真選組特集

「えぇ!?真選組特集?!」

会社のフロアにまゆの声が響き渡る。と言ってもフロアには毎度の事ながら望月しかいない訳だが、誰もいないフロアにまゆの声が反響して、彼女の目の前にいた望月は迷惑そうに耳を塞ぐと「そうですよ」と返した。

「何でも昔やった特集が好評だったとかで」
「いやいや2年以上前よ?!それを好評だったからもう一回って…間空きすぎでしょ?!」
「俺もそう思ったんすけど…なんか部長曰く、警察庁長官の方から直々に取材に来てくれないかって依頼があったとか」
「……はあ?!」
「2年前の雑誌の時に真選組のイメージが良くなったらしいっすよ?けどここ最近イメージダウンしてるらしくて、もう一度特集組んで盛り上げて欲しいって」
「…………マジかよ」
「マジっす」

2年前、それは土方とお付き合いを始める前。自分は真選組特集を書くべく真選組へと取材に行った。当初からイメージの悪かった真選組、なので出来るだけ面白可笑しく彼らの事を書いてみたらこれが良かったらしく売上は上々だった。真選組のイメージアップにもつながったらしく警察庁長官から感謝の言葉をもらったぐらいだ。

だが……。

うーん、と頭をひねるまゆ。
この件に土方一枚噛んでいるのでは?と懸念しているのだ。だが、依頼は感謝の言葉を頂いた警察庁長官かららしい。まさか同じ警察の組織といえど、こんな事までしてくるわけがないだろう、とまゆはぐるぐる考えを巡らせていた脳みそを一旦止めると、望月が持ってきていた2年前の真選組特集の組まれた雑誌を手にとった。
ペラペラと捲れば、自分の文章と真選組隊士たちの写真が数枚。その中に若干今よりも若そうな土方も映っていた。

「この時って確か泊まり込みで取材したんすよね?」
「まー…いつ何が起きるか分からなかったから泊まり込みで常に彼らの行動についてまわってたけど…」
「じゃぁ今回も泊まり込みっすか?」
「………いや、勘弁だわ」

この時と今じゃ状況が違う。自分は土方に出来るだけ会いたくないのだ。
どうしたもんかな…とまゆはスケジュールを睨みつけると雑誌を静かに閉じた。













「よう」
「………どうも」

山崎が監視の任を解かれたというのに、高確率で土方と出会ってしまう。その事に頭を擡げながら目の前の男にうんざりした表情で挨拶した。

「仕事帰りか?」
「そうですけど…ホント良く会うわね十四郎」

嫌味を込めてそう言えば「そうだな」とすまし顔でかわされてしまった。ムカつく。

「なぁ、仕事終わりなら少し茶でもしてかねぇか?」

いやいや、お前は見回りの最中だろ?!と毎度のことながら断ろうと思ったのだが、まゆは少し考えるとOKを出した。
まさかOKを貰えるとは思っていなかったのだろう、嬉しそうに目を輝かせ「マジで?!」と言ってくる男は忠実な犬の様で正直可愛……いくない!全然持って可愛くも糞もない!!

「…まゆ?」
「え?!何?!」
「いや、何処がいい?」
「え、えーっと、」

時刻を確認すれば既に17時。中途半端な時間だ。お腹が空いたといえば空いているし…と悩んでいると「あそこ行かねぇか?」と行き先を提案された。

「あそこ?」
「ほら、お前が好きだったイタリアンの店」
「ああ!あそこ!いいね!」

ピザとパスタが美味しいイタリアンの店。居酒屋じゃないのでお酒を飲む必要もなさそうな店のセレクトにまゆは快くOKを出した。




[ 1/3 ]

[*prev] [next#]
[]
[しおりを挟む]





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -