▼似たもの同士(細道)
10/06 21:29(0

朝起きると、布団からはみ出た指先が、寒さのせいで冷たくなっていた。
暖かい布団から抜け出すと、寒さが体をちくちくとつついたが、分厚い羽織を羽織ると、それの代わりに心地良い温もりが体を包んだ。
障子を開けると、薄暗かった部屋に朝日が差し込んだ。
一瞬だけ、眩しさに思わず目がしぼんだ。
目が慣れると、縁側に座り、庭をぼーっと眺めた。
木の葉は赤く、あるいは黄色く色付いている。
日だけは暖かで、夏のそれとは違った光に葉が照らされ、キラキラひかっていた。
「もう秋か。」
誰かに言うでもなく、ポツリと呟いた。
ついこの間まで暑さにうなだれ、苦しんでいたのが嘘のようだ。

今日は何も予定がないから、たまにはこうしているのもいいだろう。

そう思った曽良は、縁側から離れ、温かいお茶をいれ、その湯飲みで手を暖めながら、縁側に再び座った。
温かい湯気が空の色に、冷たさに溶けていく。
ずず、とすすると、お茶が喉を滑る感覚とともに、体が暖かくなっていく。
ふー、と息をつくと、熱が全身にまわっていったような、心地良い感覚。
今日はゆったり出来そうだな、と思った矢先。

「あっ、いたいた、曽良くーん!」
垣根の間から、テンションの高いオッサンの声。
曽良の表情がどうなっているかは、言うまでもない。
オッサンこと、芭蕉は回り込んで、曽良宅の庭に入り込んだ。
鼻が赤みを帯びていた。
「ちょっと、人の家に勝手に入らないでください。」
「いいじゃないか、師弟の関係なんだから!」
「…そうですね、一応、師弟でしたね。」
曽良が一応、を強調して言うと、芭蕉は「このひど男!」と目に膜を張り始める。
「ちょっとだけ、ちょっとだけだから!!」
必死になる芭蕉を見て、曽良は「仕方ありませんね。」と呟いた。

芭蕉はこれでもか、という程にモコモコとマフラーを巻いており、顔の下半分が隠れていた。
そして、腕の中にはなにやら紙の塊を大事そうに抱えていた。
「何しに来たんですか。」
無表情の曽良に、芭蕉は口元をにやつかせながら「これ。」と、縁側に紙をガサガサと開き始めた。
曽良は「なんですか、それ。」と、それを覗き込んだ。
開ききった瞬間、ふわりと暖かい空気が広がった。
中にあったのは、おそらく焼きたてであろう、丁度良い感じに焦げた焼き芋であった。

追記

<< >>

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -