朝、教室に入りクラスメイト達と挨拶を交わし、席へ着いた。今日はまだ短縮期間なので授業はお昼まで、それに1時間目は授業ではなく、ただのHRだ。勉強道具なんて何も入っていない鞄を机の横に掛けた。


「ねぇ名前」
「んー?」


声を掛けられ返事をすれば、隣の席に座るノジコからニヤニヤと嫌な視線を向けられた。


「な、なに…?」
「昨日、あの後どうなったのよ?」
「どうって…1年生のところに行っただけだけど…」
「そのあとよ!ナミから聞いたのよ、あの後2人になったって!」
「え?ナミちゃん?知り合いなの?」
「妹よ!知らなかった?」
「えぇ!!?そうなの!?」


た、確かに言われて見れば似てない気もしない…。
世間って狭いなぁ。なんて呟くと、そうじゃなくて!とノジコに詰め寄られた。



「あんた…火拳って結構モテるのよ?よく告白されてるじゃない」
「え、そうなの!?」



知らなかった…。や、モテるのは知ってたよ?でも告白までされてるとは…!
エースは親友だと思ってるし幸せになってほしいと思ってるけど、もしもエースに彼女なんてものが出来ちゃったら、今のような関係じゃいられないのかな。それはなんだか寂しいな…。



「席座れ〜」


そんなことを思っていると、教室の扉から、頭すれすれの青雉が登場した。
眠そうな表情はいつも通りなんだけど、いつもよりも早い登場には驚いた。
少しくらい教師としての意識的なものがこの男にもあるのだと感心した。だけど…


「ちょっと立つの疲れた。失礼」


やっぱりそんなものこの男には皆無のようで、教卓の前に、その長身を寝かせ、床に肘をついて頭部を支えた。



「今日は委員会とか決めるから…えーなんだ…忘れた。もういいや」


えぇ!?とクラス中からの突っ込みが青雉へと向けられるが、そんなこと全く気にする様子のない青雉に一番前の席の男子が、よくねぇだろ!?と青雉へ抗議を始めた。



「それでも教師かよ!」
「んー、じゃあお前委員長」
「はっ!?」
「じゃ、後は頼んだ」



突然の指名に男子が固まると、それを気にすることもなく青雉はアイマスクをして眠りに入ってしまった。



「ど、どうする?」
「お前が適当に決めろよ」
「委員決めるんだよな…?じゃあもうくじ引きでいいか?」


戸惑いつつも委員長としての仕事をこなそうとする彼に青雉の指名はあながち間違いじゃなかったかもな。なんて思った。委員長が委員会名を書いた紙と他のダミーの髪を作り箱に入れた。


「じゃあ適当に取りに来て」


委員長の指示にみんなぞろぞろと動きだし、それぞれがくじを引きに向かった。



「うっし!おれセーフ」
「風紀委員!?顧問だれだっけ…」
「赤犬じゃね?」
「終わった」



みんなの反応を見てるとこっちまで緊張してくる…。
わたしは胸の前で手を組み神に祈った。


お願いします!この1年真面目に授業受けますから!!


手を放し、勢いよくくじの箱に手をつっこんだ。

コレだぁぁー!!


チーン。


「ちょっと名前大丈夫!?」
「ははっ!お前体育委員じゃん運動オンチのくせに!!だっせー」


よりにもよって体育委員…。運動オンチは置いておいて、確か担当がスモーカーだったはず…。最悪だ…最悪すぎる…。


お願い変わって!と近くにいたノジコにすがりつく思いで髪を突きつけるが、無理よ。って真顔で返された。



「あたしも文化委員当たったのよ」
「うぅっ…ロ、ロビン〜!!」
「ごめんなさいね…あたしも図書委員なの」
「そっか…うぅっ」
「元気出せって名前」



エース、そんな笑顔で言われても励まされている気にならないんだけど……。
バシバシ背中を叩いてくるエースを睨みつけていると、未だ寝転んでいる青雉からの衝撃発言が出た。



「今日委員会の顔合わせあるから当たたったやつ放課後行けよー」



今日!?い、いきなり!?

















こういう日に限って1日の終わりは早いもので、すぐに訪れた放課後。クラスの子たちと別れ、すぐに集まる予定の教室へ向かい、扉を開くもまだ誰も来てはおらず、わたしは適当な席についた。
それとほぼ同時、ガラガラと扉が開き、入ってきた人物と目が合った。


「あ」
「あぁ!」
「名前?」
「マルコ先輩!」
「名前も体育委員かよい」
「あ…はい、くじ引きで当たっちゃって…」
「くじ引きかい」



クスッと手を口元にあてて笑った彼はマルコ先輩。マルコ先輩はエースの属する白ひげの1番隊隊長さんで、クールな印象が素敵。と昨年の学内イケメンランキングでは2位という人気ぶり。

わたしはエース繋がりで中学の時から顔見知りだけど、あくまでエースが仲の良い先輩といった印象で、それはマルコ先輩もだと思う。だから2人だけの空間というのは少し緊張する。

だけど、それほど気にする様子のないマルコ先輩はわたしの隣の席に鞄を置き、座った。



「名前はA組か?おれもAだから体育祭同じ赤組だねい」
「そ、そうなんですか!そういえばエースが今年は優勝間違いなし!とか言ってた気が…」
「今年の赤組は3年にはおれとイゾウ、2年にはエース、1年にはエースの弟達がいるからねい」
「そうなんだ…。わたし運動オンチなんで体育祭あんまり好きじゃないんですよね…足引っ張らないように頑張ります…」
「ふ…がんばれよい」



なんだ、話してみれば2人だからって気まずいなんてこともない。エースがいなくてもこんな風に話せるなんて思ってなかったな。マルコ先輩の落ち着いた雰囲気がそうさせるのかもしれないけど。

話すのが楽しいなんて思った途端、体育委員のメンバーが集まり始め、最後にスモーカーがやって来た。



「まぁ、今日は顔合わせだけだ。6月に体育祭、7月には水泳大会があるから、また近くなったら忙しくなるぞ。じゃあ解散」



その一息だけで言えるような言葉で終わってしまい、待ってる時間の方が長かった…。なんて愚痴が溢れそうになった。


「お腹空いたなー」


委員会は一言だったけど、時計を見れば12時はとっくに過ぎ去っており、針はもうすぐ1の数字へと差し掛かっていた。


「名前、今から飯行くか?奢るよい」
「い、いいんですか!?行きます!」



マルコ先輩のお誘いとご厚意に甘え、わたし達は近くのファミレスに行くことにした。




「いただきまーす!」



わたしが注文したのはハンバーグセットで、マルコ先輩はオムライス。どちらもこの辺りじゃ少し有名だったりする。


「んー!おいしー!最高…」
「それは良かったよい」



片手で頬を抑えれば、先輩は目を細めて笑った。



「先輩もどうです?」
「あぁ、一口もらうかねい」
「はい!どうぞどうぞ」


わたしはハンバーグを一口サイズに切ってそれをフォークの先に刺した。そのままフォークを渡そうと差し出すが、マルコ先輩は、わたしの手の上からフォークを持ち、そのまま口の中へとハンバーグを入れた。
そのさらりとした一連の流れに少し驚いてしまうが、マルコ先輩の口からうまい。という言葉が出て、良かったです!と返すのが精一杯だった。


そのあとも2人で談笑しながら食事を楽しんだ。


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