都の外れに建つその邸の庭には、春と夏と秋が混在していた。
外界の季節の移ろいとは関係なく、いつでも東の庭には梅が咲き誇り、南の庭には梔子や桔梗が、西の庭には曼珠沙華や菊が紅葉の元で咲いていた。
そして、薔薇(そうび)の茨に覆われたその邸では儚く可憐な姫が深い眠りに……
「あーあ。外にでーたーいー!!」
「姫さま。裾を絡げてなんですか。はしたない」
「だーってだってだってだああああってええええええ」
「足をばたばたさせないでください!」
……衣通姫の再来と噂される、美しく可憐な姫が……
「頼綱、蹴ッ飛ばしててやろうかしら」
「姫様! 飛び蹴りは禁止です!!」
――いるはず、だった。
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