「なにィ!?ジンベエが!?」



突然響いたサッチの声に食堂にいたみんなが振り向いた。
厨房の入口にいるのはサッチとルイトくん、きっとルイトくんが何か伝えたんだ。



「そりゃ急いがねェと…!!おい!お前らァ!!」
「「「「はいっ!!」」」」



放たれたサッチの声に、厨房にいたみんなが返事をするのを見て、ルイトくんは笑顔を溢しそこから離れた。

隣合って座るわたしとエースの近くを通り掛かったので、どうしたのかと尋ねてみると



「さっき電伝虫に連絡があって、今夜あたりにジンベエが顔出すらしいぜ」



ニカッと嬉しそうにそれを伝えてくれたルイトくん。それを聞いたわたしもパァッと顔が明るくなった。ルイトくんはそれをサッチに伝えるようにマルコに言われて来たんだって、きっと今晩は宴だなぁ。


また仕事に戻って行ったルイトくんを見送って隣のエースを見ると、少し難しい顔をして口を開いた。



「なぁ…ジンベエってやつってさ、おれが……」
「ん??」


そこから先を言い辛そうに口ごもる。

あ、そういえばそうだった!
エースの変化によって忘れてしまっていたけど、元は決闘をした仲だったね、この2人。


一度はお互いに殺す気でぶつかり合った相手、実際にジンベエは全治一週間の怪我を負った。たったそれだけで完治しちゃうジンベエも凄いけど、重症なのには変わりはない。

今はエースも丸くなったし、この白ひげ海賊団の一員だ。でもやっぱりどう会っていいか分からないのかな。



「仲良くなれる気がしねェ……」



ずぅーーん。と効果音が付きそうなくらい落ち込むエースに少し笑みが溢れた。するとなんで笑うんだよ…。とエースが拗ねたようにこちらを見る。



「もう…。5日間も決闘して何を見たの。白ひげ海賊団の為になら命を投げ出すくらいの人だよ?今はエースだって白ひげ海賊団の一員なんだから」



それにジンベエはわたし達よりもずっと大人だもん、過去は過去として流してくれるよ



「…うん。でもおれ、あいつに怪我させたし……」
「それはお互いさまじゃない」



ね?と微笑めばいつものニッという笑顔が伺えると、後ろに落としていた帽子をかぶり直した。



ワン!!

「うわ、ステファン!」



何しに来た!!とステファン相手に戦闘体制に入るエース
初対面から何故か犬猿の仲の2人。

ステファンは犬だからエースが猿かな。合わないような気もするけど、とにかくいつでもライバル視、何のライバルかも分からないけど、いつでも張り合ってる。

そんな2人に苦笑いを溢してよいしょっとステファンを抱き上げた。



「そういえばステファンもジンベエに会うの初めてだね、仲良くね?」

ワン!

「おれのが先に仲良くなる!」


























辺りも薄暗くなって来た頃、甲板では着々と宴の準備がされ、部屋にいたみんなも甲板に集まって来た。

一緒にいたエースは緊張しているのかソワソワと手の汗をズボンで拭いたりして落ち着かない。そっと手に触れて握ると、驚いたエースと目が合ったがニッコリ微笑めばエースもニッと笑い、ギュッと手を握り返された。



ザブンッ!!



音がして、誰かが船の下を見る



「ジンベエ!!」



そして、梯子を下ろすとそれを登ってジンベエが甲板に降りて来た。いつも通り泳いで来たらしいジンベエは全身ずぶ濡れでナースさん達がタオルを渡しに向かっていた。



「すまんなぁ」



タオルを受け取ったジンベエはオヤジを見つけると、オヤジさん、久しぶりじゃ…!!と頭を下げた。



「毎度毎度泳いで来るなんざぁ、ご苦労なこったなジンベエ、グララララ…!!」
「海軍に嗅ぎつけられては面倒じゃからのぅ」



苦笑いしながらオヤジの前へと歩いて行くジンベエ、わたしとエースもオヤジの近くにいるわけだからだんだんとジンベエが近付いてくる形になるわけで、エースと繋いでいる手がギュッとさらに握られた気がした。



「まぁ、ゆっくりしていけよい」
「ジンベエ!今日は楽しんでけな!おれが腕奮ったんだぜ!」
「おぉ…!ありがとう、楽しませてもらうわい」



他の隊長達も二言三言ジンベエと言葉を交わし、ジンベエの視線がわたしとエースの方へ向いた。



「お前さんは……」



ジンベエがエースの前に来て、エースが緊張しているのが手から伝わった。



「わしはジンベエ、知ってると思うが七武海じゃ、だがこの船にはよく出入りしとる」
「お、おう!!おれはエースだ、よろしく頼む」



直角に身体を折ったエースにジンベエは少し驚いたような顔をしていた。
確かに、殺気を放ってオヤジに襲撃を繰り返していたあの頃とは大違いだもん。
わたしに謝る時もきちんと頭を下げてくれて、あの時は意外に礼儀正しいんだななんて思ったものだった。



「あの頃とはずいぶん変わったようじゃのう、良い顔をしとる」



ニコリと笑ったジンベエにエースもへへっと笑う。



「あ…、怪我させちまって……悪かった」
「あんなもんお互いさまじゃ、お前さんのほうこそ大丈夫じゃったか」
「おぅ!全然大丈夫だ!」



2人はまた笑い握手を交わした。すると今度はわたしを見たジンベエがまたニッコリ微笑んだ。



「名前も元気そうでなによりじゃ」
「うん!ジンベエも!」
「ところでそいつは…?」

ワン!



と下から鳴き声が聞こえ足元を見てみると、前足でジンベエの足をつんつん突ついているステファンがいた。
おれも紹介してくれってことかな
抱き上げて、ジンベエに向かい合わせる。



「犬か」
「ステファンっていうの」
「わしゃジンベエじゃ」



よろしくなと頭を撫でたジンベエにワン!とステファンも嬉しそうに返事をした。



「この傷は…?お前さん、戦闘には出とらんじゃろ」
「それは……」



左腕の火傷の痕を見てジンベエが言った。

最近ではずいぶんと見慣れてしまって、そこにあるのに全く違和感がなかったけど、久しぶりに会った人だったりすると、やっぱり気付くんだなぁ…。



「ちょっと火傷しちゃって……ふふっ、傷があった方が海賊っぽいでしょ?」



少し気まずそうにしているエースが視界の端に映るが、笑顔でジンベエに痕を見せると、彼も微笑んでくれた。



「確かに、よう似合うとる」



そんな風に言ってくれた人は初めてで少し嬉しかった。なんだかこの痕を嬉しく思って見つめていると、オヤジがジンベエを呼ぶ声が。



「早く来ねェと酒がなくなっちまうぞ」



グララララ。その後に響いた笑い声にジンベエも笑ってオヤジの正面に座った。



エースもジンベエの器に飲め飲めェ!ってお酒をついでいて遠くからそれを見てなんだかホッとした。



「わたし達は……ホットミルクでも飲む?」

ワン!


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