rode-42
「に、人魚だと思ったらジュゴンだったって伝説は本当だったんだ!!」
珍しく涙を流してそう言ったゾロにサンジが声を荒げた。
「バカ野郎!!まだ本人は何も言ってねぇっ!希望を捨てるんじゃねぇよっ!!」
「あたしゃー、白魚の人魚らよー」
切実に訴えたサンジの声はむなしく。
ココロの一言でかき消された。
踞り甲板の床を拳で叩きながら何やら言っているサンジをよそにライはチョッパーとナミへ駆け寄る。
『おい!チョッパー!ナミ!平気か!?』
ライの声に意識を取り戻した2人にほっと一息付くと立ち上がり支柱の方を見据える。
何やら背後で騒いでいるのをよそに歩き出したゾロを追いかけ隣に並び橋を上る。
『無事勝ったみてぇーだけど?お前もサンジもえれぇ怪我だな…』
「ふん。別にこの位なんて事ねぇよ」
『そっ。ならいいや。まだまだ。闘いは終わっちゃいねぇ。けど、ここからは俺も本気出すから。お前らの出番ねぇかもな!』
階段を上りきり、支柱を見てから視線をゾロに移しにししっと笑いかけたライにゾロも視線を向ける。
「じゃなきゃ困る。俺らの中じゃ多分お前が1番今動けるだろうからな、援護は頼んだぜ?」
『任せとけよ…にしても、すげぇな軍艦だらけ…』
「おい!お前らー!」
ウソップとサンジ、フランキーも追い付くと支柱を睨み付けながらゾロが話し出した。
「何があろうと、俺らはここでルフィを待つ」
「脱出船、死守しねぇとなぁ?」
「ルフィ、負けるなよっー」
それぞれの言葉を聞いていたライは全員を見つめると俯く。
小さな声で、よしっ。と呟くと支柱を見据えた。
その時、軍艦から声が響いた。
「大佐以上、中佐200名。総員ためらいの橋にいる海賊達の討伐を開始せよ」
「来るぜ?」
全員が戦闘体勢をとる。が、ここでライが手を翳し待ったをかける。
『俺が減らしてきてやる。お前らは落ちてきたのやってくれよ…』
そう言って、地面を蹴り飛び上がったライは剣を鞘から抜く。
そして、軍艦から飛び降りてくる海兵達の中心へ移動すると剣を一閃しながら見えない羽根を飛ばし戦闘を開始した。
ライの放った攻撃は凄まじい勢いで、飛び降りてくる海兵もろとも軍艦までもが大ダメージを喰らう。
『諸事情で俺は暴れ足りないんだよ。覚悟しやがれ!』
そこからライは斬撃を飛ばしまくり、飛び降りてきた海兵の半分を海へ落とした。
半分に減った海兵と戦闘を始めたゾロ達を視界に納めるとライは軍艦へと視線を向け1つの軍艦の船首へと舞い降りた。
それに恐れおののいた海兵達を次々と剣を震い倒していくとまた飛び上がり一際大きな剣撃を軍艦へと放つと船は真っ二つになり奥の軍艦を巻き添えに海へと沈んでいった。
「軍艦一隻、沈められましたっ!!」
「あいつは何者だっ!!?」
「はっ!オニグモ中将。麦わらの一味の紅の騎士 ライと思われます!!」
「紅……あいつか…大将青雉が直々に要注意リストに載せたのは…」
見据える先で、薄く笑みを張り付け沈み行く軍艦を見下ろすライ。
「確かに…覇気を纏っているようだ…厄介だな…全艦へ通達を出せっ!!標的は紅の騎士!同時に一斉砲撃!!」
慌ただしくなった船上に気付いたライは辺りの軍艦をぐるりと見回すと、大砲の照準がどうやら自分に向いてるらしい事に気づく。
『あり?』
その時一斉に砲弾が放たれた。
ゾロ達もそれに気づき声をあげた。
「なっ!?人1人にあの量の砲弾をっ!」
「ライ!よけろー!!」
言葉虚しく砲弾はぶつかり火の手をあげながら連続で爆発する。
「全弾命中っ!」
渦巻く煙のなかへ向かいウソップが叫んだ。
「バカ野郎っ!!あいつ、避けもしねぇでっ!」
「おい!あの兄ちゃん大丈夫かよっ!?」
ためらいの橋で闘うゾロ達に動揺が走る。
それは脱出船にいたナミ達も同様だった。
「え!?ちょっと!ライがっ!」
「なんて事…!?」
「ライーー!」
ナミは顔面蒼白で煙が渦巻くライがいた場所を見上げ、ロビンは呆然と見上げる。
身動きの取れないチョッパーは泣きながら声をあげた。
「中将っ!全弾命中致しました!さすがに息はもうないと思われますっ」
「それならすぐに、ためらいの橋へ照準を…」
オニグモが次なる指示を与えようとした時。
もくもくと上がる煙が突然の突風で吹き飛んでいく。
「な、なんだっ!?」
