本日は晴天!素晴らしいプール日和!なのに…何?この惨めな感じは…。隣で着替える友人を恨めしく思う。


「なんでそんなにスタイルいいの…?」
「そう?名前も普通に良いじゃない」
「どこが!!」


ノジコなんて胸で水着がはち切れそうなのに、わたしには…なぜか少し余裕がある。それよりも、このお腹周りのムニムニ脂肪をどうにかしてくれ…。

ってあれ?


「ロビンは泳がないの?」


更衣室の隅の椅子に座って本を読んでいたロビンに問いかけると、ゆっくり顔を上げてニッコリと微笑んでくれた。


「私、水は苦手なのよ」
「えっ、そうなんだ!」


なんか意外だなぁ、あんなにもなんでも出来て、まさに才色兼備って言葉がピッタリのロビンが、水が苦手だったなんて…!ロビンの新たな一面を見られた気がした。


「名前!そろそろ行くわよ!」
「わわっ!」


ノジコに腕を引かれ、クラスのみんなで慌ててプールサイドへ向かった。プールサイドには全校生徒が集まっていて、体育祭と同様、クラス順に並らばされていた。


「ぶはっ!名前の腹ぷにぷに!」
「コラッ!人のお腹を摘まむな!」


もちろんわたしの前はいつも通りエースで、突然わたしのお腹の脂肪を摘み大爆笑。なんて失礼なやつだと思ったけれどエースはムキムキだから何も言い返せない…。


「うわぁ!カチカチ!」


わたしも仕返しだとエースのお腹に手を伸ばせば、自分のものとは全く違った質感に思わず、そんな声が出た。これは摘まむ肉ないわ…。


「おれは鍛えてるからな!」


2人でお腹の突つき合いをしていると、ガープ先生がマイク片手に海パン姿で台に上がって来た。


「ゴホン!えー、みんな分かっとるじゃろうが、今日は水泳大会じゃ!」


ガープ先生も水着なんて、気合入ってるなぁ…。ってこの大会先生達は泳がないよね…?


「組み分けは体育祭と同じじゃぞ!えー、そうじゃの…優勝した組には…一ヶ月間、食堂のメニュー食べ放題でどうじゃ!」
「「「わぁぁぁーーー!!!」」」


途端に歓声が上がる。目の前にあったエースの背中もどこか燃えているように見えた。やる気出したのかとも思ったけれど、エース…君は…。と、その時、ガープ先生を呼ぶ声が入った。センゴク先生だ。


「んぉ、なんじゃ?」
「あほか!お前の孫達がおるんだぞ!学校潰す気かぁ!」
「えー、じゃあ一週間か?」
「一日ももたんわ!優勝した組には…そうだな…、大掃除免除だ」
「えー!いいよ」



センゴク先生とガープ先生が後ろで何か話してるみたい。丸聞こえだけど…。ガープ先生がマイクを切っていないからこちらにまで丸聞こえで、周囲にいた先生たちは呆れたように笑っていた。すると話し合いを終えたらしいガープ先生が再びこちらを向いた。


「やっぱ今の、ナシ!」

「「「えぇぇーーー!!?」」」

「優勝した組には大掃除免除じゃ!がっはっはっ!」


当然のごとく生徒たちからはぶー!とブーイングが起きたけれど、そこへ赤犬が登場したので瞬間に静かになった。それから今日の説明が入る。


「この50mプールを男子は10往復、女子は8往復、泳ぎ方に指定はなし、1位から20位の奴らに得点を与える。その合計が多い組が優勝だ!」


1年生の女子からという事でわたし達はタオルにくるまってプールサイドで待機。みんな緊張しているようでそわそわと落ち着かないような空気が伝わってきた。ガープ先生の合図で一斉にプールに飛び込む1年生達、順調かと思われたが、飛び込んだと同時に1人の子がブクブクと沈んでいった。


「ぷはっ…ぶくぶく…ぷはっ!ち、力が…」


その子にはすぐさま“失格”と書かれた浮き輪が投げこまれ、たしぎ先生が救出に向かっていた。驚いたのはそのピンク髪の子、体育祭で凄いスピードで走ってた子で、走るのは速いのに泳げないんだなんてぼんやりと思った。


「大掃除かかってるから頑張らなきゃねー」


隣に座っているエースに向けて言ったつもりだったのだけど返事がない。不思議に思ってエース?と覗き込む。


「おれは泳げる…水は怖くない…おれは泳げる…」


彼は自分自身に暗示を掛けていたようで、わたしはそっと視線を外して見なかったことにした。実はエース。陸上競技においてはなんでもこいの万能なのだけど、中学の頃から水泳の授業だけは苦手だった。ずっと浮き輪持参で授業受けてたな…。

