サッチに引き摺られるようにして出た甲板、すぐに船べりに張り付くように腕を乗せ、その上に顔を伏せた。


「名前、大丈夫かな…」
「大丈夫だよい。ちゃんと冷静に受け入れてた、変な気は起こさねぇだろうよい」


おれの頭にポンと手が乗った。珍しくサッチではなくマルコにそんなこと言われたな…。

マルコは何も心配ないと言うようにグリグリと手を動かすが、腕の隙間からやつの顔を見てみると眉を寄せていて、何かもっと深いことを考えているような気がした。


「しかし、大将達を動かすとは、海軍も何考えてんだかな」
「もし攻めて来たとしても、迎え撃つだけだよい」
「まぁ、そうなんだけどよ」


サッチとマルコの会話を聞きつつもおれの頭の中は名前のことでいっぱいだった。
名前に睨まれた時、泣きそうなくらい胸が締め付けられた。

でも…、とにかく無事で良かった。
まだまだ一緒に楽しいことしてぇし、一緒に笑いたい。あとで、また様子見に行こう。

そう決心して伏せていた顔を上げ、海を見た。


「……ん?」


なんだありゃ?まだ小せえけど水平線に何かこっちに向かってくるものが見えた。海の上だから船なんだろうけど、明らかにこの船に向かってきてる。


「なぁマルコ、あれって…」
「ん?…おい見張り!ありゃなんだよい」


見張り台にいた見張り番が、今確認します!と望遠鏡を向けた。


「かっ、海軍だぁー!!じゅっ、15隻の海軍船が!そして先頭の船に青雉を確認できます!」
「青雉だと!?」
「全員戦闘準備をしろよい!!船内へは絶対に入れるな!!」


マルコの合図と共に、船が一気に騒がしくなる。15隻も軍艦引き連れて交渉なんてするようには思えねェしな。戦闘準備ってのは正しい判断だと思う。さっきまでのんびり寛いでいた隊長連中も甲板に出てきて、船べりの上で構えた。


「青雉はおれたちが相手をするよい!お前らはそいつ以外を頼む!」


マルコが他の船員たちにそう言うとおお!と威勢の良い返事が来た。


「青雉さえ抑えればなんとかなるはずだ、船内には1人たりとも入れるなよい…!!」


顔を険しくしたマルコが独り言のようにそう言ったのを聞いて、おれは妙な緊張感を覚えた。

















軍艦がだんだん大きくなってきて、さっきよりもかなり近付いたんだと気付く。
その母船の甲板に立つ男は両手をポケットに入れていて、眠そうに欠伸をした。


「あらら、すっごい警戒されちゃってるね〜」
「何のようだ」


向こうの船の甲板にいる青雉を睨みつけ、そう返した。
海軍側から戦闘を仕掛けてくるなんておかしい。たまに監視船がうろちょろしているのは知っていたが、この様に大将が軍艦を引き連れてやって来るなんて今までではありえなかった。

一体、何企んでやがる…。


「おれもこんなめんどくせーことしたくねぇんだけど、仕事だからさ」


青キジはパキパキと音を鳴らして能力を発揮し始めた。
手に持っていた草に息を吹きかけるとたちまち氷のサーベルが出来上がり、その矛先をこちらに向けたかと思うと、やや下に向けた。


「悪いね」


青キジは言うが早いか、そのサーベルの先から氷を出し、モビーの船底回りだけを氷で固めた。


パァンッ!


その瞬間イゾウの銃が青キジのサーベルを打ち抜き、サーベルはポッキリと半分に折れた。それが合図だったかのように、海兵もこちらも一斉に動き出し双方戦闘が始まった。


何人もの海兵たちがこちらの甲板に上がってくるが、おれたちは一斉に青キジに仕掛けた。
だが奴はなんの焦りも顔に出さず。あらら、なんて言ってやがる。

隊長全員の攻撃を体を流動させて避けながらイゾウの銃を凍らせたりと些細な反撃をしてくるが、大きな攻撃は仕掛けて来なかった。

何かがおかしいよい…。モビーの甲板は雑魚海兵たちで埋め尽くされているのに対し、青キジはこちらに来るどころかむしろ後退しているように見える。



なぜ、大将を動かしておいてこの程度のことしかしないんだ……。
なんのためにこんな無駄な戦いを仕掛けてきたんだ……。
これだと双方被害が及ぶだけで、海軍に何の得もねぇはず…、もしかしてこれでおれたちの戦力が落ちたところで何かを仕掛けるつもりなのか?いや、なら今青キジを寄越す理由がわからない…。
もし今、本気でおれたちを捕える気なら、青キジだけじゃなく大将全員動かす…___


「ッ!!」
「マルコ?」


サッチがおれを呼んだ。

繋がった。だが一番考えたくなかった答えだ。ずっと気になってはいたんだ。名前の手配書だけONLY ALIVEだったこと。やはり、ここまでしてきたのは名前が狙い。
つまり、青キジは囮だ。他に何かを仕掛けている奴がいる。それも、三大将のうちの誰かだ!名前が危ない…!
おれは、そのことに気付き、すぐに船内への扉へ向けて走った。


「おっ、おいマルコ!!」

「チッ…!だからおれたちを船から遠ざけてたのか…!!」

「あらら、もう気付かれちゃったよ」


おれが走り出したと同時、青雉はおれに向けて氷の矢を飛ばした。


「火銃!」


どこからともなく飛んできた炎の弾によって氷の矢は消された。

その時、どうしたんだマルコ!とエースが近くにやって来たが、おれの憶測を説明してる場合じゃねぇ。そう思い、名前のところへ行け!とだけ叫んだ。


「わかった!」


やはり、名前のことに関しては目の色を変える。急に険しい顔つきになったエースはすぐにモビーへ向かった。


「おっと、そっちには…」バキンッ…!!
「てめぇの相手はおれたちだよい」


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