09
壁外調査資金集めの為団長室に呼び出されたエミリーとリヴァイ。ソファーに腰掛け今回エミリーを連れて行くことに難色を示しエルヴィンへ盾突く。エミリーが不在だった3年間は主に2人が参列していた。だが、今回の主催の意向でエミリーの参加が必須となった。
「エミリーも一緒だとは初耳だがな」
「今回の主催の意向だ」
「…ということは、シャルロット商会ですか。」
「そうだ。」
察したエミリーは苦笑いを浮かべ気まずそうにリヴァイをチラッとみる、露骨に機嫌が悪くなりエミリーは失笑する。エルヴィンはそのまま説明を続け前回は昼間に行われた商会集会
今回は地方からの人たちも集い夜の開催となる。帰路が遅くなる為、主催者側の計らいで送迎にシャルロット家の馬車を用意すると提示があった。そこまでするという事はエミリーを連れてこいと言われているようだった。
「ドレスコードも用意すると向こうは仰ってるが。」
「どうするって、それ拒否できないでしょう…」
「いいや、必要ねえ俺が用意する。」
「そういうと思って断りは伝えてある。」
さすがとしか言えないです。団長さん…。
出発は明日の夕方と聞き明日エミリーたちは非番扱いとなった。話を終え本日は明日に備え本部で過ごす。珍しく兵舎内にエミリーがいることに兵士が色めき立っていた。基本的に隣にはリヴァイが居る為話しかけられることはなかったが、一人で食堂に行った時などエミリーの周りには人が埋まり兵士たちは憧れのエミリーと過ごせて楽しそうにしていた。
その頃ハンジがリヴァイを捕まえエレンの実験実施日について話食堂にはいってきた。いつも以上に賑わう食堂にハンジが「珍しく埋まってるねー!」この時間は混まない時間なのにも関わらず席がほぼ満員になっており「後にしようか」とハンジの提案に乗り引き返そうとした時。
ある席に密集していることに気づき、そちらに目を向けると楽しそうに話す兵士とエミリーを見つけ帰ろうとしていた足を止め食堂内に入っていく
「空いてる席あった?」
とリヴァイの後ろをついて行き目的の席に着きリヴァイが止まる
「エミリー!」
「ハンジ、リヴァイ!今からご飯?私もう終わったから変わるよ、どうぞ。」
リヴァイとハンジに席を変わろうと食器をもち席を立ちあがるエミリー。近くに居た兵士達を睨むリヴァイと「いいのかい?」と周りの兵士たちの様子を見て苦笑いを浮かべるハンジ。
「エミリーがここに居るなんて珍しいじゃないか」
リヴァイの機嫌がなおらずポケットに手を突っ込みながら黙って兵士たちを睨み兵士達もそれを察して誰も顔を上げない、先ほどまでにぎやかだった食堂がリヴァイとハンジが入ってきた事により静かになる。耐えきれずエミリーに話を振るハンジ。
「久しぶりにここに来たから食堂でご飯食べようかなって」
食器を持ったままその場で話してると、リヴァイその食器をもち返却口へとおきに行く。その後をエミリーがついて行き「あはは、王子様…おこっちゃったねー…」と頭を掻きながらエミリーが座っていた席を後にした。
食堂から出た後各自部屋に戻る道中エミリーとハンジで会話が盛り上がり、リヴァイはその様子を後ろから黙ってみているだけだった。ハンジは研究室にこもるといって別れリヴァイと2人きりになる。
「いつになったら機嫌治るんですか」
前を歩いていたエミリーが後ろを歩くリヴァイに声をかけ振り返る、振り返ったことによりリヴァイの足がとまる。返答は無くただエミリーを見つめる。
「お前の時間。」
「いいよ、あげる」
リヴァイは肝心なところで黙る。いつものことだけど、今日はなんとなく察した。
驚いていた様子でエミリーを見てふっと笑うとエミリーはリヴァイの隣に立ち「とりあえず紅茶飲みませんか?」と言ってリヴァイの部屋へ向かう。部屋について椅子に腰かけるエミリーは慣れた手つきで紅茶を淹れ始めるとリヴァイは衣装棚を開け
「前、忘れて行っただろ」
ベッドの上に置き忘れて行った綺麗に畳まれた総レースのドレスを出した。なんのことなのかチラッと見て黒のドレスをみて察した。
「そうだったね」
紅茶を注ぎ終り持っていこうとしたら隣にリヴァイが来て淹れたてを飲む。「あついよ?」と声をかけるが構わず口に持っていく、エミリーは猫舌なのでふーふーと吹きながら温度を確認しながらそのまま立った状態で飲む。
満足してエミリーがカチャと置くと同じようにカップを置きエミリーの顎をつかみ口づける。
「さっきの状況見て、明日の集会が思いやられる」
「考えすぎだよ」
「お前は、いつもそう言うがな。はぁ…お前が自分の事だと無頓着なのは承知の上だ今に始まったことじゃねえ」
顎の下に置かれていた手が離れ自身のスカーフを外しシャツのボタンを外し浴場へ向かう。
「シャワー浴びてくる」
「はーい」
エミリーはベッドに向かいドレスを眺める。あの日起きたことがフラッシュバックのように脳裏をよぎりドレスを抱きしめベッドに座りボフっと上半身を倒す。あの時初めてリヴァイに拒絶されて意外とそのことにショックを受けていた自分が居た、今までそういった感情は押しつぶされそこまで気にならなかったが、あの日は胸の奥に圧迫感があり苦しかった心臓をつねられているようだった。自分の行動でリヴァイを傷つけ自身を傷つけることになるとも思わず後悔した。
想いにふけってシャワーの音が心地よく聞こえ少し睡魔が襲い目を閉じるとそのまま夢の中へ落ちて行った。
頭を拭きながらズボンだけ履いたリヴァイが浴場から出てエミリーの姿を探す、ベッドの上でドレスを抱きながら眠るエミリーを見つけその隣に腰をかける。静かに寝る彼女の頭をなで愛おしそうに見つめる。寝苦しそうなシャツのボタンを外しすこし欲情するが堪え立ち上がる。
綺麗に飲み干された紅茶のカップを片付けてると「んんっ…」と艶っぽい声をだしたエミリー。パチッと目を開けここが自室ではないこと気付き体を起こす。
「起きたか。」
「ごめん、寝てた。」
「いや気にするな。」
その後目を目を覚ましに身体を洗い、リヴァイ服を借りて二人の時間を過ごす。明日1番にドレスを買いに行くと言うので早めに寝ることにした。