きみを好きになるのは大変だ! | ナノ

アカギさんがたくさん

「本当に送っていかなくて大丈夫?」

「大丈夫だよ。すぐ大通りに出るし」

名前は学校帰り友人とゲームセンターへ来ていた。

マ〇オカートから始まり、プリクラ、太達などゲームをハシゴし、クレーンゲームが終わる頃には、時間はだいぶ遅くなっていた。
さすがにそろそろ帰ろうという話になったが、友人と名前は帰り道が反対だったのだ。

心配した友人が送っていこうかと提案したが、友人も女の子なので名前は断った。

「じゃあ、バイバイ。気を付けて帰ってよ?何かあったら電話してね」

「うん、バイバイ!また明日ね」

友人と別れる。夜だというのにあたりはネオンが煌めいており名前は変な高揚感に襲われた。

(早く帰ろう!あんまり遅いとお母さんが心配するし)

しかし、視線を感じる。
不思議に思い、周りを見渡すと1匹の犬がいた。
そしてそれも名前に気付いた。

頬のあたりに傷があり、薄汚れていて完全に野良犬だった。
(あれ、誰かに見られているような気がしたんだけど…この子だったのかな)
少し気になったが、そのしょんぼりとした様子に心を掴まれ、疑念は頭から抜けてしまった。

(か、可愛い…!)

犬は名前を見たあと繁華街の中へ走り出す。

「あ、ちょっと待って!」

名前も思わず追いかける。

犬は名前が見失わないぐらいのスピードで走り、入り組んだ路地へと入っていく。

犬を見て走っていた名前は、気が付いたら明かりの少ないところに来てしまっていた。

(確かここの路地に入ったと思ったんだけど…)

犬の姿は無い。どうやら見失ってしまったようだ…

(あの子わたしに着いてきて欲しいって顔してたような気がするのに…)

仕方ない、諦めよう。

出ようと後ろを向くがなんとも薄ぼんやりとした明かりがついている建物が多い。

「おまえ、どうしたんだ?こんな路地裏に何の用だ」

すぐ横から声をかけられた。
思わず振り向くと男の人が階段を降りてきていた。
どうも上にある建物から降りてきたようだ。

(…また髪の毛白い人だ)

最近流行っているのかもしれない。
髪を逆立てて、赤いサングラスをかけた彼は怪訝な顔をしながら名前に話しかける。

「もしかして雀荘に用が…いやあるわけないな。そんな雰囲気じゃない。明らかにただの小娘だ」

…近くで見るとこの人もアカギに似ている。
似ている人が多すぎて、もしかしたら白い髪の人間はみんな同じように見えてしまうのかもしれないと名前は思い始めていた。

「えっと、大通りまで出たいんですけど…どうやって行けばいいか分かりますか?」

「大通り!?ここと真逆じゃないか」

「迷い込んじゃったみたいで」

「…あー分かった分かった。しょうがない、オレが連れて行ってやるよ」

「いいんですか!」

「ほっといたら更に奥に迷いそうだからな、ほら行くぞ」

「はい!」

名前は男の後を着いていく。

「それにしてもなんであんなところにいたんだ?」

「可愛い犬を見かけて。追いかけてたらいつのまにかあそこに居ました」

「おいおい…それで雀荘の前なんかにぼーっと立ってたのか?
ここらへんは治安が悪いんだからお前みたいな女は近寄らないほうがいいぞ」

「はい!わかりました」

本当に分かったのか…?と彼は呆れた顔をする。

彼の顔を見つつ、名前はある予感がしていた。

「すみません、えっと…もしかして『アカギ』さんだったりしますか?」

「…お前、オレのこと知ってるのか」

「知らないですけど…そんな感じがしたので!」

「えぇ…どういうことだよ…」

どうやら合っているようだ。

…親戚とかなのかもしれない。それなら納得である。

「違うよ」

繁華街へさしかかろうとした時、2人に声をかける者がいた。
その人物は前に立ちはだかる。

「名前、久しぶり」

現れたのはなんとアカギ(1人目)だった。
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