▼飛鳥で意味怖
04/06 11:37(0

意味がわかると怖い話。
短いのでこのページには二つのお話をいれました。
次のページには解説があります。






今日は太子が邪魔したせいで、夜中の朝廷で一人残業。あのオッサンめ。
とりあえず仕事は終えた。
戸締まりも確認したし、あとは帰るだけだったのだが、何を思ったのか僕は朝廷内を散歩しようと思った。
夜中の朝廷は、いつもとは表情が違う。真っ暗な廊下は僕を「こちらへこちらへ」と誘っているよう。
童心か、好奇心か。体の中の何かが疼く。僕は本能の赴くまま足を動かした。
といっても、幽霊や魑魅魍魎の類なんてそう簡単に会えるわけではない。
心のどこかで落胆する自分に苦笑した。
結構な距離を歩いたせいもあるだろうが、寒さもまだ残るせいか、厠に行きたくなってきた。
歩いていては間に合わない。
全速力で走りつつ、記憶の中の地図を広げた。
あった、厠。
しかし安心するにはまだ早い。
扉を乱暴にあけ、走っているそのままの勢いで飛び込んだ。
窓が開いているせいで、外気が直に自分にあたり、そのまま廊下に流れていく。
こんな時間にどうせ大の男の小便を見る物好きなぞいまい。
寒さと反射でブルッと体が震えた。家に帰ったらこたつにでも入ろう。
用をたし終わり手を洗った。水が手に痛い。
湿った手で扉を開け、明日は寝不足だろうなあ、なんてことを考えていた。

おわり



また太子が家に来た。
嫌がったって、断ったってどうせ無駄だとわかっている。
家にずけずけと上がり込んでこたつに直行。
「もうぅ〜」と言いつつそれが太子の当たり前のように感じた自分の『慣れ』が恐ろしい。
「妹子、今日はこの聖徳太子からお土産があるんだぞ」
ふーん、そうですか。
そう冷たく返すが、珍しく太子は意にも介さないようだ。
「ジャーン!」という人工効果音と共に太子の手から出てきたのは、カラフルな文字がプリントされた、小さな二つの袋。ずっと握っていたのだろう、袋はクシャクシャだ。
「あわ、だま…?ああ、飴玉ですか」
「そう!竹中さんからもらったんだ。妹子にも一個あげる」
「ありがとうございます」
太子が「お土産」と言うと思わず身構えてしまったが、まともなお土産くらいは持って来れるんだな。

どうやら太子は夕飯まで食べていくつもりのようだ。
「妹子は草と石しかくれなかったのに、私は飴玉をあげたんだぞ!夕飯くらい食べさせろ、コラァ〜っ」だそうだ。
絡んでくる太子を適当にあしらいながら、鍋やらまな板やらを準備していく。と、ふと口の中で転がしている飴玉が気になった。
料理をしながら口にものを含むことに違和感を感じ、小皿になめかけの飴を出し、こたつの机の上に置いた。
しばらくたって、完成した二人分のカレーを太子のところまで持っていく。
口がもごもごと動いている。さては、まさか。
「僕、さっき『もうすぐできます』って言ったじゃないですか。どうして飴舐めてんですか?」
「お腹が空いて…。」
そう俯くオッサン。
しかし理由は小学生のようだ。
僕はハァとため息をつき、ピンクの玉が乗った小皿を差し出した。
「ここに出してください。カレーと一緒じゃ気持ち悪いでしょう」
コロン、という音をたてて、ぬらぬらと光る緑色の玉が小皿に飛び込んだ。絶対ピンクとくっつくなよ。絶対だから。
そうして、よくいえば賑やか、悪くいえば騒がしい晩餐が始まった。
いつものように太子はふざけたことを言って口は忙しいようだが、手は動いていなかった。
「体調でも悪いんですか?」
そう聞くと、太子は「いや」と首を振った。
「さっきの飴玉とカレーの味が混ざって気持ち悪い」
「だから言ったでしょう…はい、お茶」
今のお茶には指は入っていない。
もちろん、唸って苦しんでいる太子より早くに食べ終わった。
そしてあわだまを満喫する。ああ、このシュワシュワと弾ける感じがたまらない。
思わず「おいしい」と呟くと、「妹子だけずるい」と太子が小皿を手にとった。
あと少しだけ残っているカレーがなんだか悲しそうだ。
「あともう一口ほどじゃないですか。飴玉は後で……どうしたんですか?」
小皿を持ったまま、太子は固まっている。
「……妹子、それ、メロンの味しない?」

おわり
次のページは解説です。



追記

<< >>

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -