忍び秘す恋の杜
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 葉桜が澄んだ蒼穹に映える頃、その景色を御簾の内から眺める一人の美姫がいた。
 此処は彼女の父が嵐山に構えた別邸、桜の季節も過ぎ去りあとは夏に涼を得るためにしか利用しないこの場所に何故、数人の女房しか伴わず彼女がいるかというと……。

「姫様、本日も文が届きましたよ」

 にこやかに告げてくる年配の女房に、少女の長い睫毛の影が落ちる白い頬が薄らと色付く。
 その様を微笑ましく眺めて姫へと文を渡すと、彼女はそっと室を離れた。



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