×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




5

先輩との付き合いは、意外に楽しかった。

先輩はほんとに今までの恋人たちと全然違う。今までのやつらは、俺みたいなイケメンを恋人にできたってことでまるで周りの奴らに見せつけるかのように優越感丸出しで引っ付いてきたりしたもんだけど、先輩はすごく控えめで自分から会いに来たり、メールや電話もしてこない。

俺が会いに行くと、ものすごくテンパってあわあわして、それでもその表情の中に嬉しいって色が見える。

俺が二人きりの時に抱きしめたりすると、真っ赤になって俯く。
そんな反応がすごく新鮮で、おもしろい。



さて、付き合って1ヶ月。今まで先輩の照れたり恥ずかしがったりする顔はたっぷり堪能させてもらった。じゃあ次は?
もちろん、嫉妬に歪む顔だろ。

この人が嫉妬して俺に必死にすがる顔を想像して、ぞくぞくした。



次の日、俺は先輩のいる図書室にわざとクラスのかわいい男子を連れて行った。ガラリと扉を開けると、顔を上げた先輩が俺の姿を見て嬉しそうにはにかんだ。本に夢中になってて目の前に座っても気付きもしなかった頃から比べるとすごい進化だ。

だが、次の瞬間。俺の後ろにぴたりとくっつくようにして入ってきた男子生徒を見てその顔から笑顔が消えた。

『あ…』って顔してる。嫉妬してんのかな。

俺はその子の肩を抱いてエスコートするように先輩の近くの本棚へ行き、上の方の本を取ってその子に渡してやった。
この子は実は俺と今日一緒に日直の子で、先生に頼まれてここにある資料の本を取って欲しいと頼まれたんだ。この子がもちろん俺に興味があるのはわかってる。先輩と付き合ってるのを知って何回もわざとらしく
『あんな平凡のどこがいいのー?』
なんて聞いてきてたから。先生にこの仕事を頼まれた時、咄嗟に先輩の前で馴れ馴れしくしてやろうと思いついたんだろう。俺と先輩がこの時間、図書室にいるのも有名だし。

俺はそいつの芝居に乗った。魂胆はわかってたけど、好都合だから。


「ありがとぉ〜、助かったあ!こんなくだらないことに付き合わせてごめんね?でも僕じゃ、届かないかなって…」
「いや、いいよ。これくらいおやすいご用だよ。いつでも頼ってね?」
「うん!ありがとう!あ、今度お礼にお茶ごちそうするね!」
「ははっ、サンキュ。楽しみにしてる」


甘ったるい声を出してすり寄ってくるその子ににこりと微笑んで頭をなでる。その子はちらりと先輩を見て、ふふん、と鼻で笑ってじゃあね、と出て行った。

やり取りの間中、俺は先輩の顔を見てた。あからさまに嫉妬した顔ではなかったけど、少し悲しそうな、拗ねたような顔。想像してた顔とは全然違ったけど、すごくぞくぞくした。

「ごめんね先輩。騒がしかった?」
「ううん、大丈夫だよ。クラスの子?」
「うん。先生に頼まれた資料を取りに行きたいけど、届かないから助けてくれないかって言われちゃって。」
「優しいんだね。きっと彼も君なら助けてくれるってわかってたんだね」

にこりと微笑むその顔は、さっきまでの悲しそうな顔じゃなくて本当に心からそう思ってるって顔だった。
…なんだ。おもしろくない。

「どうかした?」
「ううん、なんでも。」

一瞬つまらなそうな顔をした俺に気付いたのか、先輩が不思議そうにのぞきこんできた。いけないいけない。先輩には、もっと俺に溺れてもらわなくちゃいけないのに。

まあいいや。まだまだこれから先いくらでもチャンスはあるんだ。次はもう少し長く先輩の前で他の子といちゃついてるように見せかけてやるか。

それより今は、もっともっと嫉妬するくらい俺に惚れさせておかなくちゃね。

先輩の隣に腰掛け、さっき少しだけ見た先輩の顔を思い出してほくそ笑んだ。

[ 74/495 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top