『拝啓、
　こちらは桜の花が咲いています。一年が経ったのだと、気がつかされました。
　最初は今様の文字も言葉遣いも慣れずに苦労しましたが、今では、言文一致の気取らなさを心地よく思います。たった一言の気持ちを伝えることは大変な苦労ですが、書いてしまえば、ただそれだけなのです。
　部隊の彼らは不器用ですから、手紙を書くことも気恥ずかしく感じるようです。文字が書けないわけでもないのに、石文のようなことをしてしまうのは、彼らなりの武器としての矜持なのでしょうか。
　ですが、私は、手紙を書きます。
　私はすっかり人間になってしまいました。

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