意識が浮上してどれくらい経ったろう。時計も窓もないこの部屋では時間の経過を示すものが何もなく、永遠の時のように感じられた。

虚ろに天井を見上げていた時、遠くでガチャンと金属音がして、続いて足音が響く。さっきの金属音は扉の鍵の音だとわかる。

足音が近づいてくるのがわかって視線を移すと、格子の外に立つ制服姿のユマちゃんがいた。


「気づいたんだ」
「どうして…」


ニコリと微笑む彼女からは笑顔と裏腹にわたしに対しての憎悪を感じる。


「どうしてって、憎いからに決まってるじゃん」

あたしの心踏みにじって、自分だけ幸せになろうなんて許さない。


ユマちゃんの憎しみの籠った言葉に何も言い返せない。ぐ。と唇を噛んだ。


「ほんとは火拳のエースも捕まえたかったんだけど、さすがに無理だったみたい。うちの海兵何人もやられてもう大変よ」

「だから、あんたを攫ったの。あんたも火拳のエースも許せないから、あんた達の仲引き裂こうと思って」


にっこり。言っていることと表情が合っていないのがより不気味さを増す。
わたしが何も言い返せないことをいいことに彼女は饒舌に話続ける。


「もうあれから丸一日経ったけど、白ひげ海賊団から動きはないわ。あんた見捨てられたんじゃない?助かる道は諦めてね、あんたの行き先は決まってるから」

数日もすれば迎えの軍艦がくるから。それまでここで待ってて。


機嫌良く、笑顔を貼り付けたまま言ったユマちゃんは、最後にひらひらと手を振って去っていった。コツコツと足音が遠ざかり、最後に鉄の扉が閉まる音がした。

彼女が去って強張っていた身体の力が抜けた。
次の行き先というのはインペルダウンのことだろう。

それに白ひげ海賊団の動きがないという情報はわたしを絶望の淵に落としめるには十分すぎる事実だった。

見捨てられた。ユマちゃんの言葉が脳内で繰り返される。

彼らにとって、危険を冒してまでわたしを助けるメリットなんてない。それは自分が一番理解していたことなのに。目頭が熱くなる。
泣くものかと必死に耐えたが、ポツリ。と雫が鎖骨を濡らした。

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