少し熱を帯びた顔に、目を冷やしてやれてば良かったなと後悔した。明日、可愛らしい目がぱんぱんにはれているかもしれないところを想像して。
「か、い…先輩、」
「有、隣で寝てるから」
「……」
「ほら、寝なさい」
「じゃあ、キス、だけ…してほしいです」
天使かよ…
表情までしっかり見ることは出来ないけれど、見てしまったら一発で理性を削がれるんだろうなと思う。
親指で唇を何度か撫でてからやんわりと自分の顔を押し付けると「んっ」とスケベな声が漏らされた。軽くそこを食み、額を合わせて唇を離すと後を追うように柔らかい唇が吸い付いてきた。
「つぐみ、」
「も、少し…」
抱き付いてきた体をしっかり抱えて自分の上に乗せ、細い背中を撫でてされるがままのキスに目を伏せた。冷房の静かな唸り声に誤魔化されそうな、きっと精一杯抑えて、それでも唇の隙間から漏れていく小さな喘ぎ声を飲み込んで。
「、ふ…ぅ、」
結局、つぐみは何度も唇を啄んだ後舌を差し込んで、細い舌先で俺の歯列をなぞった。怖かったから、だろうか。いやでも、怖いと思ったのと同じ行為をする方が、やっぱり怖い気がする。
どちらにしてもその自問自答に正解が出ることはなく、ゆるゆると体を動かして俺の上に馬乗りになったつぐみはそのまま首に吸い付いて弱々しく音をたてた。
「……何がしたいんだよ」
「……え、っち、」
「……お前怖かったんだろ」
「、でも、櫂先輩は…」
怖くないと、自分に言い聞かせるように呟いたつぐみに枕元の電気をつけた。上に乗っかっていた体をひっくり返して組み敷くと、不健全にカーテンも締め切ってセックスしていた昼間のことが思い出された。
「かいせんぱい…」
ヒヤリとした手がTシャツの裾から忍び込んできて、感触を確かめるみたいに俺の腰を撫でた。勃ちそうだから本当にやめろと言いたかったのに、それは声になることなく、つぐみのキスに消されてしまった。
「ぁ、んっ…んぅ、」
「つぐみ、声」
「あ、ぅ……んん」
声が出ないようキスをしたまま片手を繋いで、薄い胸を撫でてサイズの合っていない俺のTシャツを捲る。
「っ、」
「やめる?」
「や、やめ…ない」
「頑固だよな、ほんと」
「ごめんなさい…」
濡れて束になった睫毛にキスをして舐められたと言う首筋に同じようにキスを落とした。つぐみは嫌がることもなく、きちんと声を我慢しながら俺の髪を何度も撫でた。
「、ん……ぁ、櫂せ…」
自分でつけたキスマークに重ねるように同じ場所にキスをして、ハーフパンツの上からちんこを揉む。既に勃起しているそれは、俺が直で触った途端ぴくりと揺れて先端を濡らした。
「や…ぁ、かい、」
「なに、終わり?」
「ん、ちが…き、もち…い」
小さな喘ぎも出ていかないようにしっかりその口を塞ぎ、焦らさないで扱いたらつぐみはあっけなく達してしまった。ふーふーと胸を大袈裟に揺らして、泣きながら俺にしがみついて「好きです」ととびきり甘えた声を出した。
とろんとした目は、ゆっくりゆっくりまばたきをして数回目で開かなくなった。俺の息子はどうしてくれるんだと笑いたくなった俺の下で、すやすやと寝息をたてるつぐみはそのまま朝までぐっすりだった。
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