Jack | ナノ


Nike


私が、ジャックを称賛することはまずない。称賛とは、他人が自分に似ていることを馬鹿丁寧に評価することだ。しかし、唯一、彼に高い評価を与えてやれるとしたら、それは女の趣味くらいだろう。あの男は女を選ぶ目だけは良い。例外なく、彼の選ぶ女は、確かにどれも美味であった。


扉を控えめに開けたのは、仏頂面の男ではなく、可憐な少女だった。齢、十五六にも満たぬ、色白の娘である。


「これは、これは。はじめまして。私はニケと申す者ですが、ジャックがいますか?」

「………ニケは……ジャックの何?」

「はあ、何かと問われると困りますね。考えたこともありませんでした」

「ジャックの、おともだち?」

「トモダチ?」


その類の言葉は久しく耳にしていなかったような気がする。少女は男のものと思われるシャツを一枚、さらりと着ていた。白い脚は剥き出しのまま、扉に体を預けている。長い髪はひどく乱れていたが、その色艶ともに美しいことがわかる。白いシャツに薄っすらと浮いた胸の先を見る限り、おそらくシャツの下には何も纏っていないのだろう。しかし、なんて無用心で愚かな娘だ。見知らぬ男の前でこのような姿で現れるとは。手を伸ばせば、すぐに引きずり出せてしまいそうだ。


「それで?あなたこそ、ジャックの何なのですか?」

「ティーはジャックのものだよ」


随分と教育されているらしい。一体どんな風に刷り込んだのやら。


「彼が少女趣味を持っていたとは。長い付き合いですが、少しも知りませんでした」


ティーという少女は小首を傾げて、ぼんやりとしていた。僅かに顔を寄せると、彼女の甘い香りがふんわりとした。と同時に、ジャックの、あの林檎のような匂いが鼻をくすぐった。


「さてはて」


開いた隙間に靴を滑り込ませて、少女の腕を捉えてしまえば、侵入は容易かった。大きく踏み込み、小さな体を壁に押さえつけた。


「ニケ……?」


ほんのりと赤い唇が、空気を震わす。やはり、ジャックの趣味は良い。かくも香しき上等なものは、長らく手にしていない気がする。未熟な体。しかし、十分過ぎるほど、完成されている。服の中に指を差し入れて、薄い腹をすうっと撫でた。滑らかな肌触り。胸の先へ辿る。反応も、良い。強張ったものを強く押し付ければ、少女の身じろぎすら快楽に変わった。


「ジャックとも、こういうことをするのでしょう?」


少女の意味のない抵抗をねじ伏せる。嫌がるような声さえも今は潤滑油のようだ。

せり上がる欲望に身を任せようとした矢先、玄関の扉が大きく開いた。その姿を認識するよりも速く顎をとらえられ、そのまま床に押し倒された。受身を取ることも敵わず、強かに頭を打つ。衝撃で眼鏡が遠くに吹っ飛んでいった。覆いかぶさる大きな影を認める。咄嗟に起き上がろうとしたが、そうはさせまいと容赦のない力で抑えつけられた。


「人ん家で強姦たぁ、いい度胸してんじゃねえか。この変態野郎」


言い返そうにも、ぎりぎりと顎を押し潰さんとする手に阻まれて、口を開くこともできない。


「何の用だ。クソ眼鏡」


軽蔑と憎悪に滲んだジャックの顔を凝視する。ぎらぎらと鋭さを増す瞳。嫌味なほど美しく整った顔がこうして歪むのを見ると、私は昔から酷い高揚感を覚えるのだった。






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