きみを好きになるのは大変だ! | ナノ

バイト先で

名前はバイト先の本屋に来ていた。

お客さんはいつも通りおらず、閑古鳥が鳴いている状態である。

暇すぎるため、名前が店先で宿題をしていても店長が怒ることも無い。むしろ褒められる。

店長は名前を孫のように甘やかしており、名前にとっても心地よい空間だった。

「名前ちゃん、今日も店番ありがとう。何かお茶菓子買ってこようかね」

そして先程店長は店をわたしに任せて出ていってしまった。

この本屋さんは結構古く、子供が好きそうな漫画も少ないので静かだ。
名前の仕事といえば本の整理や古い本の片付け、破れた本の修理などである。

全然忙しくない。むしろ超楽。
しかも宿題も片付けられる。

名前はこれでお金が貰えるのは正しいことなのだろうかと度々不安になるが…

もちろん店長はこれが本業などではない。この本屋はほとんど趣味で経営しているようなものであり、他の仕事でちゃんとご飯は食べれていると聞いて安心したのは覚えている。

すると、店についているベルがなった。
誰か来たようだ。

…制服を着た、中学生ぐらいの子がいた。

最初に目がいったのは彼の髪色。
銀髪というか…白かった。
地毛なのか、染めているのかは分からないがその美しい容姿に名前は少し見とれた。

(…なんか見たことあるような)
その制服は名前の弟が着ているものにそっくりだったのである。
しかし学ランの夏服などどれも同じようなものなので真偽は分からない。

名前は一応「いらっしゃいませ」と声をかけたが、反応は無く少年は奥の方へ行ってしまった。

名前も特に気にせず宿題へ向き直る。

…店長はまだ帰ってこない。宿題をやり終えてしまった。

名前は暇になり、閉店後店長がやると言っていた、新しく来た本を棚に並べようと思った。

ラベルを貼るのは名前が行なったが、本を運ぶのは重いだろうという理由でやらなくて良いと言われていた。
しかし、自分の父親よりもだいぶ年老いている店長にそんなことをさせるわけにはいかないと思っていたのでちょうど良い。

お客さんが来た時ちょっと心配だが、ベルで分かるし大丈夫だろう。
カゴに入れて運ぶ。新しい本が来た時はドキドキするものだ。
…新しいといっても古本なんだけど。

「次は…」

【□井〇太に学ぶ!プロ棋士の詰め将棋】

将棋の本らしい。有名な棋士が書いたもののようだ。
(将棋の本ってどこだろう?参考書…のところじゃないよね)
趣味・実用・娯楽のコーナーへ行ってみよう。

名前でも名前を知っているプロ棋士の本を棚に入れるために奥へ向かうと、

「あっ」
思わず声が出た。前に入った少年がまだ居たからである。

(確かに、出るところは見てないけど。すっかり忘れてた)
彼はもしかしたら中学生じゃないかもしれない、というぐらい大人びていた。
存在感が無いといえば悪口になるかもしれないけれどなんていうか気配が無かったのだ。

それにしても姿を見て声を上げるなどお客さんに対して失礼なことをしてしまった。不快に思っただろう。

少年は名前をちらっと見るとまた本棚へ向き直った。

名前の目的のコーナーもそこだったため必然的に彼に近付く。
あいうえお順の本棚へ先程の本をなおすと、彼は背伸びをしていた。どうも、上にある本をとりたいようである。

「お客様、お取りしましょうか?」

名前は親切心で声を掛ける。
彼は背伸びをやめ、名前をじっと見つめた。

「…あんたにとれるの?オレと身長、変わらなそうだけど」

「大丈夫ですよ。脚立持ってきますね!」

名前はレジに戻り、脚立を引っ張ってくる。
危ないので1人で使わないように、と言われていたがいざとなればあの少年もいるし大丈夫だろう。

「どの本ですか?」

「…あの、右から3番目のやつ。背表紙が緑の」

「分かりました」

名前は脚立に登り、目的の本をとる。

(これは…えーっと、麻雀の本だ)

だいぶ古い本だ。…それにしても中学生ぐらいに見えるのに麻雀なんか分かるのか。名前にはさっぱりだった。
ともあれ本を手にできたので彼に渡そうとする。
この時、脚立から降りてから渡せば良かった。しかし、名前は登ったままで少年へ手渡そうとしたのである。

後悔する間もなく、手を離した途端に重心が傾く。

「あっ…」

<<>>


目次
fkmt作品

Back to Top
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -