Jack | ナノ


Nike


有能な人間が、なんとかして無能な人間と区別して欲しいと願い、その吝(けち)な野心がほんの少し満足できる程度に身に備わっているのが「能力」と呼ばれているものだ。おおよその能力は高濃度の糞真面目さに依存している。この糞真面目という印象的な特質は、やはり世間からは一種の「能力」として、まあまあ正当に評価され、報われていると言えるのかもしれない。糞真面目にしていることも結構至難のわざであるからである。

どちらかといえばジャックという男は有能である。彼という男は、自主的な思考や行動の好きな異常者であったが、幸い彼は勝者であった。美しく、強靭な肉体を持ち、大変賢い男だった。故に彼は劣等とは無縁の人生を歩んできたのかもしれない。しかし、彼には、突然、何の前触れもなく、ぶっぱなされた砲弾によって粉々に打ち砕かれ、全てを失って死ぬ、というような不幸が誰よりもお似合いだ。あの冷ややかな麗しい顔に絶望の色を添えてやりたい。

別にジャックを非難する気などない。彼の罪やくだらなさを断言する必要もない。認めよう。ジャックは能力のある男だ。だからこそ、あの糞真面目が得たものを後で根こそぎ取り上げて、永遠に奪ってやるのは、きっと小気味の良いことに違いない。そのとき、私は舌根から脳へと抜けるような、かつてない勝利の歓びを味わうだろう。それが、私の生きる楽しみの一つだ。





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