「名字、飯食おうぜ」
「うん、いいよ。今日は天気がいいから屋上で食べるのはどうかな?」
「おーいいなそれ!」
今日も名前と和也は昼食を共にしていた。
…そして、和也が名前に無理なプレゼントをすることもなくなり、名前はそれを嬉しく思っていた。
「教室だとうるさいやつが多いからな!落ち着いて食えねえ」
確かに、2人で食べる姿を面白がって声をかけてくるクラスメイトはいた。
しかしそんな彼らもあるときから来なくなったためそこまでうるさくはなかった。理由は分からないが、聞くのはやめようと名前は動物的な本能で察していた。
「あー、でもこんなに天気いいんだったら屋上も人多いかもなあ…カップルとかもたくさんいるって聞くし」
「へーそうなのか…」
「どうしようか?やっぱり教室にする?」
名前は和也が人の多いところは嫌だろうと提案するが、和也は首を横に振った。
「…あー、ダイジョビダイジョビ!オレが話つけてくるから!名字は5分後に来てくれるか?」
「ん?うん、分かったよ」
和也はそういうと教室を出ていった。
…5分経ってから名前が屋上へ行くと、そこには誰一人としていない。
名前が驚いていると和也から声がかかる。
「おーい名字!ほらここ!影になってていいぜ」
「兵藤くん!」
「よくね?ここ。余計な人間もいねえし、最高だろ!」
「わたし、屋上に人がいないのなんて はじめてみたよ」
「そうか?授業中なんかは誰もいないぜ」
「こ、ここにいるんだね。サボってる時」
いつもじゃないけどな、と和也は横になって肩肘をつく。
「兵藤くん、屋上にいた人たちに何したの?」
「あ?あー、穏便に話し合いで決めただけだって!カカッ」
なんとも怪しいが、屋上を占領できることなどめったにないので悪い気分では無かった。
「まあまあ、そんなことはどうでもいいじゃん!今日の弁当何よ?」
「えっ兵藤くんわたしのお弁当とか気にしてるの?」
「まーな!庶民の弁当なんて滅多に見れねえし!オレにしてみたら貴重なのさ」
「…そういえば、兵藤くんはお昼食べないの?」
名前は和也が昼食を口にしているのを見たことが無かった。
口にしているといえば飲み物ぐらいである。
「アンタと食べてない時は外に食いに行ってる」
「わたしと食べてる時は?」
「…食ってないけど」
「お腹空かない?」
「…別に。学校にオレの口に合うモンなんて持ってこれねえからな、仕方ない」
お腹が空くなら無理して自分と食べなくてもいいのにと思うが、そこまでして一緒の時間を過ごしてくれていることが嬉しかったため何も言わないことにした。