rode-26



「おっさん!仇取ってきたぞ!!」

そう言ってフォクシー海賊団から奪った海賊旗を掲げたルフィを見守る。

「そういう事だったのねぇ…」

そこにいたのは、村からはぐれた老人と包帯を巻いた白馬。
どうやら、白馬の怪我の原因はフォクシー海賊団だったようだ。

『ルフィらしいじゃねぇか…』

微笑みながらそういったライに頷くと、老人が話し出した。

「ありがとうなぁ!取り合えず何かもてなそう!わしの家へ来るといい!!」

「また10年もののチーズじゃねぇだろうなぁ!」

家の中へと促す老人…トンジットに突っ込むウソップ。

「ん?なんじゃ?」

室内へと進もうとしたトンジットは何かにぶつかり見上げると、長身の男が立ったまま寝ていた。

「おい…立ったまま寝てんぞ…こいつ…」

そうサンジが口にした途端背後で誰かが座り込む音がした。

その場にいた全員が振り返ると、尻餅をついて呆然としながら男を見つめるロビンがいた。

「おい!どうした!?ロビン!」

「ロビンっ!?」

「ロビンちゃん、どうしたんだい?!」

その間も男を睨み上げているのはライ。

「ん…あー、寝ちまったか。ん?」

着けていたアイマスクをずらしながら、言葉を発した男はロビンを見るとニヤリと笑って話し出した。

「あらら。ニコ・ロビン。随分いい女になったじゃねぇの?」

「なんだ?ロビン、知り合いか!?」

「誰なんだよ!こいつ!」

「海軍よ…」

ロビンの言葉に全員が戦闘体勢に入る。

「海軍の最高戦力。海軍の中でも大将の称号を与えられているのはたったの3人…その内の1人、大将…青雉よ」

「な、なにぃっ!?何でそんなすげぇ奴がこんな所にいんだよ!もっとすげぇ奴のとこに行けよ!」

怯えながらそう言ったのはウソップ。

「あー、なんだ?その。別にお前らを捕まえに来たわけじゃねぇ。アラバスタ後消えたニコ・ロビンの消息の確認をしに来たまでだ。まぁ、案の定麦わら海賊団にいたみたいだがな…」

「やっぱ!お前ロビンを狙ってるんじゃねぇか!このやろう!」

騒ぐルフィを見てからライは座り込むロビンを隠すように移動すると、それに気付いた青雉が話し出した。

「お、ライ君。無事合流できたみてぇだな?」

『お陰さまで…』

不適な笑みを浮かべながら答えたライに全員が目を丸くする。

「まさか!ライも狙ってるの!?」

『ちげぇよ、ナミ。お前らと合流する前に、こいつらにあっちまってな…不可抗力ってぇ奴だよ…』

「こいつらって、他にも誰かいたのか?」

静かに訪ねたのはゾロ。

『あー、スモーカーとたしぎって子か…』

「おまっ!?よく逃げられたな…」

『まぁな…んな事よか。今はそいつだろ…って、寝っ転がってんじゃねぇよ!?くそったれっ!!』

「あらら。ライ君相変わらず辛辣だねぇ…君と話してると彼女を思い出すよ…」

意味深に述べられた青雉の告げる彼女にいち早く気付いたライは顔色を変えずに返す。

『誰の事言ってるのか知らねぇけどさ。他にも用事あんだろ?さっさと済まして帰れよ』

「そうねぇ。おい、じぃさん。旅の支度をしな。村に合流させてやる」

その言葉に全員が又目を丸くしたのだった。

青雉に対する警戒心が薄れた頃。

ライは1人草原に寝転がり空を眺めていた。
と、近付く足音に視線を向けるといたのは青雉。

「いやぁね?この間聞きそびれたんだけどさ。君ほどの力がありながら、それをひた隠しにして麦わらの下に着いてるのはなぜ?」

『強さだけが全てじゃねぇだろ?それに何度も言うけど俺はあの船の居候で、麦わら海賊団のクルーじゃねんだよ。上も下もねぇんだ。それ以前に、麦わら海賊団自体。上も下もねぇぞ。見ててわかんだろ。全員が対等だ』

