『ふたりのしあわせ』
『ふたり』の一夜くんと和也くんをお借りしました。
「和ちん、今日どっか行かない？デートしよ〜」
ソファに寝ころんで読書をしていたら腹に軽い衝撃。
誰がなんて分かりきってることだけど視線を本から外してそこに向ければやはり一夜が頬をすり付けオレを見ていた。
「どっかってどこ？」
読みかけの本に栞を挟みながら訊ねればただでさえキレイな一夜の瞳に輝きが増した。
かっこいいなぁなんて思っていると手を引かれそのまま身体を起こされる。
「和ちんが行きたいとこでいーよ！」
つまり特に考えてない、と。
苦笑しそうになるのを堪えて考える。
オレの行きたいとこか…特にないなぁ。
服とか本とか今のところほしいものもない。
ほんと悩む。
そもそも最近一夜が大学のレポートやら何やら忙しかったからデートだって久しぶりだ。
だから実のところ一夜といれれば何処に行っても楽しいわけで……そこでふと思いついた。
あぁ、うん結構良いアイディアじゃないか？
「一夜」
「なになに決まった〜？」
「ほんと何処でもいいの？」
「うん！和ちんの行きたいとこで好きなことしよ〜」
最終確認はした。
「よし、じゃあ行くか。まずは…スーパーなっ」
「……へ？」
「一夜、ケチャップ持ってきて」
「はーい」
「あと卵も」
「わかった〜」
一夜がカートを押すのは図的に違和感があるから俺が押して、一夜は俺が言うものを取りに行ってくれる。もちろん一夜が動いてる間俺だってちゃんと動いてるよ？鶏肉とか玉ねぎとかサラダに使う野菜とか。
「って、違うでしょ和ちん！」
「うわっ！びっくりした！」
さっき行ったばっかだったのにもう戻ってきたのか。
あまりの早さに驚くと少し膨れっ面の一夜が顔をずいっと寄せてきた。
近いなこのイケメンめ。
「これデートじゃなくない？」
なにを言うか。
「立派なお買い物デートだろ」
こじつけのようだけどふたりで出かけてるし俺は立派なデートだと思う。
思ったままに反論すれば何処でもいいと言った手前これ以上言えないのか渋々離れようとする一夜。
……でもなんかやっぱり少しだけ一夜ががっかりしているようだから。
「またの名を、新婚夫婦、仲良く買い出ししましょう、だ」
あ、なんか自分で言ってて痛いかも。
なんて思ったけど一夜は目に見えて嬉しそうだから一応成功かな？
「荷物持つ〜」とにこにこする一夜が重い方のビニールを持ってくれて、確かに旦那、を実感しつつ薬局で入浴剤を買って帰宅した。
『一夜、今日は家でデートしよ？』
そう言ったのは買い物から帰ってすぐのこと。
首を傾げる一夜に説明した。
最近一夜は忙しかったから寝る時間もばらばらだったし、家にいてもふたりでのんびりする時間がなかった。だから外で形式的なデートをするよりも人目を気にせずふたりでくっついていられる家で時間を過ごしたい、と。
伝え終えたとき一夜は黙っちゃったから、ダメだったかなと考えたけど次の瞬間「ごめんね和也、寂しかった？俺は寂しかったよ。今日はずっとくっついてよ―ね」と泣きながら抱きついきたから俺の考えは上出来だったようだ。
そしてそれから宣言通り一夜は俺にべったりで俺もかなり一夜に甘えた。
夕飯はオムライスを作ってふたりで食べさせっこ(これはかなり恥ずかしかった。でも一夜が嬉しそうだから頑張った)。
風呂が沸くまでソファで休憩と思ったら一夜に手を引かれてそのまま一夜の膝の上。
今日は存分に甘えてやろうと思ってるから身体を一夜に預ければ一夜が笑った。
「なんだ？」
「えへ、しあわせだな〜って」
同時に腰に回された腕。
抱きしめられる加減が、本当に大切なものを包むような感じで。
俺の心にも、温かい感情が溢れ出した。
「俺も、しあわせ」
今日一日一夜を独占できて、一緒に買い物して、ふたりで飯食って、抱きしめられて。
些細なことなんだろうけど、やっぱりそれが一夜相手だと幸福度が違う。
一夜が本当に好きだなぁって何度も何度も再確認できるんだ。
微笑めば一夜も愛おしそうな視線を俺に向けてくれて、自然となくなる俺たちの距離。
触れるだけの口付けが、心地いい。
「……おうちデート、またしよーね」
「ああ」
照れくさそうに笑う一夜に頷いてもう一度キス。
実はふたりで入るように入浴剤を買ってあって夜もおねだりしようと俺が考えてると知ったら、一夜はどんな反応をするだろう。
まだまだ今日は長いななんて思いながら、今はもう少しだけこのふんわりとした甘さに包まれていたかった。
これが、ふたりのしあわせ。
end
久我様、ありがとうございましたー！『ふたり』の甘々な生活がこれでもかと詰められた素敵なお話ににやけるのを押さえられません(#^.^#)
一夜の事だから調子に乗って買い物に行くたびに『新婚夫婦の仲良しお買いものだもんね〜！』とか言いそうです(笑)
企画にご参加いただきましてありがとうございました！
これからもはるうららをどうぞよろしくお願いいたします！
[ 7/44 ][＊prev] [next＃]
[mokuji]
[しおりを挟む]