ついにやって来た中間テスト返却日

学年トップのロビン以外、クラス中が重苦しい雰囲気。



「あぁ、もう返ってこないで…」
「だね…」


とは言ったものの、いつもより良い気しかしないので、何気に楽しみだったりもする。



「テスト返すぞ〜」



といかにもやる気のなさそうな青雉が教室に入ってきた。


うちの学校ではテストは全教科まとめて返って来るので何度も緊張しなくていい、一度に来る衝撃も凄いけど。


テスト返却の手順といえば。



「エース」



名前を呼ばれ

がたんと立ち上がり青雉の待つ教卓のところへ

そしてこそこそとテスト結果を返され



「あらら、留年しないようにね〜」



今回の成績がどんなだったのか臭わせることを大きな声で言われる。



「じゃ、次は頑張ってね」



人によって“次”の後の助詞が変わる、“は”だったり“も”だったり

そしてポンと背中を押して、次の名前を呼ぶ



「えーっと、名前〜」
「はーい」



少し浮き足で青雉の元へ向かうと、今回頑張ったじゃない。と言われた。



「でしょっ!」
「もしかしておれの教え方が良かった?」
「違う違う、マルコ先輩に教えてもらったからね」
「即否定しなくてもいいじゃないの」
「えへへ」



最後に青雉もがんば!と声を掛けて席に戻った。なんでおれも?という青雉の言葉は無視して席に戻り上がる口角を抑えながらテスト結果を見ていく。


何これ、こんなの初めて取ったよ…!!


今まで欠点ギリギリだった化学がなんと80点台!得意だった数学に至っては95点だし、英語や国語も70点台という奇跡の数字が並んでいた。

マルコ先輩の凄さを思い知らされました…。


前の席で机に伏せているエースの背中をバシバシ叩き、んー?と振り返ったエースに結果を見せ付ける。



「見て見て!マルコ先輩凄すぎるね!こんなの初めて取ったよ…!」
「おまッ!すっげェな!」
「でしょっ!!」



これでもか!ってくらいわたしの成績を見て、凄いを連呼してくれたエース。

さて、あのエースの成績はどれくらい上がったのでしょうか!



「ねっ!エースはどうだったの?」
「あぁー、おれか?…うん、良かったぜ!……前よりは…」
「そっか!良かったね!」



てっきりテスト結果を見せてくれるもんだと思ったけど、
会話が終わるとエースはすぐに机に伏せ、睡眠を始めてしまった。
どうしたんだろうと疑問が浮かぶが、もしかするとまた大好きなルフィくんと喧嘩でもしたのかもしれないとそのままにしておくことにした。
それよりもマルコ先輩にお礼のメールを送ろうとわたしは机の下で携帯を開いた。


《マルコ先輩!!テストの点数すっごく良かったです!!ほんとにありがとうございました。何かお礼させてください!》



ブーッブーッ

返事はすぐに返ってきて、未だテスト返却をしている青雉の目を盗んで携帯を開く。



《それは良かったよい、またいつでも教えてやるから。お礼なんていいよ》

《いえいえ!絶対何かします!希望を言うなら今のうちですよ!》


我ながらなんて強引なんだとも思ったけれど、マルコ先輩はここまで言わないと何もさせてもらえなさそうだ。
少し遅い返信にきっと困っているんだろうと思い少し笑みがこぼれた。

ブーッ、ブーッ


《なら飯作ってくれよい、エースが名前の飯はめちゃくちゃうめェ!って言ってたもんだから気になってよい》


う"。なんかエースにハードル上げられてるんですけど…!!
目の前で伏せ寝をしている大きな背中を睨みつけた。だけど、当然何も反応はない。



《そんなたいしたものできないですけど…。いつにしますか?》

《なら早速だが今日はどうだ?》

《大丈夫です!》

《終わったら校門で待ってる》



了解です。と送信してケータイを閉じた。

ほっと息をつく。
うーん、ご飯か…何作ろうかな?そういえば前に先輩に炒飯食べさせてもらったけどかなり美味しいかった…。ってことはあれよりもおいしいものを作らなきゃいけないのか…。
料理は苦手じゃないけど…、そこまで自信があるわけでもない。


あぁー。もうエースめ…。

また前の背中を睨みつけたけどやっぱり何も反応はなかった。



















えーっと、玉ねぎは…、あった!


