オヤジと話をして、おれたちスぺード海賊団は白ひげ海賊団に吸収されることに決まった。おれ以外のスペードのやつらは結構この船に馴染んでて、後はおれ次第って感じだったけど…


やっと、決心できた。


おれはオヤジを海賊王にする。



おれの決意は皆喜んでくれたみたいで、頭をクシャクシャに撫で回された。



「やっと折れやがったかこのヤロー!」
「オヤジにゃさすがのお前でも敵わねーよな!」



誰かが叫んだことで、おれの周りには大勢の奴等が集まって来た。次々と、酒を渡され、おれもそれを飲み干す。



「っハァーー!!」



こんなに美味い酒は久しぶりなんじゃねェかってくらい美味かった。
家族達と飲むってだけで、こんなに違うのか…


おれの心の中の感動なんて伝わるはずのない奴等はどんちゃん騒ぎ。



「船の中はまた明日案内するからよ!」
「おう!ありがとな!」
「この船は広いからな!全部覚えるには一苦労だぜ?」



誰かがニヤリ、笑ったのに、上等だ。と返す。そこでずっと聞きたかったことを切り出した。


「あいつはなんていうんだ?あのー…おれが溺れた時に助けてくれた…」
「名前のことか?」
「そうだ、あいつ能力者か?」
「あぁ、確か…ミズミズの実っつったかな?」


能力者というのは予想通りだった。だけど、水か…。自分と相対する能力だ。
ここは白ひげの船で普通ではないが、あんなひ弱そうな女でも能力者だということになんとなく興味が湧いた。それに、おれはあいつに怪我をさせてしまっている。

辺りを見渡すが、名前の姿は見当たらねぇ。



「どこにいるんだ?」
「まー、だいたいはマルコ隊長の傍だな」



マルコって、あの1番隊隊長だよな?

あんな目立つ頭ならすぐに見つけられると、視線を動かしていたら、それらしき人物が船縁に凭れているのが見えた。あの船員の言った通りマルコの隣に名前もいた。

だけどよく見ると、その隣に座る名前はマルコの肩に頭を乗せて眠っているようだった。


寝ちまってんのか…。礼はまた今度にするか。


頭でそう思ったのに、何故か視線を離せなくて、その様子をボーッと眺めた。暫くして、マルコは名前の頭ををそっと撫でると、彼女を抱き上げ船内へと入っていってしまった。




「おーい、エース?どうしたんだよ、ボーッとして」



その様子をボーッと見ていたが、サッチの声で我に返る。上から覗き込んで来ているサッチが目に入り、思わず黙った。




「おら、お兄ちゃんに言ってみなさい!」



何兄貴ぶってんだ。という突っ込みも面倒臭く、別に疚しいことなんか何もねぇし、正直に話した。



「名前ってやつにも礼とか、言っとかねェとって思ったんだ」



そう言うと、サッチは眉を寄せた。



「礼も大事だけどよー…、お前、名前にあやまっとけよな。お前が負わせた火傷、あれ痕が残るって言われたんだからな…」
「はっ…?」



うそだろ……あの時は興奮してたのもあって火力押さえられてなかったとはいえ。


女に…あんな傷負わせちまうなんて…。


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