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9

次の日、いつものように先輩の教室へ向かう。昨日はほとんど眠れなかった。

いくらやっても送れないメール、掛けても繋がらない電話。

他の恋人だった子たちからいくら責められようと心が高揚するだけだったのに、今はそれどころかイヤな焦りしか感じない。こんな気持ちになったのは初めてだ。

先輩、拗ねてるだけなんだよな?俺から甘やかされるのを、甘い言葉を言われるのを待ってるだけなんだよな?

ドキドキと自然速くなる心臓を感じながら先輩のクラスを覗き込む。
いた。自分の席に座り、鞄から教科書を机にしまっている。


「先輩、おはよう」
「…おはよう」


近づいて挨拶をすると驚いたような顔をしてから眉をひそめ、それから無表情になって挨拶を返してきた。その全身から醸し出される明らかな拒絶の雰囲気に、ひどく狼狽えている自分がいた。

「あの、せんぱ…」
「マキ〜!悪い、宿題見せて!」

昨日の事をもう一度ちゃんと謝ろうと思って口を開いた瞬間、教室に駆け込んできた先輩の友人であろう人間に言葉を遮られる。
なんだこいつ!俺が先輩と話してるの、見えねえのかよ!
ちょっとムッとしてじろりと睨むと、そいつは『あ』という顔をした。

「悪い、彼氏と話し中に…」
「いいよ、彼氏じゃないから気にしないで。」
「な…!」

さらり、と表情を変えずにそう言う先輩の言葉に俺は目を見開いて言葉をなくしてしまった。傍にいた先輩の友人も、俺以上に驚いて目を見開いてる。

「ちょっと来いよ!」

俺は先輩の腕を掴むと無理やり席を立たせ、教室から連れ出して人気のない場所に連れて行った。途中で先輩が何か言っていたけど、そんなの全然耳になんて入ってこない。彼氏じゃない、なんて冗談が過ぎるぜ。拗ねるのもほどほどにしないとかわいくなんかないっての。俺はむかむかといら立ちの中にほんのわずか、ひどく焦る心を隠し全ての責任を先輩に転嫁していた。

「なに?」
「なに、じゃねえよ!さっきの…!」

手を離して向かい合うと、先輩が無表情のままに俺に問いかける。そんな先輩の表情にますます焦る。

「昨日、言ったはずだけど。俺はもう君とは付き合えない。別れてくださいって。」
「だから、あれは違うんだって!好きなのは先輩だって言ってるじゃん!」
「それが理解できないって、何回言ったらわかるの?」

見た事も無いような冷たい表情のままに先輩がため息をつく。

「もう話しかけないで」
「先輩!」

そう言い放つと、これ以上話すことはないとばかりに背中を向けて足早に去っていく先輩を俺は呆然と見つめていた。


教室に帰ってからも心ここにあらず、授業や友人の言葉なんて頭に何も入ってこない。あんなに、拒絶されたことなんて初めてだ。昨日までは一筋縄ではいかない、どうやってまた落としてやろうか位にしか考えていなかったのに、先輩の本気の拒絶に心底焦っている自分がいる。

「くそ…!」

いいじゃねえか。あんな男の一人や二人、また次に新しい恋人を探せばいい。替えはいくらだってきく。今までだってそうだったじゃねえか。

そう思いながらも、俺はまた気がつくと休み時間に先輩のクラスに向かっていた。

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