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光と音が鳴り近くを探していたエルヴィンが勢いよく振り返えると鎧の巨人が突如現れ、走り去ろうとするその背中へ小さな巨人とエレンを背負うベルトルトを見つけ馬の方向を変えて鎧の巨人を追いかける
「各班巨人を引き連れたままでいい!私についてこい!」
刃を空に向け鎧の巨人を追いかけ、憲兵がその声に気づきエルヴィンへ悪魔と叫び自分達を囮に使うかと嘆きながら恐れた様子でエルヴィンの後を必死に追う。
先頭にエミリー達が走り、その少し後ろにエルヴィン率いる巨人を連れた班が鎧の巨人たちを追い詰める
「追い付けない速度じゃない間に合う」
「今度はためらうことなく奴らを必ず殺す、私たちの邪魔をするならユミルもその例外じゃない」
「…私はユミルはまだ保留だね。」
「どうして!ユミルはクリスタを…」
「ミカサ…エレンがアニに連れ去られた時の事覚えてる?…もしユミルが…今のなし仮説にしては現実味がなさすぎる。忘れて」
エミリーの発言にミカサは少し考えた様子を見せるがエレンを連れ去ろうとしている2人が目の前に居る限りその殺意は収まることはなかった。
鎧の巨人はそこまで足が速いわけじゃないアニの時に比べれば鎧をまとっている分動きも鈍く遅い。このまま馬を最高速度で保っていれば必ず追いつける。
エミリー達の馬の走る速度が上がり、エレンの表情が確認できるくらいの距離まで接近しはじめ、踏まれないようにそれながら鎧の巨人の背中を見上げ確認する。
「クリスタ…生きてる…。」
やっぱり口に含んでいただけだったんだ。アルミンやジャンも背中を見上げクリスタの生存に安堵し、巨人化していないベルトルトに殺意をむける。
エミリーが機会をうかがって攻撃に入ろうとしていたときだった、我慢できずにハンネスさんが我先にと鎧の巨人のかかとめがけて刃をふるう。
「ハンネスさん、鎧の巨人はほとんどの個所が硬化されてて消耗戦になった場合勝ち目はありません」
エミリーの言葉に「クソっ!」っと言いながら転げおちるハンネス
「もう少し待ってください、止めるのではなくエレンを取り返すんです!」
エミリーの声にエレンが少し目を開き自分が今どういう状況なのか確認する様に見下ろして、切りかかった後のハンネスを見る。
馬に飛び移ることができず、地面にはいつくばってエミリーの部下がハンネスの馬を連れ彼へ馬に乗る様エミリーが声をかける。
全員が鎧の巨人たちを囲むように馬を配置させ
「一斉にかかる!戦闘用意!」
エミリーが叫び全員が立体起動装置の刃を抜き
「私の合図で、先ほどの順でとびかかれ!隙を見て私とミカサでエレン奪還を邪魔するものを排除する!みんなは、エレンを奪う事のみを考えて! かかれ!」
エミリーの合図とともに数名の兵士が鎧の巨人の項や頭めがけてアンカーを刺し飛び移ろうと試みるが、刺さったアンカーをユミルが抜き地面に叩きつけた
その瞬間ミカサとエミリーが飛んでミカサが巨人化したユミルの片目をエミリーはユミルの頭に飛び移り項付近に刃を差し話しかける
「ユミル…手か足どっちがいい?」
冷ややかな目と声に今まで見たことなかったエミリーが目の前に居ることに怯え驚き声が出ないクリスタ。
「エミリーさ、ん…ま、まってくだ…さい!」
ユミルに話しかける彼女の瞳の冷たさに、いつも優しかったエミリーの面影はなく、声をかけたクリスタは彼女の怖さを感じ取った。
エミリーがユミルを見張ってる間にミカサが背中に居たベルトルトめがけて走り込み切りかかろうとするがベルトルトは「ライナー守ってくれ!」とさけびライナーの鎧の首元にに逃げ込みライナーが手で守るその隙間から殺気に満ちたミカサと見つめ合う。
見張っているはずのユミルが突然動きミカサの邪魔をしミカサが切りかかろうと飛ぶエミリーは刃を抜き両方の目を一気に切りクリスタが叫ぶ
「待ってください!!!!待ってミカサ!!!」
クリスタがエミリーに怯えつつもミカサの前へ出て止める。
クリスタが制止したことによりエミリーは殺気を出しながらクリスタがいるユミルの頭へ飛び移り「どうして?」と髪を掴み震えながら見上げるクリスタへ静かに聞く。
