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『愛の上手な示し方』

リクエストのべるの「嘘の向こう側」の二人とオリジナルキャラクター山下詩織と架空山下家の年越しのお話です。
「はるうらら」一周年おめでとうございます。今後ともお体に気を付け一層のご活躍のほど期待しております。

驚いたのは自分だけではないという事は、周りを見渡さなくても明らかだった。
山下詩織。
歴史の古い山下家の中で、ほぼ唯一となる女である。
山下の家には、代々男しか生まれてこなかった。
その為、婿養子に入る以外は皆苗字が変わらず、相変わらず同じ名を持つ親戚のみが増えていく。
もう数えきれなくなった親戚の多いこの家族で、名前を覚えると言った馬鹿な事は、詩織はもうやめた。
若い人は全てお兄ちゃんと呼び、年を重ねていく度おじさん、お爺ちゃんと呼んでいく。
嫁として嫁いできた女性陣も、お姉さんから始まり、おばさん、お婆ちゃんと呼ぶことにしていた。
そうすれば、名前を間違えるという失礼なことをせずに済む。
小さい頃から詩織はこうやって、山下家で生きて来たのだ。
最近両親が二人とも亡くなったという、お兄ちゃんに詩織は会った。
会ったという表現は適切ではない、詩織が一方的にお兄ちゃんを見たのだ。
古くからこの山下家には様々な伝統がある。
その一つに結婚の契りを交わした相手はその年の終わりに、本家に連れてくること、とある。
勿論それは、結婚のご報告という形で、親族全員の前でそれを発表しなくてはならない。
今まで詩織以外の女が生まれてないのだから、詩織の周りにいるおじさんや、お爺ちゃんもそれをして、婚姻したのだろう。
それでも、それは男女である事が前提の話なわけで。
男同士で、しかもお嫁にいく話をまさかここでされるとは、誰も予想していなかった。
「山下を嫁にください。」
そういったお兄ちゃんの彼氏への反応は冒頭に戻る。

空気は依然として一向に良くなりはしなかった。
お兄ちゃんの彼氏は、誰も何も言わないのをいいことに、二人の馴れ初めを語りだした。
罰ゲームの序盤辺りで、親族一同大奮闘。
怒りのあまり「嫁にはやらん!」とお爺ちゃんが激怒し、それでも食い下がらないお兄ちゃんの彼氏に、ついに表に出ろ、とまで誰かが言い出す。
収集がつかなくなった決闘を遮るようにお兄ちゃんが言う。
「柳沢じゃないと、駄目なんだ。」
その一言は決して軽いものじゃなかった。
苦しさも、悲しさも二人で乗り越える覚悟の気持ちの表れだった。
だから、と言ってお兄ちゃんは言葉を切った。
お兄ちゃんの右手はお兄ちゃんの彼氏の左手が覆われていて、固く握りしめられた拳はいつの間にか仲睦まじく繋がれていた。
だから、と今度はお兄ちゃんの彼氏が言う。
「山下のご両親みたいに、俺達も大好きな人に大好きと言いたいから。それを隠していきたくないから。皆さんにも分かって貰いたいんです。いや、分かって貰えるように努力します。たくさんこれから、辛い事や苦しい事があると思うんです。それでも、だからこそ山下に、いや山下と一緒に乗り越えていきたいんです。どうか僕たちの交際を認めてください。」
深々と頭を下げるお兄ちゃんの彼氏が、本気だという事は良く分かって。
男同士だとかそんな事抜きにして、その姿はあまりにも男らしかった。
おじさんやお爺ちゃん達も、続く言葉が出ないようで。
どうにも罵倒する言葉が出てこない。
世間体とか、世の中の印象とか。
彼らはそんな事ずっと前から理解していた。
それを含めて愛していたのだ。
それならば。
「いいんじゃないの?こんなに親戚がいるんだし、一人くらい子供産まなくたって、いいんじゃないの?」
それが、答えだった。
その後、お兄ちゃんの彼氏は男どもに連れて行かれて、祝い酒だとお酒を進められていた。
断ったようだが、今度は酔っ払いに絡まれ大変そうだった。
お兄ちゃんは女性陣と男の扱い方について、話をしていた。
料理の話や、節約の仕方など真剣に聞いていたから、同棲する日も近いかもしれない。
その後は、お兄ちゃんの彼氏から、お兄ちゃんの彼氏の友達に襲われかけた話を聞いた男どもに半殺しにされた以外は、極普通の年越しだった。
除夜の鐘をききながら、今年は彼氏が出来ますようにと、秘かに祈ったこと以外は。



琥珀様、ありがとうございました!なんと…あの二人のその後のお話…!柳沢、いい男じゃないか…!全部暴露しちゃうところが素直と言うかなんというかw
幸せな二人の将来が読めて幸せです!
ありがとうございました!

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