一つ取ろうと手を延ばせばその前にマルコ先輩の手が延びてきた。



「玉ねぎは丸に近いのが美味いんだよい」



積まれている玉ねぎの中からひとつひょいと掴むと、ポンポンと手の平で投げ、ん。と言うとわたしの手に乗せられた。



「これなら形も良いし、重さも丁度良いよい」」
「ほ、ほう…!」


左手に乗った玉ねぎを見てみるが、わたしには全部同じ玉ねぎにしか見えなかった。

授業が終わって合流したわたしたちは食材の買い出しをしてからマルコ先輩の部屋へ行くことにし、近くのスーパーに立ち寄っていた。

それにしても、マルコ先輩って野菜の知識もあったんだね。そりゃ一人暮らししてるしわたしより何倍も大人なんだろうけど、玉ねぎの選び方も知ってるなんて…
思わず尊敬を眼差しで見つめてしまった。



「で、何作るんだい?」
「あ、悩んだんですけど、オムライスにしようかなって」
「そりゃ楽しみだねい」
「あまり期待しないで下さい…」



かなり真剣な意味で言ったのだが、マルコ先輩は終始楽しそうに、卵の選び方はこうだとか、色々教えてくれた。



スーパーを出てやっと辿りついたマルコ先輩の部屋、食材選びもだけど持って帰ってくるのにかなり体力を奪われた。あぁー。とソファにごろんと寝転ぶ。


「名前…、いつから遠慮って言葉を忘れたんだよい…」



ここはお前の部屋じゃねェぞい。呆れたようにそう言ってるけど全然怒ってる様子ではないそれにわたしは、はーい。と返して立ち上がる



「じゃ、キッチンお借りします!」



敬礼のポーズを取ると、よい。と返された。そういうやり取りが楽しくて、クスクス笑ってしまえば、腹減ったよーい。と額を小突かれた。
ふふっおかしい、マルコ先輩ってこんなにお茶目なんだっけ。













トントントントン



わたしが包丁を動かす音が響く中、わたしの目は涙で溢れていた。



「うっ…うぅっ…」

「どうした?」



慌てたようにやって来たマルコ先輩がカウンターから心配そうな顔を覗かせた。

つぅーとまた涙が伝う。



「玉ねぎがしみるんです……!!」

「ハッ……手伝おうかよい?」
「ダメです!!座って待ってて下さい!!」



キッチンへ入ろうとするマルコ先輩を押し返し、残りの玉ねぎを切り刻んでやった!!

玉ねぎを器に入れラップをして封印し、服の袖で涙を拭いよし!と気合の入れ直し、残りの手順完成させた


いつもより上手く出来たことに感動しながらケチャップと一緒にダイニングへとオムライスを持って行く。
コトとローテーブルに置けば、ほぉ。とマルコ先輩が声を出した。



「お待たせしました!名前特製オムライスです!」
「うまそうだ」
「えへへ、あ、マルコって書いてあげますね」
「あぁ」


ケチャップを持ち、意気込んでささっと書き上げる。

ちょっと歪んだかな〜



「めちゃくちや歪んでるよい」
「……味は同じです」


スプーンを渡すとマルコ先輩は一口ぱくり、わたしは緊張しながらその様子を見守った。



「うまいよい」
「はぁー、よかったぁ」


発せられた第一声に安心の息を吐くと、ありがとよい。とマルコ先輩が言ってくれた。
マルコ先輩はスプーンを置くことなくパクパク食べてくれて、わたしも自分用に作ったものを食べ進めた。



「美味しかった〜」
「片付けはおれがするよい」
「あ、わたしがやります!」
「いいから座ってろいって」
「じゃあ一緒にしましょう!」



マルコ先輩の背中を押して2人で後片付け〜……



「……。随分散らかしたねい……」
「あはは、それほどでも」
「褒めてねェよい」



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