「…で、家まで送ってもらったのね」
「うん」
「あの不死鳥がねぇ…」



現在は昼休み、わたしは昨日あったことをノジコとロビンに話していた。



「あなたの事好きなんじゃない?」
「ないないない。ただの後輩としか思ってないよ」
「分かんないわよー?名前かわいいから」
「よく言うよ。わたしなんて…」



2人は美人すぎるんだよ…。何そのスタイル、何その胸!わたしのなんて…。自分で言ってて悲しくなってきた…。



「名前ーッ!!」
「わぁっ!」



いきなり誰かが後ろから抱きついて来たので、慌てて振り返れば特徴的な赤髪さんがいた。



「シャ、シャンクス先輩!?」
「よっ!」
「どっ、どうしたんですか!?」
「おぅ、お前今日の放課後おれとデートしろ」
「はい!!?」
「んじゃこの教室で待ってろよ?じゃあなッ」




デート!?わたしだけじゃなく、クラス全員の目がこの赤髪さんに注目している。そんなの全く気にしていないシャンクス先輩は話をどんどん進め最後にわたしの頬にチュッとキスをして教室から出て行ってしまった。

わたしは顔を赤くして固まり、クラス全体が沈黙に包まれる中、一番にロビンが口を開いた。



「ふふふ。名前、デートに誘われたみたいね」
「な、なんでわたしっ!?」
「名前…あんたすごいわ…」



あんたと友達になれたことを誇りに思う。なんて言ってノジコが握手して来た。それよりもだ。なんで学校で一番モテる先輩がわたしなんかをデートに誘うの!?

というか、断る前に帰っちゃった…。今日はエースにアイス奢ろうと思ってたのになぁ…。



「名前ー!」
「わ!エース!!」



突然の登場に驚く。今日も隊長会議みたいなのがあったらしく、さっきサッチ先輩が迎えに来ていたなぁと思った。



「どうした?顔赤いぞ?」
「なんでもないよ!なに?」
「あぁ、今日こそアイス食いに行こうぜ!」
「あ……、ごめん…今日も予定入っちゃって…」
「また!?」



ありえねェ。という言葉を顔いっぱいに表現したエースに申し訳なさが募る。



「ごめんね。じゃあ今から日にち決めよっか?」
「そうだな!おれはいつでもいいぞ」
「じゃあ休みの日にしよ!その方が一日遊べるよ!」



この提案に、それいいな!と乗ってくれたエースに安心してわたしも頬を上げた。



「じゃあ…5月の…3日とかどう?GWだし」
「あぁ!おれ大丈夫だ!お前忘れんなよ?」
「うん!」



グッ!と親指を立てれば、エースも同じようにして拳をぶつけた。その後は自分の席に戻り残り少ない昼休みを眠りに費やすエース。そんなエースを見届けわたしもお弁当の残りを平らげた。


「ほんと仲良いわね」
「え?普通じゃない?」
「はぁーー」




















「なぁベン、名前連れてくならどこがいいと思う?」

「全くあんたは…そういうのは誘う前に考えるもんだろ…」

「だってさー。また誰かに邪魔されたら嫌だろ?」

「そういうもんかね…」

「お前らはどう思う?」

「そりゃ食いもん屋だろ!」

「お前は食い過ぎなんだよルゥ」

「それよりお頭ァ、おれたちにも紹介してくれよその女」

「確かにそうだな…お前ら取るなよ?」

「取らねェよお頭の女なんて、恐ろしいぜ」

















「名前ー!」


放課後はあっという間にやって来た。クラスメイト達と別れを告げ、束の間の静けさの後、すぐにやって来た赤髪さん。すぐにわたしの手を握ったかと思うとズカズカ歩き始めた。引っ張られるようにわたしも続いた。



「あの、どこ行くんですか?」
「この間も行ったあの部屋〜」



あぁ、あそこかぁ。昨日貰らったオレンジジュースは美味しかったなぁ。わたし達は階段を上がりまた扉の前について、シャンクス先輩が扉を開けようとドアノブに手を伸ばした。と、その時扉は一人でに開いた。



「えっ?」



見上げると、手に大きなお肉を持った巨漢の人が立っていて、思わずヒッと声が出る。



「お頭おせェよ」



低くて太い声、それにシャンクス先輩は笑って返す。



「待たせたな、みんないるか?」
「おぅみんな待ってるぜ」



えっ…みんな…?まさか…


「行くぞ」


そのまさか。手を引かれ部屋の中に入ると、そりゃあもう怖そうな男の人たちがたくさんいてそれぞれが手にジョッキを持っていて大騒ぎしている。飲んでいるものはお酒ではないと信じたい…。



ザワザワザワザワ…



「お頭ァ!やっと来たか」
「お前ら、こいつが名前だ!」



そう言い、素敵な笑顔でポンとわたしの背を押したシャンクス先輩。

いやいやいや、何するんですかー!