突如晴れていく煙の中で宙に浮かび剣を肩に乗せたライがにやりと笑みを浮かべていた。
『無駄だっつーの……』
「「「ライーーっ!!」」」
「あの砲撃の中をどうやってっ!?」
『別に?人の数倍早く動ける俺にはどうってことねぇよ』
ためらいの橋に降りると駆け寄ってきたウソップに言葉を返す。
と、突然の軍艦から通信が響いた。
「エニエスロビー本島にいた海賊達を確認。」
『パウリー達か』
「あいつらっ!!そう簡単にやられるわけねえよ!殺したって死なねぇ奴等だっ!」
笑顔でそうフランキーが言うと
「本島前門にて確認、砲撃。生存はないと思われます」
響いた通信にその場が一気に冷えた。
「こんな…こんな簡単に人って死んでいいの!?」
「これが、バスターコールよ。彼等はその命令に従い、島1つを簡単に消す…」
「オイモ、カーシー…」
「船大工の奴等…」
「おいっ!麦わらーー!必ず勝って帰るぞ!W7へっ!」
悲しみをこらえ、ルフィにそう叫んだフランキー。
ライはそれを視界に納めると目の前の海兵達へと視線を向ける。
「覚悟…ひぃっ!!」
『知ってても胸糞わるい…消えてくれるか?』
銀の瞳に怒りを孕ませ、狂気を露にした睨みでライの前にいた海兵達は恐れ後退する。
滲み出した覇気に周囲の海兵は意識を保つ事で精一杯である。
ライの異変に気付いたゾロが刀で応戦しながらライへと呼び掛けるが、聞こえていないのかライは狂ったように剣を震い、次から次へと海兵を倒していく。
『お前らの掲げる正義とやら。理解する気もねぇが、そんな下らねぇ正義がなければっ!お前らだって、俺ら海賊と変わらねぇっ!!ただの無法者だって事覚えておきやがれっ!!』
最後に一閃、剣をふるった先で海が割れ大きな波しぶきが軍艦を襲う。
それを見ると今尚支柱にて闘うルフィへ向くと声を荒げた。
『ルフィ!何てこずってやがるっ!!てめぇがやらねぇならっ!俺がそいつをやってもいいんだぞっ!!それが嫌ならさっさとぶちのめしやがれっ!!』
そう叫ぶと、ふうと息を吐く。
『ふざけた事しやがるから、思わずきれそうになっちまったじゃねぇか…きれたら計画が無駄になる……。気が長い方じゃないんだ。手短にここを抜けるぞ』
珍しく息を荒げ、いつもは飄々としていたライがそうまくしたてる。
その言葉に違和感を抱いたのは…この状況でただ1人、ゾロだった。
「(計画……?)」
だが、それも襲い来る海兵を相手にすることで頭の片隅へと消えていった。
そして、ライが暴走している内に脱出に使う護送船まで爆破されたが、護送船に残されていたココロ、チムニー、ゴンベ、チョッパーをサンジが抱えて登場し無事を確認。
彼女達を庇いながら戦闘が始まる。
と、ここで支柱が派手に音をたてて崩れた。
橋で闘う彼等には状況がわからず、何があったのかとルフィを心配する。
「第1支柱にて、麦わらと戦闘を繰り広げていたロブ・ルッチ氏が今……麦わらに…破れましたぁー!!」
「「「「ルフィが!?」」」」
「ロビーーーーーーーン!!一緒に帰るぞーーー」
ルフィの声にロビンが涙を浮かべて返事をする。
「麦わらさんが、やったぜー!!」
「バカ野郎!黙ってろ!」
突如響いた声にパウリー達やフランキー一家が生きている事も確認し、全員が安堵の息を溢すと
「麦わらのルフィも戦いの傷が深いらしく、身動きがとれないようです!!」
「ルフィっ!?」
「全艦照準を第1支柱へ」
ウソップが橋からルフィへ叫ぶ。
「お前!何やってンだよ!!早く動けよっ!!」
「駄目だわ、ここからじゃ途中で海に落としてしまう…」
『お前らさぁ…俺、忘れてない?』
そう言って地面を蹴り、ルフィの元へ飛んだ。
『全く。無茶しやがるな…』
「ライ、わりぃ!頼む。つーかよ!さっきから声がするんだよ!」
にっと笑うルフィを担ぐとウソップ達が海へと飛び出していく。
『だろうな…お迎えだ…』
そう言うと砲撃から逃れるように空へと舞い上がった。
【皆、迎えにきたよ!!帰ろう!冒険の海へ…!!】
「メリーーーー!!」
決着!そして、迫る刻…
(誰が乗ってきたんだ?)
(んな事より今はここから逃げるぞっ!!)
(よしー!いくぞーー!!)
(たくっ…)
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