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5

リュディガーが部屋から消えた後、ロルフは自分のいる部屋をうろうろと歩き回り探索をしてみた。首輪の鎖は結構長めになっており、バスルームやトイレなど、室内で行けない場所はなかった。ただ、一カ所だけ。その出入り口にだけ、ギリギリの所で手が届かない。
例え届いた所で繋がれていては出ることは叶わないのだが、そのギリギリ届かないと言う心理がロルフは逆に精神的に追い詰められているような気がした。

ベッドの横に、大人一人入れるほどの大きさのケージが、犬の水入れと共に置かれている。先ほどリュディガーは自分のことを『ペット』だと言った。間違いなくここが自分の寝床だと言うことなのだろう。

ロルフは無言でケージ内に足を踏み入れた。

なにもないケージに、くるりとうずくまって目を閉じる。


―――リュディガー・ヴァンディミオン。


その名を聞いて、ロルフはすぐに彼がイアンの兄弟か何かであることに気がついた。吸血鬼の王族は数いれどヴァンディミオンの名を継ぐものはイアンたち一族以外にはいない。王族の中でも特に力の強い一族で、まさに吸血鬼の世界でその頂点に君臨する。

彼の名を聞いた瞬間に、ロルフは彼への抵抗をやめた。それはすべて弟であるレオンのため。

自分が抵抗すれば、リュディガーは必ずレオンの存在を調べるだろう。
もしレオンの存在を知られてしまったなら、リュディガーは間違いなくレオンを消しにかかっていただろう。レオンだけではない、イアンだってどうなるかわからない。自分の兄弟が毛嫌いする人狼を恋い慕っているなど彼にはヴァンディミオン家の名を汚す事だとしか思えないだろうから。


「レオン…、」


檻の中から、窓の外を見上げる。

思うのは、ただ大事な弟のことばかり。朝は起きられるだろうか。ご飯はちゃんと食べられるだろうか。洗濯は。掃除は。
…急に消えた自分のために無茶をしないだろうか。


イアン様が、レオンをどうか守ってくださいますように。

ロルフは小さくうずくまり、そっと目を閉じた。



「おい、起きろ」

がつん、と揺れる衝撃を感じて目を覚ますと、格子の向こうにリュディガーが立っていた。ゆっくり起き上がり、ケージから出ると床に皿が置かれた。

「貴様のエサだ。食え。」
「…」

にやりと口角を上げてロルフを見下ろすリュディガーに、ロルフはぐっと強く拳を握りしめる。この男は、自分に屈辱を味わわせるために本当の犬のような扱いをするつもりなのだ。じっと目の前に置かれた皿を見つめると、皿には野菜や豆が盛られていた。恐らくロルフを弱らせておくために肉を食べさせないつもりなのだろう。逆に助かった、と内心ほっとしたロルフは一度目を閉じてから床に這い犬のように皿に口を付けた。
その様子を目にしたリュディガーは目を見開いた後やや不機嫌に腕を組んで鼻で笑った。

「大人しく従う振りでもしているのか。まあいい、いつまでもつか見ものだな。」

皿を空にしたロルフはぺろりと口の周りを舌でひと舐めする。それを見たリュディガーが一瞬息をのんだような気がして見上げるが、そこには変わらず、いや、むしろさらに不機嫌になったリュディガーがロルフをじっと睨んでいた。

「…チッ」

そしてリュディガーは一つ舌打ちをすると皿を持ち、また部屋を出て行った。何が何だかわからずロルフはまたケージに戻る。ところが、蹲ろうとしたその時ぐい、と首を引っ張られロルフは引かれた方に倒れ込んだ。

「ぐ、う…?」
「こい、散歩に連れて行ってやろう」

そこにはロルフの首輪に短めの鎖をつなぎ、ひどく冷たい笑いを浮かべるリュディガーがいた。

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