いながらナミ達のいるプールへと足を運んだ。
「あら?あんた来たの?」
『別に、泳げなきゃプールに来ちゃいけねぇなんて決まりはないだろ』
不満そうな顔で告げたライにナミは苦笑いを返す。
「珍しいわね…?あんたが引きずってまだイライラしてるなんて?」
『うるせぇ、ほっとけ』
「まぁ、知らない人のせいで殴られるなんて理不尽にも程があるわねぇ…」
くすくすと笑うナミにじとりと視線を向けながらライはプールサイドへと座り足を水に浸けると、着ていたパーカーを脱いで、更にはTシャツも脱ぐとその上からパーカーを羽織なおす。
「腕は見せる気ないのね?」
左腕に付けられたサポーターを見てナミが言う。
『……お前らにはまだ重いだろ』
「重いってどういう…」
「ライーー!!」
ナミが聞こうと口にした言葉はチョッパーの声に遮られる。
『おっ!チョッパーも来たのか?』
浮き輪を着けたチョッパーがライに走りよると笑顔で頭を撫でるライ。
「おう!ライも一緒に泳ごうよー!」
俺は見てるよと返して、チムニーと遊び出すチョッパーを見送ると、ナミへ視線を向けた。
『ナミ。俺はさ、家族を守る為に。強くなる為にこの海に来たんだ。その為なら俺は何だってするつもりだよ。』
「強くって…あんた十分すぎる位強いじゃない」
『今の俺でも、まだ足りないかもしれない奴がいるんだ。いや、むしろ全然足りないのかもしれない。でも、俺は家族の未来の為にあいつをぶちのめさなきゃいけない』
「それって…」
沈む夕陽を背に燃えるような紅い髪を靡かせてライはナミを見据える。
『俺はそいつを殺す為に、今存在してる。軽蔑するか?』
逆光でそう言ったライの表情は伺う事は出来ず、返答に困り悲痛な表情を浮かべるナミ。
『…っ。ハハっ!なぁーんてなっ!!う・そ!!』
「…………はぁっ!?嘘ってあんたねぇっ!」
『わりぃ、わりぃ!あんまりにも知りたそうにしてるから、ついな』
にっと笑ったライの顔を見たナミはその笑顔に釘付けになる。
『…?どした?あ、あれか惚れたか?俺に?だが、悪いな。俺は金にうるせぇ女は無理だ』
肩に手をおいてそう告げたライに鉄拳を浴びせたナミ。
「んなわけあるかぁー!!」
『そうそう!ナミはそうじゃなきゃな!』
そこへルフィが宴をするぞー!!と声をあげて現れる。
そこに、フランキー一家に船大工達、更には町中の人々が集まり大宴会へとなる。
水着姿のナミにハレンチだと騒ぐパウリーや、ココロと酌み交わすアイスバーグ。
呑み比べを始めるゾロ。
次々に肉や野菜を仕上げるサンジに踊るフランキー。
更には巨人達とそげキング。
壁に寄りかかりそれを見守るロビンを見つけたライは青雉の気配を悟りそれを見てみぬふりをして騒ぐ彼らへと視線を戻す。
「ライーー!!くっへるはぁー!!」
ルフィの言葉に手をあげて答える。
持っていた酒を煽ると燃える空へと視線を投げ掛ける。
『たく…何血迷って話そうとしてんだか。ちょっと気弱になっちゃったか…らしくもない。』
呟くと左腕のサポーターをさらりと撫でて掴む。
『止まってられないんだ。嫌でも時間は進むんだもんな。帰りたいな…早く…』
そんなライを見つめるのはナミ。
「ナミすわぁーん!新しいお肉焼けたよぉー」
そこに現れたのはサンジ。
ライを見ているナミにどうしたのかと尋ねる。
ナミはサンジにさっきライの話していた事を話す。
「って言ってたのよ、あいつ。どう思う?」
「…随分物騒な話だなぁ?でも、あながち嘘ではないんじゃないですかね?あの強さをもってしても叶わないなんて、どんな奴かとも思いますけどね。まぁ、今話してきたって事は近い内にちゃんと話してくれるんじゃないですか?」
そう笑ったサンジに、そうね…と返して笑顔を浮かべる。
「でも、最後に見せた笑顔がなんか見た事ある気がしたのよねぇ…」
そう言って腕を組んだナミに
「?そりゃいつもいるんですから、あいつの笑った顔なんて見てるじゃないですか」
「そーいうんじゃなくて…あっ!!そうよっ!!ルフィっ!」
「ん?」
「ルフィのお兄さん!!エースとルフィの笑った顔にすんごいそっくりだったのよっ!!」
「あぁ、そういう事ですか?確かにライの笑った顔ってのはあの2人に少し似てるかもしれないですね」
あーすっきりしたぁー、なんて言いながらナミは新しく皿に盛られた料理を手に取る。
そこにロビンが走りよる。
チョッパーとルフィが踊っているところに混ざりに行こうとするのを慌てて止める2人。
そんなルフィ達を見ると、ライはそっとその場を離れる。
「……?ライ?」
それに気づいたのはロビン。
不思議に思いながらも、騒ぎへと混ざる。
『いよう。青雉』
青チャリを漕いでいた青雉の後ろに突然現れたライに青雉は驚きバランスを崩す。
「うをっ!?ライくーん?急に来ると危ないだろー?」
『別に。あんたなら余裕だろ』
荷台に胡座をかいて座り背を青雉へと預けるライ。
「で?何かようー?」
『んー。別に。これと言って用はないんだけどさ。これから、忙しくなるだろうと思って。顔見ておこうかとね!』
「それ、どういう意味?」
『サボり魔の大将さんは本部に帰ったら忙しくて当分会う事もないでしょー?まぁ、元気でな。また会うだろうけどさ。』
「それ思い出させないでよー。帰るの嫌になっちゃうよー?俺」
『うるせぇ、さっさと帰れ』
「え、何そのツンデレ」
『まぁ、また会う時まで元気でな。次も敵同士だろうけど』
タンっと荷台から飛び下りて、宴の会場へと足を向ける。
そんなライを青チャリを止めて振り替える。
「そっちもな…」
軽く手をあげて、背を向けるライを見届けると青雉も背を向けて青チャリを漕ぎ始める。
『…次、会う時は戦場だ。』
「あの子、ほんと不思議な子だなぁ?あの会場で俺に気づいたのはニコ・ロビン位だと思ってたんだけどねぇ…」
それから数日後の朝。
フランキー一家のザンバイ達が船の完成と共にある一報の知らせを告げにルフィ達の元へと駆け込んだ。
飛び込んできた一報
(すげえっ!!俺3億だぜっ!!)
(おで50ってどういう事だよー!)
(まぁまぁ、チョッパー落ち着けよ)
(ライはいいよな!?ルフィの次だもんなっ!)
(……っはぁっ!?)
(あんた2億になってるわよ?)
(俺、なんもしてねぇぞ!?)
((いや、存分に暴れてたぞ…))
(…サンジお前平気か?)
(何なんだ、これはー!!!)
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