「ふーん。そう」

それから、トンジットの旅支度が済むまで一言も交わす事なく二人は並んで空を見上げていたのだった。

その後海岸へ移動すると、青雉が能力で海を凍らせると何度もお礼を言いながらトンジットは去っていった。

「いっちまったなー!でも、おっさん。良かったな!!」

そう言うとウソップやチョッパーと遊びだしたルフィを見て、青雉が口を開いた。

「なんつーか。麦わらのルフィ…じぃさんにそっくりだな…」

「じ、じいちゃん!?」

じいさんと言う言葉に過剰に反応し汗を吹き出したルフィに全員が不思議そうな顔を見せる。

「ルフィのじぃさん?」

「…がどうしたんだよ?」

「いや、奔放と言うか無鉄砲と言うか…本当じいさんそっくりだな。俺もお前のじいさんには随分と世話になってな…今日ここに来たのも、ニコ・ロビンの事もあるが…お前を一目見ておこうと思ってな…あとは…君もね?ライ君」

「ライ?」

ウソップが不思議そうに呟く。

「にしても、この海賊団は元を辿れば随分と骨のある奴が集まったもんだ…初頭の手配に至った理由と然り…末恐ろしく思うよ…」

そう青雉が口にすると、それまで纏っていた気だるげな空気がガラリとかわり、鋭い目を向ける。

「やっぱりお前らここで死んどくか?」

そのセリフと供に一斉に戦闘体勢に入ったルフィ、サンジ、ゾロ。

「俺はその中でも、お前の存在が一番厄介だ。なぁ、ニコ・ロビン。何も手配書の額はそいつ個人の強さだけで決まるわけじゃねぇ…そいつの世界に対する危険性なんかでも額は動く。それを証拠に、ニコ・ロビンは僅か8歳と言う年齢で77000000という賞金がかけられた…」

「お前ぇ!やっぱロビンを狙ってんじゃねぇか!!」

怒りを露にし、青雉に怒鳴るルフィ。
そんなルフィを一蹴して、尚青雉は言葉を続ける。

「この様子を見ると随分と上手く取り入ったみてぇだな?その尻の軽さで、海賊や闇に生きる組織を騙し、欺いて生きてきたお前が次に選んだのがこの海賊団てぇわけか?」

「てめぇ!ロビンちゃんに何て事をっ!」

「黙れっ!過去は関係ねぇっ!!」

「お前らもいずれ思うだろうよ?厄介な女を引き入れたってなぁ?その証拠に、その女が過去身を置いていた組織や海賊団は全て……その女を除いて壊滅してる…どういう事だろうなぁ?ニコ・ロビン?」

「やめてっ!もう、私は…今までの私じゃないわっ!」

そう声を荒げるとロビンは青雉へと技をかける。

大きな音をたて氷となった青雉の体がガラガラと崩れ落ちる。

「ひ、ひぇぇー!」

それに怯え悲鳴を挙げたのはウソップ。

だが、青雉は自然系悪魔の実の能力者。
みるみる内に、氷が集まり青雉の体を再生していく。

「あらら。喋りすぎたか?もう少し頭のいい女と思ってたよ。ニコ・ロビン。」

そう言いながら、再生した体を確かめながらまた半身を凍らせてロビンへと近付いていく。

「やめろー!」

青雉を止めるべく、攻撃をしかけたルフィ、ゾロ、サンジ。

だが3人の青雉に触れた体が凍りついてしまい、3人が倒れる。

「あ、あの3人が…一瞬で!?」

怯えたナミを視界に納めた青雉がナミへと攻撃を仕掛けようとするが、間に入りそれを止めたのはライ。

武装色の覇気を纏った蹴りを青雉へと繰り出す。

『横やり…入れる気はなかったんだがな…。随分と胸くそ悪くてつい足が出ちまった…』

覇気を纏った蹴りをくらい、ぶっ飛んだ青雉を鋭い目で睨み付けると、ナミに下がるように言う。

「へぇ…」

そう呟くと青雉はその場から姿を消してロビンの前へと現れる。

「例え、なんと言おうと…お前はお前だよ…ニコ・ロビン…」

そう言って、ロビンを抱き締めるとロビンの体は凍りついてしまった。
それを見たルフィは怒りを露にしたが青雉へと声を挙げた。

「俺とお前で一騎討ちをして蹴りをつけよう」



知らず動いた身体と己の葛藤

((あまり手は出さないと決めてたのにな…))

(なぁ、何でライの攻撃はあいつに効いた?)
(知るかよっ!今は俺らの氷を溶かしてルフィのとこへ早く戻るぞ!)

((これからも、こうして我慢しなきゃ…いけないのか…))

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