女房が下がった事を確認するやいなや雨などで濡れたりしないようにとの配慮だろう、油紙で包まれたそれをゆっくりと慎重に剥がしていく。
すると、ふわりと薫る花の香に強すぎる愛しさが胸を締め付けた。
この香りは荷葉(かよう)だろうか。相変わらず自分の友である送り主は文に香りをつけるのが好きらしい。
(変わってないのね……)
まだ裳着も迎えていない幼い時分に送り主とはこの近くで知り合った。
暇を持て余していた姫は外に出たいと雷のように泣き叫び、これに耐えかねた両親が半尻(はんじり)姿でなら、と許してくれたのだ。
その時に“彼女”と出会った。
- 3 -
*前 | 次#
作品一覧へ