仕事の所為にするな

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「トシ。お前振られたんだって?」

「ぶほっ!?な、何で…っ?!」

「何でって…そりゃ真選組隊士使ってまゆちゃん捜索して、あまつさえその隊士らの目の前で振られたのはお前だろ」

「…っ、」

「屯所中その話で大盛り上がりなんだけど」

「………そうかよ」

近藤の一言に思わず吹き出してしまったわかめの味噌汁。口元に引っかかったワカメをズルズルと再度口内へと収容すると胸糞悪そうに顔をしかめた。

「まぁ、俺らの仕事は特殊だからな。一般の女性には理解しがたいところもあるだろう」

「……そうだな」

「だが、そう言っていたら真選組隊士は全員独身を貫く事になっちまうな」

「…いんじゃねぇの。それで」

俺が振られたんだ。この際真選組隊士全員が独身を貫けばいい、などと八つ当たり地味た判断をする土方に近藤は困ったように苦笑すると「こんな仕事だからこそ、支えてくれる人は必要だろう?」と言って来た。
自分だって独身で、更に言うなればあのゴリラ女からはウザがられているストーカーだと言うのに、何を言ってるんだこの人は…と呆れ眼で隣のゴリラを見る。
だが、その呆れた眼差しに近藤は気が付いていないようでガツガツとその大きな口に米を頬張っている。

「………結局あいつを放ったらかしにしといた俺が悪いとか言うんだろ」

弄れた子供のように、口を尖らせてセリフを吐き捨てる土方。それに近藤は肯定も否定もせず卵焼きを一つ頬張ると、たっぷりの間を置いて口を開けた。

「俺から見るに…まゆちゃんは理解ある子だったぞ。トシ」

「………」

「その理解に胡座を掻いたのはお前だ」

「……」

「手放しちゃ…いけない女だっと俺は思う」

それだけ言うと近藤はまた黙々と飯を食べ始めた。


手放しちゃいけない女だった。


そんな事は嫌でもわかってるし、本能でも理解している。
だからこうして毎晩嫌というぐらい彼女が夢に出てくのだ。
後悔というものが、自分に罪を科しているのだ。


忙しくて放置した6ヶ月。
それでも逢いたくて触りたくて抱きしめたくて、頑張って仕事をこなした。
そして漸く逢える!と思いメールを打つとエラーが返ってきた。どうしたんだ?と電話をかければ「現在使われておりません」のアナウンス。嫌な予感がして家まで行けば玄関のドアに空き部屋の張り紙。
絶望どころじゃなかった。
何か事件に巻き込まれたかと思い真選組を職権乱用で使えば呑気に万事屋なんかと一緒にいるまゆを見つけ、そして言い出された別れの言葉。
彼女の言い分も変わる。
けど、理解して欲しかった。
どんなに自分が逢いたかったか。
どんなに自分が触りたかったか。
どんなに自分が抱きしめたかったか。
どんなに自分が恋しかったか。
理解して欲しかった。
理解してくれると思っていた。
願いは絶望に。
彼女の意見は変わることはなく、俺の思いは一方的に断ち切られてしまった。

自業自得。

そうなのだろうけど…
どうしても諦めきれない思いが胸の中に揺らめいている。
彼女が恋しい。彼女が愛おしい。
どうかその思いだけは分かってほしい。
今でもこんなにもお前が好きだと言う事は…。

だが、それを伝える術はない。
電話も家も何も知らないのだ。

小さな溜息が部屋に木霊する。
後悔しかない土方は仕事をする気力もないまま、書類を眺めるのだった。


→反省

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