- ナノ -
よくある朝の光景
ここは岩鳶高校。

どこにでもある、一般的な高校である。そして、その一般的な高校の一角、これまた一般的な教室では、こんな光景が繰り広げられていた。



「おはよう竜ヶ崎君。今日も素敵ね」
「おはようございます結城さん。あなたは相変わらずですね。」
「あら、純って呼んでって言わなかった?」
「呼びません」
黒髪の和風美人が、眼鏡をかけた男子生徒に猛烈にアピールしている。男子生徒は美人を軽くあしらっている。
ちなみに、これは、この教室では毎日のように繰り広げられているやりとりだ。周りのクラスメートは慣れたものなのか、スルーしている。中にはニヤニヤ笑いながら見ている者もいる。
美人な少女の名前は、結城 純。男子生徒、竜ヶ崎怜が好きだと公言し、熱烈なアピールを繰り返し鬱陶しがられる、そんな女子高生である。
そして、純と怜に近づく人影が一つ。
「怜ちゃん、結城さんおはよー!結城さんは今日も怜ちゃんを逆ナン?」
「おはようございます渚くん」
「おはよう、葉月くん。逆ナンしても竜ヶ崎君ったらつれないの」
葉月渚。怜と純のクラスメートであり、怜とは親友の間柄の少年だ。
「えー、怜ちゃんひどーい」
「酷くないです。いつもからかってくる人に真面目に応対できませんよ」
その瞬間、純が悲しげな表情をしたのに、誰も気づかなかった。
しかし、彼女はすぐうっそりと笑い、怜の腕に抱きついて、次はけらけら笑った。
怜は困った顔をして純を引き剥がし、渚は囃し立てる。


これは全て、岩鳶高校ではよくある光景であり、これから記していくのは、そんなよくある光景の話である。
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