1年生の女子はあの子を除いて全員が無事ゴール出来たみたい。あのピンク髪の子は、たしぎ先生に救出された後、噴水のように水を吐いていたけど、わたしもああならないか心配…。


「次は1年男子じゃぞ〜!早く用意せい!」


そんな放送が鳴り、ルフィ!とエースががばりと顔を上げた。
やはり弟のルフィくんのことには敏感なんだななんて微笑ましく思っていると、あいつ大丈夫かなぁ…。ととても不安げな表情を見せていた。


「ルフィくんどうかしたの?」
「あいつ泳げないんだよ…」
「えっ、ルフィくんも!?」
「あぁ、昔からな」
「へ、へぇ…!エースも心配だけどね…」
「だ、大丈夫だ!イメージトレーニングはしてきた!!」


イメージじゃなくて泳ぎのトレーニングすればいいのに…。



よーいドォン!
またもガープ先生の合図で一斉に飛び込む1年生男子達、やはりというかなんというか…飛び込んで直ぐに沈んで行く人がいた…。しかも1人じゃない。そのうちの1人には当然ルフィくんがいて、ルフィィィ!!とエースが自分も飛び込まん勢いで叫んでいた。


「ゴボゴボゴボゴボ…」


それにチョッパーくんまで溺れてる…!!それにはわたしも助けに行きたくなった。
ルフィくんの友達のゾロくんとサンジくんは2人で1、2を争っていて、どちらにしろ赤の得点だと思われた。だけど結果は予想外のものだった。1位は無事ゾロくんだったのだけど、サンジくんは途中で聞こえたナミちゃんの声援に鼻血を出して溺れてしまった。

1年生男子の結果が出て、次はわたしたち2年女子の番。わたしはバスタオルを置いてスタートのサイドへ向かった。


「頑張れよ名前!」


エールを送ってくれたエースにグッと親指を立てて返した。


「はぁっ…、き、緊張する…!」
「とにかくこれを乗り切れば夏休みが待ってるんだから、頑張りましょ!」
「そうだね!」


うちの学校のプールはかなーり大きく、学年の女子全員が一列に並ぶことが出来た。


「よぉーい!!ドォンッ!!」


サッバーン!


ふ、ふかっ…!!

飛び込んだはいいものの底に足がつかないことに驚くが、すっかり忘れていた。この学校のプールの水深は5mだった。この学校は先生も生徒も大柄な人が多いためプールも深くなっているのだ。わたしみたいに普通サイズの人間にはたまったもんじゃないんだけど…。




「はぁっ…はぁっ…し、死ぬ…」
「あたしも…もうダメ…」



なんとか泳ぎきったわたしとノジコの所へロビンがジュースを持って来てくれ、お疲れさま。と声を掛けてくれた。


「ロビン…ありがとう」
「ぷはぁーっ!やっぱ泳いだ後のジュースは格別だわ」
「生き返るー!」


水深5mなんて高校生が泳ぐプールの深さじゃないと再確認した。何度沈みかけたことか。
わたしたちが終わったということは次は男子の番でプールサイドには何人もの男子が一列に並んでいた。


「エース大丈夫かな…」


今回の合図はセンゴク先生。どういうわけか、ガープ先生も泳ぐと言い出したらしい。合図と共に飛び込む男子達…とおじいさん。


「年はとりたくないもんじゃ!がっはっはー!」


ぶっちぎりで先頭を泳ぎながら、そんなことを言っているガープ先生にセンゴク先生はじめ、そのほかの教員たちも苦笑いを溢していた。わたしも苦笑いを溢し、視線をスタート地点へ向ける。


「ぷぉっ!…ぐわぁっ…!くっそ…!」

「あぁ…、やっぱり…」


勿論エースは沈んでいた。


「でも火拳だけじゃないわよ」
「ほんとだ!あんなに…!」


よく見ればカナヅチ組はエースだけでなく、生徒会のカクさんに、アブサロム、ローくん、それにあの赤髪のヤンキーの方もいたりともう挙げれば限がないほど。

みんな普段はカッコいいのに(アブサロム除く)泳げないなんて……。なんて残念な…。
全員浮き輪に掴まってバタバタ暴れている様子は、まるで魚みたい。そんなことを呟くと、ノジコが呆れた様子で言った。