「ユミルを…殺さないでください…。」
「ユミルの行動次第じゃない?今兵士を振り落としたということは私たちに敵意があると認識したけども。」
「ユ、ユミルは…」
「ユミルは単純だとあなたは言ったわよね?単純に考えた時さっきの行動は?人類の敵じゃないかしら、ねえクリスタ。」
「ち、違うんです!ユミルもライナー達に従わないと殺されるの!こうするしかなかったんです!」
「仕方がなかったねえ。じゃあ私が今からすることも仕方がなかったで済まされるのかしら。」
「な、何をされるんですか…?」
「命の選択」
エミリーは刃をしまいミカサへ顔をむけ、クリスタの頭に手を置く
「ミカサ、あなたはエレンのことだけを考えてくれればいいその他の煩わしい選択は私が考える。最優先はエレンよ。」
「わかった」
ミカサの敵は6年前から何も変わらず今目の前にいる。エレンとの幸せを壊した人類の敵。眉間に皺を寄せクリスタを見下ろす。
ミカサがエレンを隠したベルトルトの方へ向かう
エミリーはユミルの頭の上でマントの懐から信煙弾を出し黒の煙弾を打ち上げ空へ黒の煙が伸びて行き数名の兵士が鎧の巨人へ飛び乗ってきた。
その際ユミルが抵抗しようとした為「ユミル、時間が無いのクリスタを傷つけたくなかったら大人しくして。あなたの事もこれ以上傷つけなくないの」エミリーの圧力によりユミルは「うぅ…」と小さくその場で抵抗することをやめた。
エミリーの信煙弾とを確認後104期兵士がミカサの方へ集まりベルトルトが姿を現すのを待機し始める。
エレンの意識が戻ったことにより背負って隠れていたベルトルトが暴れないようにエレンへ声をかける。
その声に反応したのはエレンではなく104期兵士達だった。
一人一人ライナーとベルトルトに声をかけていく「騙してたのか」「でてこいよ」など今まで共に過ごした時間を振り返るように話ていく。
まだ心の底のどこかでそんなことをする奴らじゃないと思っているのか暖かい声をかけていく。それを聞いたエミリーは軽くため息をつき。
「クリスタ、振り落とされないようにするんだよ。」
鎧の巨人の後頭部へアンカーを刺し頭上へ登って104期兵士達を見下ろす。
「一瞬の迷いがエレンを失うことになる。今回の任務を、エルヴィンの作戦を思い出しなさい。彼らはもう仲間じゃない同志じゃない兵士じゃない」
エミリーの言葉が胸を締め付けられるベルトルトとライナーあの優しく微笑んでくれエミリー達からの敵意を全身で感じながら今思っていることを叫び抗う。
泣きながら104期に言葉を投げかけるが
「全てが嘘じゃないねえ…大量殺人者がこんなにもか弱くて、繊細な子達だなんて誰も想像しなかったでしょうね。」
エミリーも鎧の巨人の首元へ移動し足で手の甲をコツコツ踏みつける。
「エミリーさん…。」
ベルトルトが涙ぐん声で小さく名前を呼ぶ。
「仲間じゃないって言ったけど。あなた達2人が調査兵団にきた時は本当に頼もしくて信頼してたんだけどなぁ。」
「……本当に…仲間だと思って、たんです……僕らに謝る資格なんてあるわけない、けどお願いだ…誰か僕らを見つけてくれ…」
声をつまらせ振り絞りながらベルトルトがみんなへ訴える。
彼らはどうしてこんな事までしてエレンを連れ去ろうとするのか、壁に穴を開け巨人を侵入させた。これはいつから計画されたものなのか。そして、巨人になる能力はいつどこで得たのか。どうして人間が巨人になることが出来るのか。
彼の言葉にエミリーの脳内で彼らの今までの行動と発言を照らし合わせる。
「ベルトルト、エレンを返して。」
ミカサのその言葉にエミリーは一気に意識がもどる。
「ダメだ、できない。誰かがやらなくちゃいけないんだよ誰かが自分の手を血で染めないと」
あぁ、彼の言っていることは凄くよく分かる。既視感というやつだろう。地下街での生活はそればっかりだった。
「おまえらーーー!そこから離れろ!!」
ハンネスが叫び全員が馬を走らせるハンネスの方を向き彼が見つめる視線へ目を向けると
鎧の巨人の前方から巨人を引き連れたエルヴィン率いる兵士たちが視界に入った。