「おー、こっち座れー」
「……」


前と全く同じシチュエーションにため息が溢れる。
就寝前に食堂に呼び出され、向かうと、前と全く同じ構図のサッチ隊長とマルコ隊長がいた。

となると、話の内容は決まっている。


「最近のエースと名前はどう?」
「あんたら、暇なのか…」


サッチ隊長は、暇とは失礼な!と反発するが、その目は好奇に染まってる。
結局のところ、あの二人の恋愛事情をネタに酒を飲みたいんだろうか。

というか、おれに聞かれてもおれも今の状況はあまり分かってない。
どちらとも話すが、お互いのことを聞いても来ないし。
いや、ま、気にはしてるんだけどよ。



「そういえば、あんたらがいない時、名前、いろんなやつらに誘われてたな」
「あ?」


それに一番に反応したのはマルコ隊長だった。
眉を寄せ、おれに鋭い視線を浴びせてくる。


「…ほら、この間、隊長達の集まりの日」


食堂で、名前一人に多勢で囲って、島に誘ってるやつもいた。
あの時はおれが声をかけて抜け出させたけど、
たぶん、見てないところでも、いろんなやつらから声をかけられてるんだろうな。


「まー、普段鉄壁のマルコがついてるからなー、他の奴らも話しかけるタイミングみてんだろうな」
「名前がこの船に馴染むのはいいことだし、おれは何も言えねぇがよい…」


視線が下がっていくマルコ隊長を見て、サッチ隊長がコソッと耳打ちしてきた。

コイツも可愛がってる名前が離れてくのは寂しいんだよ。

片眉を上げて笑いながら、項垂れるマルコ隊長を指した。
それには苦笑いが浮かぶ。


「まぁ、けど、前にサッチ隊長が言ってた通りだなとは思ったよ」
「ん?あぁ、この船に名前を狙うやつが多いってやつか」
「あぁ、スペードのころとは違って誰もエースの気持ち知らねぇしな」


おれの言葉にそうだろと言いたげにサッチ隊長はジョッキを口に当てた。
ぷはっと口を離すと、おれとマルコ隊長をニヤリと見る。


「ところで、なんで名前はこの間まで冬服ばっか着てたんだろうな?」
「…ッグ!……ゴホッ」


サッチ隊長のその言葉に、マルコ隊長が口にした酒をむせないように飲み込み咳払いをした。
その横でおれもジョッキを手に持ったまま固まる。
この人意外と鋭いな…。


「やっぱお前らなんか知ってるだろ?」


おかしいと思ってたんだよ。男なら裸になってもおかしくない暑さで首まで隠してるんだからよ。
本人は日焼け防止だって言うけど、これまでだって夏服着てたことはあったし、おかしいよなぁって。


サッチ隊長の大きな目がおれとマルコ隊長を捉える。
マルコ隊長のこめかみに汗が流れた。
まるで追い詰められた犯人だな。
というか、この人も知ってたのか?名前が肌を隠す理由。


「はぁ…」


コト。とマルコ隊長がジョッキを置く。
諦めたように口を開いた。

話される内容はおれの知ってるのと同じ、名前の身体にエースの噛み跡があったってこと。
それを隠すために肌を出さないようにしていると。


「まっじか…」
「おれも驚いたよい」


サッチ隊長は開いた口が塞がらないのか、ポカンと口を開いていた。
黙って話を聞いていたおれを不審にマルコ隊長は見る。


「なんでお前は知ってるんだよい。名前が話したのか?」
「いや。名前の部屋に行った時、ちょうど着替えの最中に入っちまって…」
「おま!女の子の部屋に勝手に…!」
「何度呼んでも出ないから心配になったんだよ!」


変態っ!と言わんばかりの目を向けてくるサッチ隊長に必死に弁明する。
勝手に入っちまったのは事実だが、変態呼ばわりはごめんだ。

おれとサッチ隊長の攻防を眺めながら、マルコ隊長は、最近…、と口を開いた。


「島を出てから名前の様子が変だ。たまに泣いてるのか目が赤いことがある」
「エースにそういうことされてるのか辛いんじゃね?」
「いや、たぶん最近エースとは会ってないと思うぞ」
「え、そうなの?」


今のマルコ隊長の話を聞いて一つわかったことがある。

この間、名前に会った時、エースとのことがどうなったのか心配になった。
どうやらあの日からエースは来なくなったらしい。
名前は、エースはもう来ないだろうって。変な言い方してたし。
あれだけ執着されて何言ってんだと思ったが…。


「マルコ隊長に頭冷やせって言われて、簡単に名前に近づけなくなったんだろう」
「おれは避けろとまでは言ってないよい」
「エースは極端だからな…」
「じゃあ名前が泣いてるのは…」


そこまで考えれば答えは一つだろう。
名前もエースが…。


「拗らせてんなー」


この部外者会議は毎回そこに落ち着いている気がする。
あの二人は拗らせている。おれたちにはどうしようもない。

どちらかに恋のライバルでもできりゃ動き出すか?
いや、名前は絶対に身を引くだろうし、今のエースも見ないフリするのが目に見えてる。


「「「はぁー…」」」


今回の部外者会議は大きなため息で締め括ることとなった。

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