「あんたね、あいつら泳げないんだから魚以下よ」
「あ、そっか!」
「泳げる魚の方が上ね」



結果1位はガープ先生で、ぶー!と一部でブーイングが沸き起こった。







「ぶくぶく…ぷはっ!…はっ…はやく…ぶく…あ、上げろ〜!」
「ッチ!…くそ…力が…入らねェ…」
「…ゴボッ!…プールなら…ぷはっ…いけると思ったんだけどな…ぷはっ!…くそ!」

「情けないもんじゃのぅ…校内では威張っとる奴らが皆カナヅチだったとは…」
「そういう君も泳げないでしょうよ、サカズキィ」
「お前もじゃろうがボルサリーノ」













次は3年生の女子。みんな、ギャラリーの視線はただ一人、この学園で一番、いや、世界一の美女だと言われている女性だ。


「蛇姫様ァ〜!」
「お美しい〜!!」
「こっち見て〜!」


「すっごいスタイルだね…」
「あれは同性でも見惚れるわ…」


会場全体からのハンコックコール、しかし当の本人は、そなた等になど名前を呼ばれとうない!と名物、見下し過ぎのポーズ。
センゴク先生のゴホン!と言う咳払いでコールは収まり、さっきと同様に合図があり一斉に泳ぎ始めたのだけど。


「ハァ〜〜ン!」


と、なんとも色っぽい声を上げながら沈んで行くハンコックさん
……え、ハンコックさん!?あなたまでカナヅチだったのですか!!
いや…ジタバタせず潔い沈み方だったけど…。

その時ザッバーン!と水しぶきが起き、彼女を救出するために飛び込んだヒーローがいた。暫くして浮き上がってきたのはハンコックさんをお姫様抱っこしたサッチ先輩だった。


「サッチかっくい〜!!」
「ハンモック大丈夫かぁ〜?」


失格者用のテントからエースとルフィくんが、タオルに包まりながら叫んでいた。


「…蛇姫、大丈夫か?」
「ハァ〜ン!そなたなら助けに来てくれると信じておったぞ…ル」


ハンコックさんはサッチ先輩の顔を見るなり目を見開いてサッチ先輩を蹴っ飛ばした。


「貴様になど助けられとうないわ!」
「なんでェ〜!!!?」


ザッバーン!

盛大な水しぶきを上げ、再びサッチ先輩はプールに落ちて行ってしまった。恩人をいとも簡単に蹴り飛ばしたハンコックさんはというと、何食わぬ顔で髪を靡かせ、失格者用のテントに向かい、ちゃっかりルフィくんの隣に腰をおろした。このようにして、3年女子の部は終了した。


「次がいよいよ最後じゃの〜!!3年男子の部…スタートじゃ!」


さっきまでとは合図が違うような気がするけれども、3年生は続々とプールに飛び込んで行く。そこでもやっぱり溺れる人たちがいて、この学校カナヅチ多くないかとわたしとノジコは顔を見合わせた。


「た…たすけて欲しいカネ…ゴボッ…」
「バッ…早く、派手に引き上げやがれェ!」


そんな人たちを見つめ、最後まで飛び込まなかったのは、七武海の数名と、生徒会のルッチさん、ジャブラさん、それからジョズ先輩とマルコ先輩まで。みんな体育祭では大活躍の人たちで、なぜ?と疑問が頭に浮かぶ。


「どうしたんだろう?」
「七武海に、あの生徒会、それに白ひげの隊長達よ?皆、余程自信があるんだわ…だから他の皆にハンデあげてるのよ」
「なるほど…」


こんなにも長く飛び込まずに待ってるなんて相当な自信を持っているものだなと思ったけれども、わたしの予想は大きく覆されることになる。
突然、全員何かを覚悟したような顔で、息をおもいっきり吸うと全員が一斉に飛び込んだ。

ザッバーン!!


「「「ぐわっ…ゴボッ…ぶくぶくぶく…」」」



まさかの全員カナヅチ。どの学年よりも多かったんじゃないか…。そんな声もちらほら聞こえ始める。モモンガ先生、ストロベリー先生、オニグモ先生、ドーベルマン先生…などなど、言い切れないくらいの先生達が救出に向かっていた。





「お疲れじゃったのぉ!優勝は青組じゃ!青組の諸君は明日の大掃除免除!!がっはっはっ!!」


優勝は青組、青組には七武海のジンベエさんに、白ひげの隊長ナミュールさんもいてまさに圧勝だった。


「青が優勝ってことよりも、あの人達がカナヅチだったってことに驚きだよ…」
「ほんとにね…」




[ 54/108 ]

[*prev] [next#]

もくじ



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -