朝食が終わって、届いたメールを確認したガープ先生が立ち上がった。


「じゃ、わしはちょいと出かけて来る!おつるちゃんに誘われての、買い物に行くから付き合うて欲しいと言うんじゃ、この年になってもモテる男は辛いのぅ…」


それってただの荷物持ちじゃ…?


「うん、じゃあな」
「おぅ、いってら」


ルフィくんもエースも、口に食べ物を入れるついでとでも言うように片手を上げた。


「軽すぎるわァー!!」
「「ぶへー!!」」
「惜しめ!バカ者!」
「もうどうしろってんだよ!」
「おれら殴られただけじゃねェか!」

「「…」」

もう好きにして…

わたしもサボも呆れ顔で目の前の仲良し家族のコントを見守る。
一通りエースとルフィくんを殴り終えたガープ先生は、じゃ行ってくるの!と立ち去ってしまった。





ガープ先生が出掛けて再び訪れた平穏、洗い物を終えリビングへと戻ると突然腰辺りにルフィくんが突撃してきた。


「なぁ名前!今度海行こう!」
「海?」


海は好きだし全然良いんだけど、話が突然すぎて過ぎてついて行けないんですが。


「あのな!エースの…スト、ストライダーって奴で…「ストライカー!」


あ、エースがちゃんと訂正してくれたみたい。


「そう!それに一緒に乗ろうぜ!」
「ストライカー…?」
「おれの持ってる小型ヨットみたいなもん、水の上走るみてぇに移動出来んだ」
「へぇ〜」


エースそんなの持ってたんだ!すっごく楽しそう!!是非乗せてもらおうと思った時、でもよ。とエースが声を出した。


「ルフィ、ありゃ1人用だぜ?2人乗るのも危ねェのに」


エ!エースの頭の中に危ないなんて言葉、あったんだ!!なんか感動…。
しかし、エースの危ないという言葉にさらに目を輝かせたルフィくんは、ザッと立ち上がった。


「だから面白れェんじゃねェかよぉ!何が起こるか分からねェ!冒険の臭いがするじゃねェか!!」

つまらねェ冒険ならおれはしねェ!


決まった…!とでも言うように鼻の穴を膨らまして、フンッ!と一息。


サボも呆れて、あのなぁ。と声を出した。

「ルフィ…「そうだな!!」


サボの言葉が遮られ、声の方を見ると、それはまさかのエースだった。


「「え…!?」」

「そうだ、何が起こるか分からねェから冒険は楽しいんだ!兄ちゃん大事な事忘れてたぜ!1人用だろうが関係ねェ!4人で乗ろうぜ!」
「えええ!?」


それは危ないよ!!

エースの言葉を聞いてルフィくんもこれまた輝かしい笑顔になった。


「いつにする!?おれ早く行きてェ!」
「名前はどうだ?おれはいつでもいけるぞ!」


とにかく行く方向で話は進むみたい。4人乗りするかは置いておいて、わたしも海には行きたい。


「明後日から1週間くらいW7に行くから、その後なら大丈夫」
「あー、おれは来週から学校始まるから無理だ…わりぃな」


サボの言葉にガーンと効果音が鳴りそうなくらいテンションの落ちた2人。
ルフィくんもエースも、貝になりたいなんて言い出す始末。

どんだけサボが大好きなんだ…!
サボは進学校だもん、わたしたちみたいに8/31まで夏休みじゃないんだ…。
3人で行って来い。と笑うサボに、んー!とそこまで良くない頭で考え始めたエースは何か閃いたらしく、あっ!と声を上げた。


「分かった!おれとルフィが2回行こう!サボと行ってから名前とも!」
「おぅ!そうしようぜ!」
「おれはいいけど…、名前はいいのか?」
「うん、3人でも楽しんで」
「そっか、ありがとな!」
「わたしは何も!」


わたしとサボは一緒には行けないけど、また空いてる日に遊ぼうということで話は纏まり、わたしには後日連絡という事になった。







現在は真夏で、外の気温は35度を越えてる、こんな日に外に行く気にもなれず、昨日の夜、あれだけゲームをしたから、続きをする気にもなれず、今日はお菓子を食べながら談笑することにした。

