靴を買った。子どもには不釣り合いな踵(かかと)の高い靴。それは、欲深さの象徴のような、深い赤色をして、艶めかしい形をしている。幅の細い、斜面の急な靴底は片手で隠してしまえるほどに小さい。この両手から捧げるように少女の足にあてがって、可憐なつま先から、ゆっくりと包むように履かせてやった。可愛らしいあんよにぴったりと合って、鮮やかにきらめいた時に、自然と唇から「うつくしい」と一言もれた。見上げた少女の頬は桃色に染まっていて、目が合うと控えめにはにかんだ。白い透き通る肌に、深紅がよく映える。店の者には、これにするとだけ言った。
それが、どこかに少女を運ぶものである必要はなかった。家に帰って、人形遊びのように、買ったばかりの服を着せて、靴を履かせ、美しく整えて、鑑賞し、また脱がす。少女はされるがまま、この手を受け入れ、腰を上げ、時折じっと窺うようにこちらを見つめた。
「すごくきれいだ……」
陳腐な言葉も、目を見て告げる。すると途端にこの娘も恥じらって、尻をもぞもぞと動かして、しおらしくしてみせるのだ。色っぽく、つやめく。緩慢な瞬きの中で、欲情とも思われるような吐息をきいた。布の擦れる音にまぎれて、濃き色の靴が持ち上がる。浮いたつま先を掴んで、肩に預けさせて、その柔らかな体を探った。
「あ、だめ、破れちゃう……」
強く引いて、服がぎっと大きく鳴った。一枚一枚丁寧にほどいて、一糸纏わぬ姿へと近づけていく。靴だけを残して、少女の肌色を広げていけば、息をのむほどにみだりであった。
最初から、この姿が見たかっただけなのかもしれない。この性的な靴は、細やかな愛撫にしっとりと濡れた少女にとてもよく似合っていた。耽美に溺れて、呼吸をするのも苦しい。
「ティー……」
呼び声は掠れて、熱っぽかった。
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