不安で不安で仕方がない。
どうなってしまうのか。みんなは、エースくんは。本当に無事に帰ってくるのか…




「本気なんだな」
「当然だろ」


10日前、ついに船の進路上に白ひげ海賊団のナワバリの島が浮かび上がった。
それを伝えられたエースくんは何かに挑むように目を輝かせ、そこへ向かうと言った。

それを聞かされたデュースさんもスカルさんもゴクリと固唾を飲む。
確かめるデュースさんの言葉へのエースくんの返答はさらに自信を帯びているものだった。




そのやり取りから5日後、とある島についた。白ひげ海賊団のナワバリだという島

あたりには人の気配はなかったけれど、エースくん達はここで白ひげ海賊団を待つんだという。



「お前は船にいろ」
「そうだな、さすがに名前を危険には晒せねぇ」
「絶対戻ってくる」



エースくんの手がポンと頭に乗せられる。
そして、わたしだけが船に残され、みんなは上陸して行った。


あれから5日がたった。
絶対戻ってくるという言葉を信じてはいる。

だけど、いつまで経っても、誰一人戻ってこない。
なんの連絡もない。

あの時頭に乗せられた掌の温もりすらも、もう消えてしまって不安だけが募っていった。


船の周囲にこれといった変化はない。
よく言えば穏やか、反対に嵐の前の静けさにも感じられた。

最悪の事態を想定して碌に寝付けない日々が続いていた。


エースくんのビブルカードを見つめる。
少し小さくなっている気がしてさらに不安が募る。



「エースくん…」



その時、外が騒がしいことに気がついた。
すぐに窓から外を見ると、甲板に数人の人が船に乗り込んでくるのが見えた。


帰ってきた…!?


すぐに部屋を飛び出して甲板へ向かう。

よかった。ちゃんと帰ってきてくれた…!!!

嬉しさのあまり、何も考えずに甲板への扉を開く。



「エースくんっ…!!」



バンと大きな音とともに甲板へ出ると、そこにいた数名の目がこちらへ向く。



「あ?」
「女?」
「あ…」



甲板にいたのは全く見覚えのない人たち。
彼らもわたしを見て、驚いたような表情を見せる。

頭の中で警鐘が鳴る。
この状況はまずい。

ここにいる人たちはスペードのみんなじゃない。
きっと、敵。

なんとか、しないと。


そうは思うのに、久しぶりに走ったせいか、息切れがおさまらない。

胸を抑えて呼吸を整えようとしても、さっきまで考えていた最悪の事態が現実になってしまったと考えてしまって、呼吸だけでなく鼓動も速くなる。



「はぁっ…はぁっ…」



と、そこへ一人の男性が近づいてきた。



「お前も火拳の仲間かい?」
「…はっ」



その人を見上げると、急に視界が歪みそのまま白くなっていく。
それとともに全身の力が抜け自分の体すら支えられなくなって、体が前に倒れるのを感じながらわたしは意識を手放した。




「おいっ!!」



遠くで誰かの声が聞こえる。
だけどそれにすら反応ができない。

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