久しぶりとサボ話をしたり、3人の昔の話などをしてくれた。


「ルフィ、ワニに食われてよぉ!あん時は丸呑みで助かったなァ」
「…」

「あの虎はデッカかったなァ!ま、おれらが勝ったけどな!」
「…」

「1日1人100戦でよ、ルフィはおれとエースに一回も勝てなかったんだよ」
「今やったらおれが勝つね」
「今やっても負けねェよ!」
「…」


もう。話に着いて行けない…。

この3人、昔はダダンって人の所で暮らしていたらしくって、毎日、森にいる猛獣狩って食べてたんだって…。

この3人の強さは昔からだったんだね…。


プルルルルッ


「電話だ、誰だろう…?」


メールとは違う着信音に反応してケータイを手に取り、画面に出ている名前を不思議に思い口に出た。


「マルコ先輩?」
「ッ!!?」
「ごめん、ちょっと電話してくる」


慌てて席を立って、廊下の方へ向かった。別に会話を聞かれたくないとかじゃなくて、3人の談笑の邪魔になるかなとか思っただけ。

廊下に出て、すぐに通話ボタンを押した。


「もしもし、先輩?」

《あぁ、今大丈夫かよい?》

「少しなら、どうかしたんですか?」

《そんな重要なことじゃないんだがよい……。明後日どうしようかと思ってな、どっか行きたい所あるか?》

「うーん、そうですねぇ…先輩はどこか行きたい所ありますか?」

《あぁ…いや、けど、こういうのはあれだろい?女の子の行きたい所に連れてってやるもんだろい?》


改めてよく考えたら先輩と2人で出掛けるなんて初めてかもしれない。いつも部屋で勉強とか他の皆もいたりだとか…。

もしかして、どこに連れて行こうか悩んで電話くれたのかな?

そう思ったらなんだか可愛い…。


「ふふっ」

《何笑ってんだい》

「ふっ、いやなんでもないです、わたし、先輩の行きたい所に行きたいです!」

《本当にいいのかい?》

「はい!」

《だったら海はどうだ?おれは泳げねェけど見るの好きなんだ、名前は泳ぎたかったら水着持ってくればいい》

「はい!分かりました!」


海に行くって今ちょうどルフィくんとの予定が決まったばかりだけど、マルコ先輩と行くのもそれはそれで楽しそうだ。

そんな風に考えていたその時、スルンと手からケータイが抜かれた。え!?なんて声を上げると同時、怒鳴るような声が聞こえた。


「今名前はおれんち泊まってんだ!邪魔すんな!!」


その声の発信源はエースで、いつのまにかわたしの背後に立っていた。そしてそのまま乱暴にわたしのケータイのボタンを押した。


「あぁっ!なんで切ったの!」
「ふん!」


なんで怒ってんの…。それに泊まってるったってもうすぐ帰るし、マルコ先輩に変な誤解されてるんじゃないかなぁ…。

メール送って誤解を解いておこう。

そう思ったけれどケータイは未だにエースの手の中、わたしのケータイを持ったまま部屋へ戻って行くエースを追いかけ、返してと口に出そうとした矢先。エースから衝撃的な言葉をもらった。


「帰るまでケータイ没収!!」
「ハァァァ!?」










「お願いだから返してよ」
「やだ」


うぬぬぬぬ…
なんでエースが怒ってんのよ…
怒りたいのはこっちだっつの!


「なんで怒ってんの」
「別に」


別に…って!エルカ様じゃあるまいし…!!


「じゃあ返してよ」
「やだ」


むかむかむか

なんかわたしも腹立ってきた!まだマルコ先輩と約束最後まで出来てないのに…!!

それよりまずマルコ先輩に誤解を解きたい。

エースが泊まってるなんて言うから変な勘違いしてるかもしれないし…

あぁー!もう!なんなのよ!


「返して!」
「やだ」


普段ならケータイにあまりこだわらないわたしもだんだんムキになって来た。

絶対取り返してやる…!!


「帰るまでって言ったよね…?」
「あぁ」
「じゃあわたし帰る」
「はっ?ちょ、ちょっと待てよ」


立ち上がろうとしたわたしの手首を掴むエースに内心でほくそ笑む。


「なに」
「くっ…」


悔しそうに顔を歪めるエースと反対にわたしの顔はニンマリとおかしなことになっているだろう。




「名前の顔ひでェな」
「ニシシッ!おもしれェ!でもサボ、止めなくていいのか?」
「良いんだよ、ただの夫婦喧嘩だ」
「へェ〜そっか!あいつら夫婦なのか!」




「よ、よし!おれは心が優しいから、帰らなくても返してやる!」


どこが優しいのよ。…まぁ、返してくれるならいっか。
がしかし、ケータイを取ろうとしたら上に持ち上げられた。


「えっ!?」
「取れるもんならな?」
「なっ!」


何てやつ!!エースとわたしの身長差どんだけあると思ってんの!

とりあえず何回か跳んでみたけど…。


「ふにゃっ!ほっ!ふんーっ!」
「へへっ、ちっせ〜」


エースはぴょんぴょん飛び跳ねるわたしを見てゲラゲラ笑っている。は、腹立つ〜!!


「ハァハァ、もう!サボ!ルフィくん!手伝って!」
「おぅ!いいぞ!任せろ!」


そう言うとルフィ君はエースにグルグル巻きつき始めた。


「ちょっ、ルフィ!やめろ!」
「シシシッ!サボー!」
「おぅ!」


ルフィくんに巻きつかれ身動きがとれなくなっているエースにサボがニヤリと微笑みながら近付き…。


「おりゃ」
「ふはっ!ひゃはははっ!や、やめ、ははははは!」


エースの脇腹をくすぐった。
その拍子にエースの手から離れ床へと落下していくケータイをわたしはなんとかキャッチ!


「よかった〜、落とすかと思った…」


エースめ、人のケータイを落とすとは、なんてやつ!!

暫くの間サボにくすぐられ続けていたエースは、解放されたと同時に今度はわたしを擽ってきた。


「ちょ!ははっ!や、やめっ!ひゃはははははっ!」
「こんにゃろー!」



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