すぐに部屋中の人達にマジマジと見られる。



「おー!可愛いじゃねェか!」
「お頭にはもったいないぜ!」
「ど、どうも…」



普段なら嬉しいお世辞だが、今は全く状況が掴めていないため、引きつった笑顔で返してしまう。



「お前らあんまり怖がらせんなよ。名前、こいつらいい奴らばっかだから安心しろ」



そう言われてもこの見た目じゃ…。何人殺したの!って顔してるよみんな!



「名前も飲め飲め!」



コップを渡され、部屋の中央に座らされる。



「あ、わたし、お酒は…」
「安心しろジュースだ」



シャンクス先輩がコソッと耳打ちしてくれた。その内容にホッとしつつも愛想笑いしかでない…。



「あはは…」



しかし!
いざ話してみるとみんないい人達ばかりで…



「名前!これも食ってみろ!」
「ありがとうございます!」
「見ろよ名前!」
「あはは!みんな面白い!!」



今までにないくらい大爆笑。みんな顔に似合わず、やることなすこと全部おもしろいんだもん!その時、突然持たれた左腕に驚いて顔を上げると、シャンクス先輩が立ち上がっていた。



「名前、そろそろ行くぞ」
「行くってどこにですか?」
「今日はおれとデートだっつったろ?ここな訳ねェよ」
「あ、そうなんですね!」



慌ててわたしも立ち上がると、沸き起こる大ブーイング。



「えぇ!もう行くのかよ名前!!」
「もっといればいいじゃねェか!」
「男だけで飲んでもうまくねェよ!」

「お前らうるせェよ!!」



シン。と静まるブーイング。すると今度はヒューヒュー。と冷やかしが始まった。



「お熱いこって」
「羨ましいぜェー!」



ほんと、何かしてないとダメな人達なんだな…。
そんな中急ぎ足で歩いて行く先輩を慌てて追う。部屋を出ると先輩はチッと舌打ちを一つ。



「結構時間食っちまった」




シャンクス先輩に手を引かれ、学校を出ると、もう夕暮れ時。そしてなぜか手は繋いだままで、チラ。と下から見るシャンクス先輩の顔はやっぱりかっこいい。



「なぁ、名前」
「はっはい!」



声が裏返った!
するとぷはっ!と笑い出す先輩。



「お前何緊張してんのか?」
「し、してません…!」
「ふーん?」



ニヤニヤと先輩がわたしの顔を覗き込んできたので慌てて逸らした。



「そ、それより!どこ行くんですか?」
「あー、もう少しだ」



もう少し?まだ学校出て少ししか歩いてないけど、学校の近くなのかな?


学校を出て真っ直ぐ進むと最寄りのバス停がある。いつもならそこからバスに乗って家へ帰るのだけど、シャンクス先輩はバス停に行く直前の道を右へ曲がった。



「こっち側来たことないな…」
「そっか、まぁ楽しみにしてろ」



ニッ!と子供のような笑顔でそう言った先輩に不覚にもキュンとしてしまった。ほんと、この人顔はすっごく良いんだよ…、顔は…。





「名前、見てみろ」
「うわぁ…すごい…!」
「だろ?」



角を曲がり少し歩くと、川が見えてきて、その川岸は小さな黄色の花で埋め尽くされていた。それに今は空オレンジ色でなんとも言えない絶景!



「きれーい!!」
「ここおれのお気に入りの場所だ。誰にも教えんなよ?」
「はいッ!…でも、いいんですか?わたしなんかに教えちゃって…」
「お前はいいんだ!」
「あ、ありがとうございます!」



また。ニッ!って、自分の顔がどんなものかこの人知ってるのかな…?すごい破壊力なんだよ!



「ここの花いつまで咲いてるかわかんねぇからさ、早く連れてきたかったんだ」
「そうなんですか…。もう枯れちゃうのかな…」
「どんなに綺麗なもんでも終わりはあるってこった」
「写真撮っていいですかね?」
「もちろんだ!」



わたしは携帯のカメラを起動し、夕陽、花、川、この3つをなんとかおさめた。

ちょっとギリギリだけど、全部入ってるし、うん完璧!



「見せてくれ」
「はい」



スッとわたしの後ろからケータイを覗き込む先輩に距離が近くて驚いたけど、夕陽のお陰で顔が赤いのはバレていないみたい。



「いいなこれ!」
「ですよね!送りましょうか?」
「あぁ、頼む」



了解です!と元気良く返事をし、メールで送ろうとして、気付いた。



「先輩…、わたし先輩のアドレス知らないです」
「あぁ、そっか!ちょっと待ってな」



先輩は右手でポケットをゴソゴソ漁り、黒色のスマートフォンを取り出した。
うわ、スマホ…!



「貸して」
「はい」



先輩にケータイを渡すと手早くアドレスを交換してくれたらしく、直ぐにケータイは返ってきた。



「この写真ほんといいな!おれ、待ち受けにしよ」
「あ、わたしも!」



携帯を開くたびにこの画像が見られるなんて、それにシャンクス先輩と待ち受けが同じなんて…!
いや、何考えてんのわたし!
少し赤くなった頬を慌てて抑えた。


「また季節が変わったら一緒に見に来ようぜ」
「はい!もちろんです!」


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